米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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水の神殿で待ち受ける脅威

水の神殿で待ち受ける脅威⑤

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 宮廷魔法使いと別れた後、マリ達は城下町で食糧や、グレンの衣類等を買い込み、キャンプカーに戻った。
 先に戻っていたセバスちゃんと三人で水の神殿に向かおうとしたのだが、国王との打ち合わせを終えた公爵が訪れ、何故か同行すると言い張った。レアネーで待つチェスターが気の毒で、追い返そうとはした。しかし、どう説得しても無駄だったので、結局四人で出発する事になってしまった。

 地図上は王都と水の神殿の距離は結構近い。直ぐに着くかと思いきや、プロメシス領に入ってみると、勾配がきつい道が続いていた。想定していたよりも長い距離を走らなければならないようだ。

 太陽が山陰にとっぷりと沈んだ頃、湖の畔でキャンプカーを停め、夕食休憩にした。

 マリは、テーブルの向かい側に座る公爵をジッと見つめる。器用にフォークを使い、パスタを巻いている。彼はマリの視線に気がつき、顔を上げてニコリと笑った。

「そんなに見られると食べ辛いなぁ」

「一緒に水の神殿に来なくても良かったんじゃないの?」

「拘るね」

「だって、公爵にはレアネーでやるべき仕事がたんまり残ってるじゃん」

「まだ恩は返し終わってないじゃない。僕はそれなりに戦力になるし、連れて行った方がお得だよ」

「でも、後から王都の冒険者ギルドの人達や、騎士団とかも来るわけだし、万が一の事があっても、神獣はなんとかなる気がするよ」

「酷いなマリちゃん、僕はそいつらに比べて役に立たないから帰れって言うのかい?」

「ここまで連れて来ちゃったから、帰れとは言わないけどさー」

 大人の男が泣き真似をする様子に辟易し、唇をへの字に結ぶ。

(心配してるだけなんだけどなー)

 国王の取り計らいで、アレックスはしっかり装備を整え、王都の優秀な冒険者達とパーティを組んでから出発する事になっている。それに、王国騎士団の三分の一を水の神殿に派遣してくれるらしい。勇者達が討伐に失敗したとしても、ケートスを仕留めるつもりなのだろう。

(私達とアレックスを巻き込まないで自分達で何とかしろよ)

 マリは、モイスも後でから吟遊詩人とやらを多数伴ってプロメシス入りする事も思い出し、腹ただしさが増してくる。

「マリさん、パスタのおかわり要る?」

 隣に座るグレンが、マリの皿が空いているのに気がついたのか、声をかけてくれた。
 なんだか毒気が抜かれてしまう。
 当事者であるグレンがマイペースなのに、自分が腹をたてるのは馬鹿馬鹿しい。

(ご飯の時は、皆が美味しく食べれる様にしなきゃな。空気悪くしちゃうなんて、反省だ)

 実はこのパスタはグレンに作ってもらったのだ。一昨日漬け込んでおいたオイルサーディンを使えば簡単なので、作り方を教えて任せたのだが、その辺のカフェで出される物よりずっと美味しい。

「5口分くらい頂戴」

「待ってて」

 キッチンスペースに向かう真っ直ぐな背中をボンヤリ見ながら、昼間の事を思い出す。
 宮廷魔法使いのお爺さんと別れた後も、グレンは淡々としていた。前代勇者の代わりとして創られたのは、既に彼から聞いている。だけど、マリは第三者の口から研究について聞き、グレンが研究によって造られた事を改めて突きつけられ、不思議な程動揺している。
 別に今まで、グレンの話を信じていなかったわけじゃない。それなのに、今日の話はズシリときた。
 研究に関わった人達は、人の命を何だと思っているのだろう?
 悪魔の様な行いじゃないか。

(まだ研究は続いてるのかな? グレンみたいな存在が二度と生み出されない様に出来ないのかな?)

 今までの話を思い返してみると、グレンが居た研究所のバックに超大な企業の存在があるのは間違いなさそうだ。マリの中の慎重な部分が、研究所には深入りしない方がいいと警笛を鳴らす。だけど、知ってしまったのに、それを聞かなかった事にしてこの先を生きていくなんて、自分に出来るんだろうか?

 キッチンスペースからグレンが戻って来て、皿を手渡ししてくれたので、思考が途切れる。

「有難う。あんたの味付けちょうど良いよ」

「教えてもらった様に作っただけ」

 受け取ったパスタをフォークに巻きつけ、口に入れた瞬間、キャンプカーの外から大きな音が聞こえた。

「むぐ!?」

「これは、何の音ですかな??」

 マリとセバスちゃんが動揺して固まっている間に、グレンと公爵は窓の外を確認しに行った。
 弾力のある物体が硬い物にぶつかる様な音は、一度だけではなく、何度も何度も聞こえる。キャンプカーは揺れないが、もしかして何かが車体に体当たりでもしてるんだろうか?
 耳をすますと、鳥の鳴き声も聞こえてくる。

「ロック鳥の群むれだ」

「うわぁ、このキャンプカーを敵視してるよね」

 グレンと公爵の間からマリも外を見ると、暗がりの中に素早く飛び回る巨大な何かが何匹も居た。

「やばくない? これ……」

「ロック鳥だけにロックオン……なんちゃって」

 後ろで寒々しいダジャレを言うセバスちゃんの足を、マリは踏んずけた。
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