米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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街の解放と魔王の目覚め

街の解放と魔王の目覚め⑤

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「……僕には魔王に対抗出来る程の力は無いんだけど……」

 試験体066は、魔剣をジッと見つめ、軽くため息をつく。

(え……。コイツも太刀打ち出来ないなら、私達はここで死ぬの? マジか……)

 死を間近に感じ、ブルリと震える。
 白髪の少年はプラズマの弓を消し去り、代わりに水の剣を出す。

(コンプレストウォーターサーベル……だっけ?)

 魔剣とやらに対抗するには、弓よりも剣の方がいいと判断したのかもしれない。
 ピリピリとした、緊張感の中、マリは試験体066の力を信じて、祈る。彼が勝たなければ、終わりなのだ。ここの人間達だけでなく、これから来るかもしれないセバスちゃんや、公爵の命もかかっている。街の住民も同様だ。

 先制攻撃を仕掛けたのは“魔王”と化したコルルだ。

「一発は受け止めてみせろよ」

 その場から姿を消したと思った次の瞬間、少年の背後に立つ。マリの目には、少年の首の位置に斬撃の残像が見えただけだった。少年はうまく身を屈めて避けていた。無事だったのを喜ぶ暇もなく、次の一打が、少年に迫る。
 少年はそれを避けつつ、低い位置から、変幻自在な剣の刀身を長く伸ばし、後方に振る。剣はまるで蛇の様な動きで少女を追尾する。
 彼女が余裕綽々に指をパチンと打ち鳴らすと、その水の剣は氷の様に固まり、動きを止めた。
 少女はついでと言わんばかりに、回し蹴りを食らわし、氷は粉々に砕け散る。

 ここまで、おそらく十秒も経ってない。

(目で、追いきれないんですけど……)

 少女に対して、威嚇射撃をしようかと思っていたのだが、彼等の動きが速すぎて、下手に手を出したらウッカリどちらかの身体を撃ち抜きそうだ。

「水の剣だから、破壊しても無駄……」

「無駄? どうかな? お前の魔力が尽きるまで試してみるか?」

「魔力の量は……、目覚めたばかりの君と大して変わらないかもしれない……」

「オレは燃費の良い戦闘を心得てるんでね」

 あり得ない程に俊敏に動きつつ、二人は会話を交わす。
 彼等がお互いの攻撃を避けるたびに、窓が破れ、壁が倒れる。

 急所を狙い続ける魔王に対し、試験体066は水の剣を様々な形態に変え、紙一重で、致命傷を受けずに済むように立ち回っている様なのだが、どう贔屓目に見ても、魔王の力が上回っている。

 少年が一瞬見せてしまった隙を突き、魔剣が容赦なく、彼の肩から腹にかけて、斜めに切り裂く。

「……っ!!」

 床に、派手に血が散る。

(嘘! アイツ、殺されちゃう!)

 マリはもう大人しくしてられなかった。
 魔王の背に体当たりを食らわし、押し倒す。

「もうやめろ! 馬鹿!」

 黒い毛で覆われた猫耳にガブリと齧りつき、ガジガジと歯を立てる。

「イデデデデ!! 何しやがる! 退け!」

「嫌だ!」

 魔王が本気を出したら、マリなんて一捻りだろうに、何故か試験体066を圧倒した動きを見せない。

「大人しく縮こまってろよ! メンドクサイ女だ!」

 首に回していた手をガシリと握られる。

(ゲッ! コイツの手、ヤバイんだった!!)

 掴まれた手から徐々に身体が痺れ、動きが鈍くなる。このままじゃ、この場に居る全員が死んでしまうのが分かるのに、自分じゃどうする事も出来ない。悔しくて、涙が溢れる。

「……特殊スキル発動……」

 試験体066が何かを口にするのが聞こえた。
 そのスキル名を、マリは知っている。カーナビで表示されていたのだ。言わせてはダメなのに、口が全く動かない。

(アイツ、私達の命と引き換えに、街を守る気だ……、どうしよう……)

「”ジバ__」

 彼がその言葉を言い切るより前に、部屋の中に眩い光が溢れる。突然の出来事に気が散ったのか、少年は、スキル名を最後まで紡がなかった。

「やれやれ……、少し心配で様子を見に来たのじゃが、まさか魔王が現れているとはな」

 光が収まると、マリの身体は動く様になっていた。
 ノロノロと声の主に視線を向けてみると、神々しく輝く少女が宙に浮かんでいた。白から萌黄色にグラデーションする不思議な色の髪に、桃色の瞳。麗しの土の神様が、そこに居る。

「ケレース!」

「お主のお陰で、妾の食事係が代わるそうじゃの。礼を言うぞ、マリ」

「お願い、助けて! このままじゃ、皆死んじゃうかもしれない……。お願いだよ!」

 元の世界で生活している時、神頼りする人間をみっともないと思ってきた。だけど、神様が本当に居るなら? 自分の力でどうにもならないなら? 頼らずに居られるわけがない!

「土の神か。相変わらず鬱陶しいな」

「この娘には旨い物を馳走になったのじゃ。ここで死なすにはあまりに惜しい。これ以上悪さをするなら、妾が相手になるぞ」

 両者は数秒睨み合うが、先に折れたのは魔王の方だった。ため息をつき、破れた窓の方に足を運ぶ。

「この女だけは殺す気はなかったけどな。連れ去るのも同様だろう。今、お前とやりあうのは少々キツいし、ヅラかるか」

「ちょ! コルルの身体置いてけ! シレッと持ってこうとするな!」

「じゃあな、マリ! 今度はご自慢の料理を食わせろ」

 魔王は身勝手な事を言い、消え去っていった。
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