米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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帰還からまた旅支度

帰還からまた旅支度③

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 公爵邸の客室に入ると、すぐにお湯が運び込まれた。ネコ脚のバスタブにたっぷりと入れてもらったお湯を入浴剤でアワアワにしてから、マリは服を脱ぎ捨て、ドボンと浸かる。
 キャンプカーの物よりも大きいバスタブは脚を伸ばしても余裕があり、とても快適だ。

 鼻歌を歌いながら、次の目的地に思いをはせる。

(ドワーフって、鉱石の加工技術が凄いんだっけか。集落に寄って、グレン用の剣を入手出来ないかな?)

 グレンとしたやり取りを思い返してみると、確かオリハルコンという鉱石を使った剣が理想的だったはずだ。そして、それを加工出来るのはドワーフ族のみ。一振り打ってもらうためには、交渉が必要になるのかもしれない。
 鉱石自体も、ドワーフの集落で普通に売っているならいいのだが、特殊な入手法だったら厄介だ。
 ハリテクトリ侯領へ出発する前に情報を集めるべきだろう。

 マリは王都でやっておくべき行動を頭の中で一つ一つ確認する。
 それを9つ程思い浮かべたところで、急激な眠気に襲われた。

(……うぅ……ん。これから夕食なのに……。眠い)

 睡魔に対し、マリはあまりにも無力。バスタブのヘリに両腕を乗せると、意識が遠くなっていった__。



(あれ……ここは?)

 暗闇の中、マリの両手は何かを握っている。どうやら手摺りの様だが今これを掴んでいる理由が分からない。
 ザァザァと聞こえるのは、外に雨が降っているからだろうか?
 周囲を見渡すと、ここはニューヨークにあるマリの自宅だった。
 何故かマリは、階段の踊り場に身を潜めている。
 しかも身につけているのは、レースやリボンがゴテゴテとついたパジャマ。記憶が定かなら、子供の時に着ていたやつだ。

(夢の中にいるの?)

「___、_____」

 階下から話し声が聞こえてくる。
 その声が父のものに似ている気がして、手摺りの間から様子を伺う。
 エントランスには背の高い男性が二人__いや、雷の光で三人目の姿が浮かび上がった。父に対峙する白髪の男性が、痩せた少年を担ぎ上げていたのだ。その少年の髪も白い。凄く嫌な予感がする。
 彼が着ている服は、所々が黒ずんだチュニック。男性二人が現代的な服装をしているので浮いてしまっている。

「__こんな子供が錬金術の研究所を壊滅させた……?」

「漸く最高傑作が出来たみたいだ。僕の血とダーシィの血を提供したら、上手いことブレンドして作り上げてくれたんだよ」

「破壊衝動を抑えられない個体は、ウチの研究所では受け入れられない。今までの試験体がどうなったのか、説明しただろう」

「対処法はあるじゃないか。この個体の記憶を君のスキルで抜きとって、僕の記憶を移そう。そうしたら、だいぶ扱いやすくなるだろう」

「お前の記憶を移した試験体は何体もダメになっているぞ」

「一部だけ移せばいいんじゃない?」

 男達の話は、最初よく分からなかった。だけど、聞いているうちに、足元から冷気が上がり、全身の体温が奪われる。
 ピンときてしまったのだ。
 彼等の話は、どこもこれも、マリがよく知る人物に繋がっている。

(これって、夢……じゃないような……? 異世界に渡っていた資産家の息子……、ニューヨークにある研究所……、あれ?)

「あちらの世界へのゲートが開くのは、十年後。それまでに__」

 激しい雨音に、話が聞こえなくなってしまった。
 再び走った雷の光に照らし出された白髪の男性の顔は、マリの良く知る人物に似すぎている。

 マリは口を抑える。
 今見ているのは、きっと夢なんかじゃない。
 過去に実際起こった事なんじゃないだろうか?

(記憶再生スキルが発動してるんじゃ!? って事は、この記憶は私から一度消しさられた!)

 男達の会話の内容から察するに、マリは父親のスキルにより、記憶を抜きとられているのかもしれない。
 その事に思い至ったマリは、湧き上がる怒りに歯軋りした。

(パパ……。子会社を使って、非人道的な研究を行ってたんだ……。サイアクじゃん。くそ野郎じゃん)

「取り敢えず分かった。お前の言う通りにしよう」

 何を承諾したのか理解してしまった。
 マリはそれ以上父親の話を聞いていられず、履いていたスリッパを彼の後頭部にブン投げた。

「パパ! 見そこなった! よくもそんな、悪魔みたいな研究が出来たな! このゴミ虫!!」

 男二人はマリを見上げ、厳しい顔をした。

「あれは……君の娘だったね」

「ああ……」

「記憶を消しておいてね」

 父は辟易とした雰囲気を醸し出しながら階段を上ってくる。この記憶を持ち帰るためには、彼から逃げなくちゃならない気がする。マリは残るスリッパも投げつけ、全力で走った。
 バタバタと自室に飛び込んで鍵を閉める。

「マリ! 開けなさい! 良い子だから!」

「あっち行け! 大嫌いだ!」

「そんな、嫌いにならないでくれ! 私の可愛い__」



「__マリさん!!」

 揺らされる感覚で意識が浮上する。
 目を開けると、グレンの顔が随分近くにあった。一瞬夢の中の男かと思い、焦ったが、纏う雰囲気が全く異なる。
 マリを覗き込むのはグレンで間違いないだろう。

「あ、グレン……私……」

「良かった。いつになってもダイニングルームに現れないから、心配で来てみたんだ。ドアをノックしても反応がなくて……、室内に入らせてもらった。そうしたら、マリさんがバスタブで倒れてて……」

「え……」

 嫌な予感がし、マリは状況を確認する。ベッドに寝かされていて、身体を覆っているのは、あまりに頼りない薄い布一枚……という事は、グレンはマリの裸をバッチリみたのだ。

「ああぁぁぁああああ!!!??? アンタが見たもん全部忘れろーーー!!!」

 グレンの胸ぐらに掴みかかるも、布がペラリと剥がれ落ちて、あせりまくる。

「ごめん……、でも忘れられないかも……」

 赤い顔をしながらも、彼の視線はマリの胸に固定されている。

「ふざけんな!!」

 グレンの頬を力一杯引っ叩いた後、マリは泣きながらベッドに潜り込んだのだった。
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