米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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嵐の傷跡

嵐の傷跡④

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 公爵の邸宅に近付くと、路沿いに多くの馬車が止まり、御者同士が談笑している。彼等の主人達は、公爵に用があり、訪れているのだろう。
 マリの顔は彼等にも認知されているようで、側を通りすぎると、友好的な笑顔を向けてくれた。

 御者達に手を振りながら、破壊されたままの門扉をくぐる。
 ポーチに一人、青年が立っている。
 彼はマリ達の姿を目に留め、軽く飛び跳ねるように、手を振る。

「マリさん! セバスさん! ようこそお出で下さいました。公爵がお待ちです!」

 相変わらず爽やかな公爵の従者が、上品に礼をしてくれた。

「チェスターさん、おはよう!」

「おはようございます。チェスター殿」

 チェスターに付いて来る様に言われ、マリ達は彼の後を追う。
 邸宅の中には身なりの良さそうな男女がたくさん居た。エントランスや廊下、様々な場所で話し込んでいる。

「彼等は市議会議員や、商人ギルドの者達です。公爵との対話を望み、こうして待っているんですよ。大抵アポ無しなんですけどね……」

「公爵、凄い忙しそう」

「全員追い払う事も出来るんですけど、公爵は寛容な方ですから、そうはなさらなくて……」

 これだけの人数に不満を言われたら、マリは絶対にキレてしまう。良くこなせるもんだと、関心するばかり。

「良く私達を呼ぶ気になったね」

「マリさん達が公爵と初めてお会いになった日、お願いした事があるでしょう? それを叶えて下さるそうです」

「何をお願いしたっけね……」

「むむ……確か……、誰かに会わせてもらう約束、だったような気がしますが」

 間抜け面で顔を見合わせるマリ達の様子に、チェスターは吹き出した。

「フフッ。貴方達と話していると肩の力が抜ける。公爵が毎日通ってしまうのも分かるな。あっ……と、通りすぎるとこだった! ここが公爵の執務室です! 少しお待ち下さい」

 チェスターは頑丈そうな扉を三度ノックしてから室内に入って行った。

「ねぇ、アンタとチェスターさん交換出来ないかな? あっちの方が可愛い」

「ぬぬ! 私の方が100倍可愛いはずですが!」

「気の所為!」

「グヌヌ……」

 適当な会話をしていると、扉が開き、チェスターがヒョッコリと顔を出した。

「お会いできます! さぁどうぞ」

 中に入ると、公爵がデスクから立ち上がった。土の神殿のエイブラッドも居て、僅かに表情を緩めてくれた。

「急に呼びつけて悪かったね。君にとって朗報だと思ったから、直ぐに伝えたくなってさ」

「朗報……?」

「うん。約束したじゃない。国王に謁見させてあげるって。会わせてあげられそうなんだ。婚約者君ともね」

 マリは素で驚いた。アレックスを完全に忘れていた。

「あ~! アレックスね! そうそう。会わないと! 勿論忘れてなんかないよ!」

 早口でまくし立てるマリに、公爵は笑顔のまま首を傾げた。

「あんまり嬉しくなさそうだね」

「そんな事ないよ! この世界に来たのって、アイツと婚約解消して自由の身になるためだったし!」

「なるほど……」

「その予定が終わったらでいいんだが、王都に行ったら、プリマ・マテリア教団の本部に顔を出してもらえないか? 貴女に会いたがっている方がいらっしゃるのだ」

 さらに何か言いたそうな公爵を遮り、エイブラッドが迷惑な話を持ち出した。

「え……! それは無理!」

「プリマ? マリお嬢様、私が居ない間、変な集団と関わってしまったので?」

「まだ、関わってないよ!」

 アレックスには用が有るから良いものの、プリマ・マテリア教団と接触するのは嫌な予感しかしない。どう断ろうかと悩んでいると、バンッと勢い良く扉が開いた。

「公爵! 皆さん!」

 入って来たのはチェスターだった。公爵が煩そうな表情で彼に近づいて行く。

「どうしたんだい?」

「今報告を貰ったんですが、市民は全員瘴気の影響から脱しました! この街は健全な状態に戻れたんです!」

「浄化が、完了したのか……」

 チェスターの報告の持つ意味を、頭がだんだん理解していく。心が温まる様な感覚になるのは、自分がちゃんと関わったからだ。

「そうか……。君達、良くやってくれた。いくらお礼を言っても足りないくらいだ……。有難う。僕だけじゃどうにもならなかった」

 公爵の言葉が、少しだけ震えている。彼の市民に対する想いの強さは確かなんだ。力になれた事がとても嬉しい。

 マリは隣に居るセバスちゃんとハイタッチした。

「やりましたね! お嬢様!」

「私達にかかったら、楽勝でしょ!」
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