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夕空の下で食べるスパイスカレー
夕空の下で食べるスパイスカレー⑦
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マリがメッセージを送信してから、三分もたたないうちに、アレックスから返信が届いた。
“ケートスを討伐しなくてもいいって、どういうことだい!? 酷いよ! 君が神獣の話を持ち出さなかったら、俺は今命の危険に晒されなくても済んだのに! 君は俺の苦労を何だと思ってるんだい!?”
ムカつく文章だ。マリは舌打ちを一つし、両手で返事を打ち込む。
“知らん。嫌なら帰れ”
送信ボタンを押し、ポケットにスマホを閉まった。今日はもう画面を開く気皆無だ。
水の神殿を取り巻く状況については、まだネプトゥーヌスから充分な説明を貰っていない。だからアレックスに情報を伝えてあげれないのだが、もし今何か言える事があっても、彼は文句ばかり言いそうである。
昔からそういう奴だった。
自己中なアレックスはいったん忘れてしまい、マッシュポテトを作り始める。
カレーを結構辛くしたので、マイルドな味の付け合わせを添えたい。
電子レンジで柔らかくした芋を叩き潰していると、ちょっとスッキリしてくる。
太陽が水平線に入りかけた頃、キャンプカーにセバスちゃんと公爵が帰って来た。セバスちゃんは何故かワインボトルを持っている。
「マリお嬢様! 大神官殿からワインを預かって来ました!」
「イドラってば、ププ……。君が水の神に気に入られすぎない様に、安物のワインを渡してきたんだよ」
公爵が話してくれた裏話に呆れる。でも、気になるのはワインが高いか安いかじゃない。
「何で水の神様用のワインをキャンプカーに運んで来たの? 水の神は夕食を神殿で食べると思ってたから、料理が出来たら、運ぶつもりだったのに」
「あ~、なんかね。神様は外で海を見ながら食事をしたいんだって。マリちゃんとグレン君を交えて」
「えぇ!? 聞いてないよ!」
「私達も今大神官殿に伝言されたところですからねぇ」
「あの人、他人を振り回すの好きすぎでしょ」
困り顔のセバスちゃんにこれ以上愚痴ってもしょうがない。水の神がこっちに来るなら、追加で色々準備が必要になるだろう。マリはセバスちゃんと公爵に手伝いを頼む事にした。
「お二人さん、疲れてないなら、外にテーブルセットを設置してくれない? キャンプカーに積んで来てたよね? ワインは私が預かる」
「かしこまりました!」
「了解だよ」
セバスちゃんからワインボトルを受け取り、キッチンスペースに戻る。
安物だと言っていたが、やっぱり神が機嫌を損ねるレベルの味なのだろうか? マリはワインを飲んだ事がないから、これを味見しても良し悪しは分からないだろう。
(うーん……。どうしたものか)
取り敢えず冷やすために氷水を作ろうと、冷凍庫を開く。一番目立つ所に袋に入ったブルーベリーとストロベリーがあった。保存の為に冷凍していたのだ。
マリはいい事を思いついた。
(ワインの味をジュースに近付けたら、私でも味が分かるかも)
冷凍庫から凍らせたフルーツ、冷蔵庫からサイダーを取り出し、大きなガラスボウルに入れる。ボトルの栓を抜いて、ワインも加える。料理用のリキュール「サザンカンフォート」を注げば、即席サングリアの完成だ。
サングリアを作ったのは初めてなのだが、味見をするとかなり美味しい。
(未成年なのに飲んじゃった。まぁ異世界だし、いいや)
もう一口飲んでみようかと悩んでいると、キャンプカーにアリアが訪れた。
「マリ、料理お疲れ様。後少しで水の神と大神官が来るけど、大丈夫かしら? もし手伝う事があったら言ってちょうだい」
「自由気ままな人達だな! 料理は出来てるよ。外のテーブルに運んでもらっていい?」
「分かったわ」
気の良い彼女にガラスボウルを渡し、マリは皿にカレーを盛り付ける。
真っ赤な皿の上にターメリックライスとロック鳥のスパイスカレー、そして付け合わせのマッシュポテトを順番に乗せる。これでもかという程の量にして、見た目のインパクトを強くした。
再びキッチンスペースに現れたグレンと手分けして、外にカレーや食器を持ち出す。
プカプカと浮いているケートスの近くに、テーブルセットが設置され、夜に備えてランプも置かれてある。マリはセバスちゃんと公爵の仕事ぶりに感心した。
彼等の分の夕食はちゃんとキャンプカーの中に準備してあるので、ゆっくり食べてほしい。
テーブルの上に四人分の夕食をセットし終わり、海に沈む夕陽を眺めていると、神殿から水の神とイドラが出てきた。
彼等の後ろからは大勢の神官が付いて来ていたが、イドラに一喝され、文句を言いながらも去って行く。この神殿をまとめる事が出来るイドラは結構なやり手なのかもしれない。
「あらぁ……。随分変わった料理なのねぇ」
テーブルまで来た水の神は、目を丸くした。口の端は上がっているので、面白がってはいるようだ。
しかしイドラは眉を顰める。
「何ですか、この料理……。貴女は優れた料理人だと、アリアから聞いていたから信用していたのに、黄色いブツブツと茶色いドロドロ……。それにこの刺激的な香り。本当に食べ物なのですか?」
「これはスパイスカレー! 水の神の為にボケに効く料理を作ってあげたんだよ」
マリが胸を張ると、水の神は笑みを濃くし、イドラの眦はさらに吊り上がった。
“ケートスを討伐しなくてもいいって、どういうことだい!? 酷いよ! 君が神獣の話を持ち出さなかったら、俺は今命の危険に晒されなくても済んだのに! 君は俺の苦労を何だと思ってるんだい!?”
ムカつく文章だ。マリは舌打ちを一つし、両手で返事を打ち込む。
“知らん。嫌なら帰れ”
送信ボタンを押し、ポケットにスマホを閉まった。今日はもう画面を開く気皆無だ。
水の神殿を取り巻く状況については、まだネプトゥーヌスから充分な説明を貰っていない。だからアレックスに情報を伝えてあげれないのだが、もし今何か言える事があっても、彼は文句ばかり言いそうである。
昔からそういう奴だった。
自己中なアレックスはいったん忘れてしまい、マッシュポテトを作り始める。
カレーを結構辛くしたので、マイルドな味の付け合わせを添えたい。
電子レンジで柔らかくした芋を叩き潰していると、ちょっとスッキリしてくる。
太陽が水平線に入りかけた頃、キャンプカーにセバスちゃんと公爵が帰って来た。セバスちゃんは何故かワインボトルを持っている。
「マリお嬢様! 大神官殿からワインを預かって来ました!」
「イドラってば、ププ……。君が水の神に気に入られすぎない様に、安物のワインを渡してきたんだよ」
公爵が話してくれた裏話に呆れる。でも、気になるのはワインが高いか安いかじゃない。
「何で水の神様用のワインをキャンプカーに運んで来たの? 水の神は夕食を神殿で食べると思ってたから、料理が出来たら、運ぶつもりだったのに」
「あ~、なんかね。神様は外で海を見ながら食事をしたいんだって。マリちゃんとグレン君を交えて」
「えぇ!? 聞いてないよ!」
「私達も今大神官殿に伝言されたところですからねぇ」
「あの人、他人を振り回すの好きすぎでしょ」
困り顔のセバスちゃんにこれ以上愚痴ってもしょうがない。水の神がこっちに来るなら、追加で色々準備が必要になるだろう。マリはセバスちゃんと公爵に手伝いを頼む事にした。
「お二人さん、疲れてないなら、外にテーブルセットを設置してくれない? キャンプカーに積んで来てたよね? ワインは私が預かる」
「かしこまりました!」
「了解だよ」
セバスちゃんからワインボトルを受け取り、キッチンスペースに戻る。
安物だと言っていたが、やっぱり神が機嫌を損ねるレベルの味なのだろうか? マリはワインを飲んだ事がないから、これを味見しても良し悪しは分からないだろう。
(うーん……。どうしたものか)
取り敢えず冷やすために氷水を作ろうと、冷凍庫を開く。一番目立つ所に袋に入ったブルーベリーとストロベリーがあった。保存の為に冷凍していたのだ。
マリはいい事を思いついた。
(ワインの味をジュースに近付けたら、私でも味が分かるかも)
冷凍庫から凍らせたフルーツ、冷蔵庫からサイダーを取り出し、大きなガラスボウルに入れる。ボトルの栓を抜いて、ワインも加える。料理用のリキュール「サザンカンフォート」を注げば、即席サングリアの完成だ。
サングリアを作ったのは初めてなのだが、味見をするとかなり美味しい。
(未成年なのに飲んじゃった。まぁ異世界だし、いいや)
もう一口飲んでみようかと悩んでいると、キャンプカーにアリアが訪れた。
「マリ、料理お疲れ様。後少しで水の神と大神官が来るけど、大丈夫かしら? もし手伝う事があったら言ってちょうだい」
「自由気ままな人達だな! 料理は出来てるよ。外のテーブルに運んでもらっていい?」
「分かったわ」
気の良い彼女にガラスボウルを渡し、マリは皿にカレーを盛り付ける。
真っ赤な皿の上にターメリックライスとロック鳥のスパイスカレー、そして付け合わせのマッシュポテトを順番に乗せる。これでもかという程の量にして、見た目のインパクトを強くした。
再びキッチンスペースに現れたグレンと手分けして、外にカレーや食器を持ち出す。
プカプカと浮いているケートスの近くに、テーブルセットが設置され、夜に備えてランプも置かれてある。マリはセバスちゃんと公爵の仕事ぶりに感心した。
彼等の分の夕食はちゃんとキャンプカーの中に準備してあるので、ゆっくり食べてほしい。
テーブルの上に四人分の夕食をセットし終わり、海に沈む夕陽を眺めていると、神殿から水の神とイドラが出てきた。
彼等の後ろからは大勢の神官が付いて来ていたが、イドラに一喝され、文句を言いながらも去って行く。この神殿をまとめる事が出来るイドラは結構なやり手なのかもしれない。
「あらぁ……。随分変わった料理なのねぇ」
テーブルまで来た水の神は、目を丸くした。口の端は上がっているので、面白がってはいるようだ。
しかしイドラは眉を顰める。
「何ですか、この料理……。貴女は優れた料理人だと、アリアから聞いていたから信用していたのに、黄色いブツブツと茶色いドロドロ……。それにこの刺激的な香り。本当に食べ物なのですか?」
「これはスパイスカレー! 水の神の為にボケに効く料理を作ってあげたんだよ」
マリが胸を張ると、水の神は笑みを濃くし、イドラの眦はさらに吊り上がった。
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