米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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帰還からまた旅支度

帰還からまた旅支度②

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 プロメシス領からの帰路は安全な方のルートを選択したため、モンスターに襲われる事もなく、かなり快適だった。キャンプカーを相当なスピードで運転してもらったので、陽が暮れる頃には王都キングスガーデンに辿り付き、マリ達四人は閑静な住宅街に建つ公爵の別宅に移動した。

 オレンジ色のトロリとした明かりがサロンの中を満たす中、四人はソファセットに腰掛け、今後の予定を話し合う。

「__アダマンタイト? っていう鉱石が必要なんだって。だからイブンナ山にある洞窟にいかなきゃならないみたい」

 マリは濃い目に淹れられた紅茶を楽しみつつ、水の神とのやり取りを伝える。彼からの無茶振りに腹が立っているのだが、ここまで関わってしまっては、放置しずらい。オーパーツの件はマリにしか出来ない事らしいので、自分が投げてしまったら、この世界はメチャメチャになるかもしれないのだ。

「成る程ね。イヴンナ山はハリテクトリ侯領にある鉱山。近くには火の神殿もあるね」

 公爵はこの世界の人間だけあって、その場所に心当たりがありそうだ。説明を聞いてもピンとこないマリのために、彼はチェストから地図を持って来て、ローテーブルの上に広げた。

「場所はここだよ。水の神殿がこの辺りで__」

 地図の中には特殊な絵が幾つも描かれている。そのうちの一つ、青い水滴のマークに、しなやかな人差し指が乗せられ、ツツツ……と真横に移動する。建物の絵が沢山描かれた“キングスガーデン”を素通りし、さらに“東”へと動く。止まったのは、連なる山々が描かれた場所だ。

「ここがイヴンナ山ね」

「そこかぁ……」

 なるほど、公爵の指の近くに炎のマークが見える。そこが火の神殿という事なんだろう。
 マリは水の神殿から王都までの距離と、王都からイヴンナ山までの距離を指で測り、移動にはだいたい2日間程かかりそうだと予想を付ける。

「うーん……。結構遠いな。皆の疲れがとれたら、また準備を整えて出発しよう」

「僕は疲れてないから、出発はいつでもいい……」

 実のところ、マリの発言はグレンに配慮していた。カリュブディスとの戦いで大量の魔力を使い、倒れてしまったからだ。それなのに、当の本人は平気らしい。

「タフだな。セバスちゃんと公爵はどう?」

「……私はマリお嬢様に合わせますよ……」

「あー、そう」

 隣に座るセバスちゃんは異様に元気がない。精気が抜けているとでも言えばいいのだろうか。
 まぁ、理由はハッキリしている。アリアとの事を後悔しているのだ。
 今朝のアリアから彼への告白劇は、色んな意味で衝撃的だった。どうせ靡くだろうと思ったのに、意外にもマリ達との旅を選んでくれた。それにはちょっと感動してしまった。
 だというのに、彼はあの直後キャンプカーの床に涙の池を作ったので、マリは心底呆れてしまったのだ。

(コイツの事だから、どうせ、この世界で女と二人で暮らしていく自信がないとか、アリアをニューヨークに連れて行ったら不幸にしてしまうとか、ゴチャゴチャ考えたんだろうな)

 もっと大胆な行動をしてみたらいいのにと思わなくもないが、それを伝えるのはメンドクサイ。

 マリの前に座る公爵にはアリアとの一件をチクったので、セバスちゃんの様子を半笑いで見ていたのだが、飽きたのか、マリに視線を向けてきた。

「出発は数日待ってくれるかな? 一応今回の事は僕から国王に報告したいんだ。モイスや騎士団からも伝えてくれているとは思うけど、変に歪んだ内容になってないとも限らないからね」

「あーそっか。国王はまだ水の神殿がケートスに襲撃されていると思っている可能性もあるんだね。確かに状況を伝えるのは、あの場に居た人の方がいいか」

 その点はモイスも条件を満たしているが、信用度の面で公爵に軍配が上がる。

「それと、マリちゃんはグレン君を真の勇者にと考えているって事でいいんだよね? 国王にそう伝えてしまうよ?」

 マリはビクリとする。斜め前に座る白髪の男を見ると、アメジスト色の瞳がこちらを向いていた。
 本人の前で宣告するのが妙に照れくさい。

「そ、そうだね! この人水の神からスキルを貰っちゃってるから、選ばざるをえない! っていうか、最初から一択ではあった!」

「……何で慌てるのかな? 堂々と指名すればいいだけなのに」

「慌ててなんかないし! 報告宜しく!」

 目の前に座る男に生暖かい目を向けられた気がするが、気づかないふりだ。

「はいはい。今日はウチのシェフに王都料理のフルコースを作らせるから、楽しみにしてて。それまで、それぞれの部屋にお湯を運ばせる。ゆっくりと疲れを癒してほしい」

「うん。有難う」

 キャンプカーもそこそこ居心地が良いが、どっしりとした建物の中はやっぱり安定感があって落ち着く。窓の風景が流れないのも素晴らしい。
 王都に家を持っててくれた公爵には感謝だ。
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