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魚は食いますが、トカゲに用はありません!
魚は食いますが、トカゲに用はありません!③
しおりを挟む治癒を終えたグレンがキャンプカーに引き上げた直後、側に流れる川からリザードマンと思わしき生き物が二匹現れ、倒れている個体を運んでいった。仲間を救出する機会を伺っていたんだろう。
公爵の魔法で気絶させられた女性は、二時間経っても目覚めなかった。覚醒させる魔法はあるにはあるが、身体に良くないらしく、そのまま寝せて王都を目指す事にした。彼女の馬も車内に運び込んだので、長時間獣臭さに耐えなければならなくなった。
夕食後、シャワーを浴びたマリは自室のドアを開ける。
部屋に一つしかないベッドの上では女性が眠り続けている。マリは女同士同じベッドの上で寝るのに抵抗はないが、彼女は違うかもしれない。別々に寝るのが無難だろう。
部屋の隅に丸めておいた寝袋を広げ、室内の明かりを小さくする。モゾモゾと潜り込むものの、良く知らない人間が居るからか落ち着かず、眠気が訪れない。寝返りをうつと、太腿にゴツリと硬い物が当たる。手探りで確かめると、アリアを運んだ時にポケットに入れておいたスマートフォンだった。
異世界に来てから碌に動かず、極たまに、写真を撮影するくらいにしか使っていなかった。
(この世界に来て直ぐにアレックスにメッセージを送ろうとしたけど、レベルが足りないって表示されたんだよね。今Lv20だし、可能かな?)
ポケットから取り出し、ポチポチと操作する。
(アレックスにメッセージ送ってみよ……)
“アンタの頼み通り、この世界に来てやったよ。明日には王都に着く。会う時間作ってよ”
適当な文章を打ち込んでから送信ボタンを押す。今度はどうだろうか? 五秒、十秒……と時間が経つが、エラーは表示されない。成功したのかもしれない。
レベルアップにメリットを感じたのは初めてだ。思わずニヤける。
続けて母にメッセージを送ってみるが、こちらはエラーが表示されてしまった。
(一応ママに説明してから来たけど、本当に私達が異世界に行くと思ってなかっただろうな。私も成功するわけないって思ってたくらいだし……。現場に居たボディガードがうまく言っといてくれてたらいいけど)
色々考えると不安になる。何とかして連絡したい。
王都でアレックスに会ったら、代理で母にメッセージを送ってくれるかもしれない。いや、送らせようと考える。
(でもなぁ、私とセバスちゃんがこっちに来てから、アレックスから一回もメッセージが届かない。どうかしたのか?)
アレコレ考えていると、呻き声が聞こえてきた。アリアが目を覚ましたのだ。
寝袋から這い出て、スマートフォンをポケットに戻す。
「う……、ここは……?」
ベッドの上のアリアは上半身を起こしていた。
マリは彼女にソッと近付く。
「体調はもういい?」
「貴女……、確かさっきフレイティア公爵と一緒に居たわよね?」
「うん。公爵がアンタを気絶させたから、そのまま転がしておくわけにもいかないし、このキャンプカー……私達の乗物の中に運んだんだ」
「乗り物? 上等な部屋の中なのに?」
アリアはマリの話を疑問に思った様だ。無理もない。この世界の文化レベルだと、キャンプカーはオーバーテクノロジーもいいところなのだから。
「動く家みたいな感じかな。そんな事より、お腹減ってない? 残り物でいいなら用意出来るよ」
マリが申し出ると、ちょうど良くアリアのお腹が鳴った。彼女は薄暗い照明の下でも分かる程赤面する。
「嫌だわ、私ったら。はしたないわね」
「いいよ、いいよ。付いて来て」
「ええ」
二人で部屋を出て、居間スペースに向かう。
車内は静まり返っていた。時刻は午前一時。皆とっくに寝てしまっただろうし、さっきまで存在感がありすぎた馬は外に出している。
アリアにソファに座る様に言い、キッチンスペースに行く。
マリはあの出来事の所為で上の空になってしまって、つみれ汁を作りすぎた。昼と夜では食べきれず、残っているので、食べてくれる人がいるのは嬉しい。
それを火にかけ、茶碗に白飯をよそう。紀州から取り寄せた梅干しを上に乗せ、日本の国旗みたいな見た目にした。
(日本食が口に合うといいな……)
和食セットをお盆に乗せて戻ると、アリアはソファの上でシャキンと姿勢を正して待っていた。ウロウロしなかったあたりに、育ちの良さを感じ取る。
「お待たせ! お代わりするなら遠慮なく言ってよね」
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