米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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水の神殿で待ち受ける脅威

水の神殿で待ち受ける脅威④

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「貴女達が死にかけたように、召喚にはリスクが伴いますし、呼び出した勇者が弱すぎる等の状況も考えられまする。実際、過去には魔王軍に世界が滅ぼされかけた事もありました。そこで二十年前に、プリマ・マテリアと、異世界から来た優秀な錬金術師が研究に乗り出したようです」

「研究って、何の?」

 話が意外な方向に行き、マリは戸惑う。だけど聞いた方がいい話だろうからと、先を促す。

「勇者創造の研究ですな。前代の勇者様は非常に優秀な方。歴代でも屈指と言っていいでしょう。そこで、当時のプリマ・マテリアの幹部と、異世界人は前代勇者の血液から同レベルの人間を創り出そうと考えました。プリマ・マテリアは、組織内の錬金術の叡智で、そして異世界人は自らの世界に戻り、最先端の技術でアプローチする事になったようです。伝え聞いた話によると、プリマ・マテリアは、最強の人間の創造に成功しておったようです」

 グレンに思いっきり関係のある話だ。彼は、この世界に来たことのある人間の研究によって生み出された存在なのだ。老人の話をどういう気持ちで聞いているのかと、彼の顔を見る。
 グレンはただ静かに話を聞いていた。既に知っている内容なのかもしれない。

 老人の話はさらに続く。

「残念ながらプリマ・マテリアが創った者はステータス上勇者ではなかった。しかし、未来の魔王戦で重要な戦力になるのは間違いないからと、育てていた様ですが、十年程前に研究施設が火災で焼失し、その際に行方不明になりました。研究施設に居た研究者は全員死亡、資料も全て燃え、超人の再現は不可能だったようですよ」

「研究は全て無駄になったんだね」

「えぇ、だから私達は、異世界から勇者を呼ぶしかなかった。向こうの研究はどうなったのか知る事も叶わず、祈る様な気持ちで召喚しましたな。ですが、呼び出す事が出来た存在はあまりに弱々しかった。向こうの世界での研究は失敗に終わったのかと、ガッカリしましたよ」

 老人はションボリと肩を落とす。アレックスの実力はそこまで酷いのだろうか?

「アレックス様は大変明るいお方。しかし痛みに弱く、訓練に耐えてくださいませんのです。これを憂慮した国王は冒険者ギルドに金を払い、瀕死状態のモンスターを大量に用意しました。アレックス様にトドメを刺させ、レベルを無理矢理引き上げたのです」

「うわぁ……。でもさ、レベルが上がったら、身体能力も上がらない? ただの体感なんだけど」

 マリの疑問に答えたのはグレンだった。

「身体能力が向上しても、戦い方が分からなければ、実戦に出れないと思う。僕がマリさんに教えてもらわないと料理出来ないような感じだよ」

「なるほどね。分かり易い」

「おっしゃる通り、アレックス様が戦えないのは周知の事実! ではあるんですが、国王陛下がアレックス様を気に入ってしまっているので、追い返すわけにもいかず、困っておったのです。そうしたら、大変珍しい事に、火の大神官が火の神のお声を届けてくださいまして……。『異世界の選定者を召喚せよ』と、そして選定者はどうやらアレックス様の婚約者だと。選定者は伝説上の存在だとばかり思っていたもので、驚きましたですね」

「へぇ~、神様って別の世界の事まで分かるんだ!」

「火の神は遠方を見通す能力がおありなのです。モイス・ソニシア様のスキルはご存知ですかな? 火の加護を持つ者の中には千里眼スキルを持つ方がチラホラ現れるのです」

「じゃあ、もしかして土の加護は鑑定?」

 思い出すのはエイブラッドだ。彼の便利すぎるスキルは土の神に由来するのかもしれないと考える。

「よくご存知ですね。四柱の神々の加護は、通常であれば一人一種ですが、勇者であれば複数可能です。なので、国王陛下は選定者様に仲介してもらい、アレックス様に有力なスキルを四つ付与する事と、四元素の力を付与させる事をお決めになった。しかし、予想外に、マリ様と一緒にもう一人の勇者様もいらっしゃったので、希望の光を見たような思いですな」

 老人はローブの中の目をギラギラさせながら、グレンを見る。アレックスに失望しているから、グレンに過剰に期待しているのだろう。

(アレックスを魔王と戦わせたら、無駄死にさせるだけなんだろうな。魔王どころか、ケートスだってやばいよね)

 グレンを真の勇者にするのが無難だとしか思えない。あまり戦わせたくないけど、死ぬのが分かっていながらアレックスを選ぶのも、気の毒で出来そうにない。

 勇者召喚に関する話のせいで、妙な雰囲気になったが、テーブルの上に残った料理に罪は無い。三人でノロノロと完食し、テーブルを立つ。
 老人はレストランの代金を支払ってくれた後、何か困った事があればいつでも頼ってほしいと言い残して、王城の方にノソノソと去って行った。

◇◇◇

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