米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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水の神殿で残る雑務

水の神殿で残る雑務③

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「なんとっ! この様な小娘が私達の浄化を……?」

「あんた達の水場に、私がとった出汁を混入してもらった。うまくいってよかったよ」

 リザードマンの族長はマリの言葉を直ぐには信じられなかったのか、目をパチパチと瞬かせた。

「そ、そうであったか……。まぁプリマ・マテリアの枢機卿が言うのだから間違いはないのであろうな」

(え!? モイスさんて枢機卿だったのか)

 幹部なのは分かっていたが、そこまで高位だとは思っていなかった。彼の方をチラ見すると、実にふてぶてしい表情で腕組みしていた。

(持ち上げて欲しそうな表情だな。スルーしとこ……)

 階級がハッキリしたが、彼に対する態度を変える気は起きなかった。

「おい、あれをココへ持って来い」

 族長が入口付近に佇む小柄なリザードマンに声をかけると、その個体は小さな小箱を恭しく運ぶ。
 それを掴み取った族長がマリに近付いて来た。

「水の神殿に和平の証として持って来たのであるが、半分程お主に渡すとしよう」

「ん?」

 予想していなかった展開に戸惑う。
 族長が小箱の蓋を開けると、美しい大粒の真珠が沢山つまっていた。トロリとした艶は、安物とは一線を画する。
 「手を差し出す様に」と言われ、両手をくっつけてお椀型にすると、傾けられた箱からゴロンゴロンと転がり込む。

「わわっ!」

 溢れる程に盛られ、綺麗な珠を落としてしまいそうになった。ワタワタするマリを族長は満足気に笑う。

「私達の作る真珠は国内随一の品質である。その身に飾るも良し、売り払うも良し、好きに使うがいい」

「有難う……」

 太陽の光を受けても、堂々と光を反射する様は中身がみっちり詰まった証拠。シッカリとした巻きでありながら、パッと見、傷も無い。お嬢様育ちのマリが見ても、最高の品質のようだ。それだけに、受け取るのを遠慮したくもなるのだが、彼等の行動が巡り巡ってカリュブディスを目覚めさせ、マリ達がそれに対処した事を思えば、相応の対価の様にも思える。

(貰っとこうかな。いい記念になるし。グレンとかにも分けてあげよ)

 皆命をかけたのだから、報酬的な物があってもいいだろう。


 残りの真珠はイドラに渡った。彼女は真珠の数が半分になった事に特に不満を抱かなかった様だ。

「相変わらず美しい真珠ですね」

「これで今回の件は水に流してくれ」

「貴方達の起こした事については、ネプトゥーヌス様のお考えを聞いてから判断したいと考えています。私達はそれに従うのみ」

 真珠の美しさで心が軟化したのか、イドラは先程までの怒りを沈め、族長と静かに向かい合う。

「ふむ……。水の神が許すのであれば、私達は再び彼を信仰したい。それも伝えてもらえるか?」

「……ええ。その件も含めて相談しましょう。とはいえ、ネプトゥーヌス様は不在。回答は暫くお待ち__」

「__イドラ様!!」

 ドアが乱暴に開かれ、会話が遮られた。転がる様に応接室に入って来たのは、若い神官だ。息を乱しているので、ここまで全力で走って来たのかもしれない。

「淑女が廊下を走るものではありませんよ。はしたないですね」

「そんな事はどーでもいいんですっ! ビッグニュースを持って来ました! なんとネプトゥーヌス様がお戻りになりました!」

「何ですってぇ!? い、今どこにいらっしゃるのです!?」

(あー、戻ってきたんだ。案外早かったな)

 一週間は戻らないだろうと予想していただけに、肩透かしを食らった気分だ。
 水の神の帰還に、神官達がどの様に対処するのかと静観しているうちに、通路の方が騒がしくなる。それはどんどん近付いて来て、然程時間を置かずにこの部屋のドアが開かれた。
 現れた人物は相変わらずのしどけなさ。

「戻って来たわよ~、留守番ご苦労だったわね」

「ネプトゥーヌス様ッッ!!」

 入って来たのは水の神と藤色の髪の美少女だ。マリはその少女を見て、ポカーンと口を開けてしまった。気弱そうに目を伏せ、水の神の後ろに隠れている様子は、数日前に大暴れしていた化物と直ぐには結びつかない。彼女はマリと目が合うと、露骨に身体をビクつかせ、顔を歪めた。効果音を付けるならば、“ギクリ”ってところか。
 彼女は素早く踵を返し、駆けて出した。
 逃げられると追いかけたくなる……。

 水の神は、モイスやイドラ、族長達と和解についての話し合いを始めているので、マリは居なくてもいいだろう。

 真珠をジャケットのポケットに突っ込み、応接室から出る。少女は、通路にたむろする神官達をかき分け、マリから逃げようとする。何故か不器用な足捌きをしているので、速度は結構トロい。彼女にとっては全速力なのだろうが、マリが追いつくのは容易かった。

「カリュブディス!」

「……っ」

 少女の華奢な手を掴む。振り返った顔には濃い警戒の色。

(あー、そういえば私、この子の口にノズルを突っ込んで、大量のアルコールを飲ませたんだった。怖がって当然かぁ)

 淡い桃色の小さな口を見ると、罪悪感が湧いてしまう。あの時の事を咎められたら、謝った方がいいのだろうか。
 内心気まずく思いながらも、手を繋いだまま黙っているわけにもいかない。

「ちょっと話さない?」

「……」

 彼女は逃げたそうな素振りを見せたが、マリの手が離れないのに観念したのか、小さく頷いてくれたのだった。
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