米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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魚は食いますが、トカゲに用はありません!

魚は食いますが、トカゲに用はありません!②

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「あー、リザードマンだね」

 後退するマリとは逆に、公爵はイグアナもどきに近付く。彼が言うリザードマンは、この生き物の種類なのだろうか。

「初めて聞く」

 衣服を身につけている事から、知能が高そうだが、果たして人間寄りの生き物と考えるべきか、モンスターの一種と見做すべきか判断がつかない。有害か無害かくらいかは知っておきたい。

「リザードマンって……、人間に友好的なの?」

「リザードマンは、独自の文化を持ちながらも、他種族に寛容。……二十年前までは、人間と共存していた」

「ふぅん……」

 マリの問いに答えてくれたのはグレンだった。前代勇者の記憶を引っ張り出しているのは明らか。
 そんな彼の回答に、公爵は「うーん……」と微妙な反応を見せる。

「最近良くない情報がある種族なんだよね。でもまぁ、今回の件はこちらに落ち度があるし、セバス君のためにも治癒した方がいいかな。グレン君、補助を頼むよ」

「分かった」

 魔法を使える二人はリザードマンの側で分担を話し合う。マリとセバスちゃんには役立てそうもないので、大人しく待つしかない。日差しを防ぐため、キャンプカーの日陰に入り、再び王都方面に視線を向けると、少し先の三叉路の右側から、白い馬が猛然と走って来るのが見えた。馬上には若い女性の姿がある。ブロンドの縦巻きカールが激しくバウンドしている。

 彼女はこちらに顔を向け、苛立ちを露わにした。

「貴方達!! そこで何をしていらっしゃるの!? って、倒れてるのは盗人じゃないの!」

「盗人……?」

 甲高い声が主張する内容は少々不穏だ。リザードマンは彼女の物を何か盗んだという事なのだろうか?
 女性は、治療現場の近くで馬を止め、下りる。唖然とするグレンと公爵を蹴散らす勢いで間に入り、リザードマンの手から黄金のトロフィーを奪った。
 リザードマンを盗人呼ばわりしているので、恐らくトロフィーは彼女の物なのだろうが、どちらかというと、彼女の方が悪事を働いている様に見えてしまう。

「……あれ? もしかして君、プロメシス伯の姪っ子のアリアちゃんじゃない? 水の神殿で神官やってたよね? 離れてもいいの? だって今__」

「何故私の素性を!? って、貴方、フレイティア公爵ではありませんか! 貴方こそ、何故この様な場所にいるのです??」

「僕の身内がウッカリこのリザードマンに重傷を負わせてしまったんだ。だからこうして治療してるってわけ」

「まぁ! 公爵の身内の方が盗人の足止めを? 素晴らしいわ! 一体誰が!?」

 彼女はボサボサの髪を直し、マリ達三人の顔を順番に見る。

「私です……。免許をとってから十年経ちますが、今まで一度も事故を起こして居なかったのに! うぅ……。前の方で強い光が見えたと思ったら、この生き物を牽いてしまっていたんですよ……。恥ずかしい限り……」

 セバスちゃんがシュンとしたまま手を上げる。彼が見たのは、おそらく、リザードマンが女性から奪ったトロフィーが太陽光を反射した光なのだろうが、言い訳しなかった。
 金髪縦ロールの女性は友好的な笑みを浮かべ、ズンズンとセバスちゃんに近寄って来る。

「何を恥じるのです! 貴方はプロメシスの英雄なのよ!」

「え、英雄!? 私が!?」

 もしかすると、彼の人生の中で、これ程手放しで褒められた経験は無いのかもしれない。顔全体がテカテカしている。

「貴方の行動が無かったら、私はたぶん神器を取り戻せていなかったわ! あら!? 公爵、もしかして盗人を治療していらっしゃるの!? やめてくださる!?」

「このまま放置するのもちょっとね……」

「この者の所為で、プロメシス領は甚大な被害がありましたのよ! 貴方も少しはご存知なのではなくて!?」

「聞いてはいたけどさぁ」

 まるで嵐の様な人だ。他人に対してのらりくらりと接する公爵が、話づらそうにしている。
 言い争う二人を、マリは興味深く観察してしまう。

 彼女は治癒魔法を続けるグレンの肩を乱暴に押したりもしていて、ちょっと険悪な雰囲気になっている。

「……あの女性に魔法の妨害される」

 グレンは憂鬱そうな表情で、日陰に居るマリの隣まで来た。

「リザードマンの盗人さん、生きれそう?」

「ザックリと傷を塞いだ。……後は血が足りるかどうかなのかな。リザードマンに人間の血を入れるわけにもいかないから、あれ以上はどうにも出来ないや」

「そっか」

「ちょっと! アリアちゃん! 駄目だって、それは!!」

「ええい! 離してちょうだい!」

 目を離してる間に、女性は剣を柄から抜き、リザードマンに振り下ろそうとしていた。公爵は必死に止めている。だけど、相手が女性だからなのか、触りづらそうだ。自分が行った方がいいかもしれないと、マリは立ち上がる。

「あら? 世界が回りゅ……うぎゅ……」

 マリが彼等の元に辿り着く前に、女性の身体がくらりと傾ぎ、公爵が支えた。

「公爵、彼女に何かしたの?」

「気を失わせたんだよ。暴れる女性を止めようとして、胸を触ってしまった事があるんだけど、後から報復されてね。あの時の二の舞になりたくない」

 女性に近付くと、目の下に濃い隈が出来ていて、肌がカサついていた。彼女が疲労しているのは明らかで、このまま休ませてあげたくなる。

「公爵、この人をキャンプカーの中に運ぼう」

「助かるよ。この娘、知人の姪っ子なんだ」

 公爵と共に彼女の身体を持ち上げると、グレンが微妙な顔をした。

「……リザードマンどうしよう?」

「うーん。もうちょっと治癒してもらっていい? その後、イワシを何匹か置いて立ち去ろう」

「イワシ、勿体ないな……」

 グレンはやる気が無さそうに、再びリザードマンの治癒を再開した。

 
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