米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
56 / 156
街の解放と魔王の目覚め

街の解放と魔王の目覚め①

しおりを挟む
 時刻は朝の六時。
 レアネー市を取り囲む城壁の門を正面から開け放ち、堂々と市内へ踏み入ったのは、この街を拠点とする冒険者達だ。
 ランクにしてB~F。けして強くはないが、街への愛着心が彼等を紛争へと駆り立てる。ファイター職が前衛となり、襲い来る住人達を取り囲む。

「今だ! 眠らせろ!」

「スリプル!」

 ファイター達に守られる魔法使い達は、暴徒化した住人達を次々に眠らせる。手荒な事をして大怪我を負わせられないため、この作戦において状態異常を得意とする魔法使いはキーと言っていい。彼等の魔力が続く限り、眠らせ、縛り上げていく予定なのだ。

 操られている住人の数が多すぎ、想定より時間がかかったものの、冒険者達は広場に到着。ファイター達が目立つ行動で注目を集めている間に、魔法使い達は四方に散り、それぞれが協力し合い、スルプルを広範囲で展開する。

 長いキャストの末、バタリ、バタリと、敵味方問わず人間が倒れていく。半端な魔法技術によるスルプルが無差別に発動したため、仲間である冒険者もかかってしまうという悲しい事態だ。

 だがこれは、事前に予測されていた事である。

 スリプルに巻き込まれるのを防ぐため、マリ達は時間差で広場に来た。そこで目にしたのは、折り重なる様に倒れる住人達の姿。彼等がただ眠っているだけなのは分かるが、なかなか心臓に悪い光景である。

「こっちは冒険者ギルドと土の神殿の術者達でなんとかなりそうだ。あなた達は公爵邸へ向かってくれ!」

 シルヴィアは、側に倒れるファイターに思いっきりビンタしながら、マリ達を先へと促す。

「分かった!」

「じゃあな、シルヴィアちゃん」

 乗っ取られている公爵邸の解放に対処するのは、マリ、セバスちゃん、試験体066、公爵とその従者、そして亀の甲羅団の五人だが、このうち四人とはここで別行動だ。

「配置に向かって。狙撃を宜しくね!」

 マリが囮となり、公爵邸から引っ張り出したガーゴイルは、狙撃班が殲滅する。一箇所に纏まって、狙撃するか、散らばるかについては意見が分かれたものの、一斉に撃ち込んだとき、的が被ると効率が悪いため、二人づつ二箇所から狙う事になった。
 彼等には、ガーゴイルを外に出す前に配置に付いていてもらう必要がある。

「マリちゃん、気を付けてね! 石化されたら、治療代は僕がもってあげるよ!」

「お気を付けて!」

 公爵とその従者が手を振り、離れて行く。彼等はマリのバイクルートの東側を担当するのだ。

「マリお嬢様……、やばくなったら、フルスロットルにしてこの街を出てくださいね。ガーゴイルは街の住人を石にするかもしれませんが、マリお嬢様の身が第一ですから!」

「アンタが昨夜張ってくれた罠をちゃんと活用するからね!」

「うぅぅ……、そういう話ではないんですけどもっ」

 セバスちゃんは昨夜、ユネの手を借りて市内に潜入し、電気柵の部品で罠を張ってくれた。位置は聞いているので、上手いこと活かしたい。涙目の彼からホンダのCBR1000を受け取る。流石に重く、うっとなるが、まぁ許容範囲だ。
 背中を丸めて西側に歩いて行く彼が若干心配になる。

(高い所から、短機関銃を撃って、転がり落ちないといいけど……)

「僕もそろそろ行く。西側の予定だけど、セバスさん一人でいいと思う」

「はい? アンタ、予定はちゃんと……」

 勝手な事を言い始めた試験体066を睨みつける。彼は意外な程心配そうな表情をしていた。

「魔法撃ちながら移動する……。出来るだけマリさんの様子を見て、何かあったら直ぐに駆けつける」

「うん。気持ちは有難いけどさ、どの位のスピードで走るか分からないから、無駄だと思うけどね」

 100キロ以上で走行するバイクに、人間の足で追いつけるわけがない。その辺を予想出来てない発言なのかもしれない。まぁ、彼一人が予定通り動かなくても、ルートを何周かしたら、ガーゴイルを殲滅する事が出来るだろう。

「……じゃぁ、行くね……」

 分かったのか、分かってないのか、彼はノコノコとした足取りで何処かに去って行った。

(何かしら働いてくれる気はありそうなのかな。よくわかんないけど、任せてみよ)

 彼の背を見守っていると、ナスド達が居る方向から破壊音が聞こえて来た。

「小道にも徘徊してる奴等が多くてメンドクセーな!」

「取り敢えず眠らせる。スリプル!」

 亀の甲羅団に、巡回中の獣人達が襲いかかって来たのだ。彼等を傷付けるわけにもいかないため、ユネが魔法で眠らせる。
 広場で大勢の住人を無力化してはいるが、街は広く、まだまだ魔人の手の内にある者達は多い。けして気を抜いてはいけないのだ。

「こいつらは端に転がしておいて、後で回収だ」

「「「オーケー!!」」」

 倒しても、倒しても絶え無く現れる獣人達に、辟易とした雰囲気が漂い出した頃、漸く公爵邸の塀が見えて来た。
 マリは緊張し、ゴクリと喉を鳴らす。

(ついに来た! バイクで西海岸から東海岸まで横断した事あるし……操縦は大丈夫!! ……なはず)

 内心ドキドキするマリとは逆に、亀の甲羅団の面々は、場慣れしている。
 動揺するどころか、寧ろ楽しみな様子。

ーーガインッ!!

 ナスドがフレイル型のモーニングスターを軽く振り回し、石畳の路面に、巨大な棘鉄球を落とす。

「久々の強敵だ。腕が鳴るぜ」 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

処理中です...