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化け物に食わせるB級グルメ
化物に食わせるB級グルメ⑥
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海が凍りつき、カリュブディスの巨体が打ち上げられてしまっている。舟をそこにつけてもらい、マリはノズルを持ったまま全力で化物の口元へと走る。
「マリお嬢様! 一人で離れないで下さい! 危険ですよ!」
「分かってるよっ!」
セバスちゃんに返事しながらも足を止めない。酷い顔色のグレンと目が合う。強い光が宿るその目は「後は任せた」と語っているかのようだ。そんな彼に、マリは親指を立てる。
(これで決めてやる!)
カリュブディスはもう暴れていない。これなら大丈夫だろうと、マリはノズルの先を、牙が生え揃った口に乱暴に突っ込み、悪い笑みを浮かべた。
「さぁさぁ! ご飯の時間だよ! シッカリ味わいな!」
レバーを引く。ズゴゴゴ……とグリューワインは勢い良く発射される。しかしそれはカリュブディスの体内に入り切らず、口の端から大量に溢れ出た。苦しいのか、化物は再び頭を振ろうとしたが、何者かの足が動きを止めさせた。
赤い靴はそのままカリュブディスの頭を踏みにじる。
誰の足なのかと、顔を上げて確認すると、モイスだった。ずぶ濡れの赤毛をかき上げ、マリを呆れた表情で見ていた。
他の人間が遠巻きにする中、彼だけは付いて来てくれたらしい。
「随分大胆な事しはりますね、マリ様。振り回されるこっちの身にもなってくれます?」
「不満持ってるのに、協力はしてくれんだ?」
「……たまにならドタバタも悪くない」
その言葉にマリは肩を竦める。素直じゃない性格なんだろう。
モイスは何らかの術をかけたのか、カリュブディスの動きは明らかに緩慢になっていた。ノズルからのワインの出が悪くなってくる頃には、その巨大な身体は淡く光り、急激な縮小を始めた。
浄化がちゃんと効いているのだ。
黒い鱗も、無数に生えていたトゲも、粉々に砕け、輝く粒子に変わる。
その輝きが上昇し、空気中に溶ける様はまさに奇跡……。
ワインの量はもう充分だろう。マリは随分小さくなったカリュブディスの口からノズルを抜き取る。
化物の姿だった神の子は、全身が光に包まれている。やがてそれは、人の姿を形成した。
光が収まる。
藤色の長い髪、可憐な造作の小さな顔、そして肉感的な身体。
一人の美しすぎる女性の姿が現れ、マリは慌てた。そう、全裸なのだ。
「うわぁぁ~~!!?? 男は散れ! 今すぐ!」
女性の頭を踏みつけているモイスを突き飛ばし、マリは自分が着ているジャケットを脱いで、白い肌の上に被せる。
胸も腰も全て隠れるように調整する。
「どーてーちゃいますんで、女の裸見ただけで興奮しませんわ」
「いいから、消えろ、いなくなれ」
グダグダ言い続けるモイスを追い払っていると、舟を停めている方向から騒めきが起こった。そちらを見てみると、ケートスの背から水の神が出て、こちらに向かって来ていた。
「浄化は首尾良く終わったみたいねぇ。ご苦労様」
「あのさぁ、今まで何やってたの? こっちは大変だったんだけど」
「いやぁねぇ、アタシが何もしなかったみたいに言わないでちょうだい。カリュブディスが海を操るのを力で相殺したり、勇者君が海を凍らせ始めたから、力を貸したり、忙しかったんだからぁ」
「むぅ……」
確かにこの広大な氷の陸地は、海中に居たカリュブディスの身体全部を海上に持ち上げる程に深さもある。グレン一人でやったにしては、大規模すぎる気もする。
(一応ちゃんと働いてたって事か……)
神の仕事ぶりを評価するマリにはお構いなしに、彼は紫色の髪の女性を抱き上げた。どこかに運ぼうとしているようだ。
「何処かに行くの?」
「ええ、神界に行って来るわ。浄化済みのこの子を、彼女の親と合わせてみようかと思うのよ。直ぐに戻って来るから、ご褒美はその時にあげるわ」
一方的な事を言い、水の神はケートスを連れて立ち去った。
(美しい姿になったら、本当の親に受け入れられるから、会わせるの? なんだかなぁ……)
神々の関係性にモヤッとする。顛末については、後日水の神に聞いてみないと気が済まない。
(あ、そうだ。グレンは……)
彼が居るハズの方を向くと、居なかった__いや、氷の上に倒れてしまっていた。
「グレン!!」
マリは滑って転びながらも彼の元に駆け寄り、抱き起こす。髪も睫毛も凍ってしまっていて、その全身は氷の様に冷たい。
「う……嘘!? 死んじゃった!?」
「勇者はんはそう簡単に死なへんのとちゃいます?」
後ろからつい来て来てくれたモイスが、グレンの口元や首筋をペタペタ触り、「生きとりますね」と判断してくれた。
そしてマリから、少年の身体を奪い、担ぎ上げた。
「魔力を使いすぎたんですわ。暖かい所に寝かせておけば復活しますやろ」
「よ、良かった……。早く戻ろう!」
作戦はたぶん成功に終わった。でもイマイチその成果を実感出来ないまま、マリ達は水の神殿へと帰還したのだった。
「マリお嬢様! 一人で離れないで下さい! 危険ですよ!」
「分かってるよっ!」
セバスちゃんに返事しながらも足を止めない。酷い顔色のグレンと目が合う。強い光が宿るその目は「後は任せた」と語っているかのようだ。そんな彼に、マリは親指を立てる。
(これで決めてやる!)
カリュブディスはもう暴れていない。これなら大丈夫だろうと、マリはノズルの先を、牙が生え揃った口に乱暴に突っ込み、悪い笑みを浮かべた。
「さぁさぁ! ご飯の時間だよ! シッカリ味わいな!」
レバーを引く。ズゴゴゴ……とグリューワインは勢い良く発射される。しかしそれはカリュブディスの体内に入り切らず、口の端から大量に溢れ出た。苦しいのか、化物は再び頭を振ろうとしたが、何者かの足が動きを止めさせた。
赤い靴はそのままカリュブディスの頭を踏みにじる。
誰の足なのかと、顔を上げて確認すると、モイスだった。ずぶ濡れの赤毛をかき上げ、マリを呆れた表情で見ていた。
他の人間が遠巻きにする中、彼だけは付いて来てくれたらしい。
「随分大胆な事しはりますね、マリ様。振り回されるこっちの身にもなってくれます?」
「不満持ってるのに、協力はしてくれんだ?」
「……たまにならドタバタも悪くない」
その言葉にマリは肩を竦める。素直じゃない性格なんだろう。
モイスは何らかの術をかけたのか、カリュブディスの動きは明らかに緩慢になっていた。ノズルからのワインの出が悪くなってくる頃には、その巨大な身体は淡く光り、急激な縮小を始めた。
浄化がちゃんと効いているのだ。
黒い鱗も、無数に生えていたトゲも、粉々に砕け、輝く粒子に変わる。
その輝きが上昇し、空気中に溶ける様はまさに奇跡……。
ワインの量はもう充分だろう。マリは随分小さくなったカリュブディスの口からノズルを抜き取る。
化物の姿だった神の子は、全身が光に包まれている。やがてそれは、人の姿を形成した。
光が収まる。
藤色の長い髪、可憐な造作の小さな顔、そして肉感的な身体。
一人の美しすぎる女性の姿が現れ、マリは慌てた。そう、全裸なのだ。
「うわぁぁ~~!!?? 男は散れ! 今すぐ!」
女性の頭を踏みつけているモイスを突き飛ばし、マリは自分が着ているジャケットを脱いで、白い肌の上に被せる。
胸も腰も全て隠れるように調整する。
「どーてーちゃいますんで、女の裸見ただけで興奮しませんわ」
「いいから、消えろ、いなくなれ」
グダグダ言い続けるモイスを追い払っていると、舟を停めている方向から騒めきが起こった。そちらを見てみると、ケートスの背から水の神が出て、こちらに向かって来ていた。
「浄化は首尾良く終わったみたいねぇ。ご苦労様」
「あのさぁ、今まで何やってたの? こっちは大変だったんだけど」
「いやぁねぇ、アタシが何もしなかったみたいに言わないでちょうだい。カリュブディスが海を操るのを力で相殺したり、勇者君が海を凍らせ始めたから、力を貸したり、忙しかったんだからぁ」
「むぅ……」
確かにこの広大な氷の陸地は、海中に居たカリュブディスの身体全部を海上に持ち上げる程に深さもある。グレン一人でやったにしては、大規模すぎる気もする。
(一応ちゃんと働いてたって事か……)
神の仕事ぶりを評価するマリにはお構いなしに、彼は紫色の髪の女性を抱き上げた。どこかに運ぼうとしているようだ。
「何処かに行くの?」
「ええ、神界に行って来るわ。浄化済みのこの子を、彼女の親と合わせてみようかと思うのよ。直ぐに戻って来るから、ご褒美はその時にあげるわ」
一方的な事を言い、水の神はケートスを連れて立ち去った。
(美しい姿になったら、本当の親に受け入れられるから、会わせるの? なんだかなぁ……)
神々の関係性にモヤッとする。顛末については、後日水の神に聞いてみないと気が済まない。
(あ、そうだ。グレンは……)
彼が居るハズの方を向くと、居なかった__いや、氷の上に倒れてしまっていた。
「グレン!!」
マリは滑って転びながらも彼の元に駆け寄り、抱き起こす。髪も睫毛も凍ってしまっていて、その全身は氷の様に冷たい。
「う……嘘!? 死んじゃった!?」
「勇者はんはそう簡単に死なへんのとちゃいます?」
後ろからつい来て来てくれたモイスが、グレンの口元や首筋をペタペタ触り、「生きとりますね」と判断してくれた。
そしてマリから、少年の身体を奪い、担ぎ上げた。
「魔力を使いすぎたんですわ。暖かい所に寝かせておけば復活しますやろ」
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