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帰還からまた旅支度
帰還からまた旅支度④
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一夜明け、マリとセバスちゃんそしてグレンの三人は、王都の冒険者ギルドに行くために、通りを歩く。
ギルドに何をしに行くかというと、レアネーで共闘したナスドへの引き合わせてを求めるためだ。やっぱり、出発前にアダマンタイトやオリハルコン、そしてドワーフ族についての情報を仕入れておいた方がいいだろうから、世界各地を冒険しているSランク冒険者のナスドが頼りになりそうだと思われた。
彼は王都の冒険者ギルドに籍を置く者。レアネーで別れる時の会話を思えば、暫く王都で休養するらしいから、今なら会える可能性が高い。
彼から、亀の甲羅団に所属している他のメンバーの事も聞いておきたい。魔王との戦闘で重傷を負ってしまった人達はどうしているだろうか。
「……公爵が王城に出掛ける前に言ってたんだけど、ハリテクトリ侯領の事は、プリマ・マテリアのモイスさんも詳しいだろうから、会った方がいいみたい。あの人の家は公爵家に近いらしいよ」
前を歩くグレンが喋りながら急に立ち止まったので、ぶつかりそうになった。
急に振り向いた彼に、マリは焦る。
「あ、あーそうなんだ。それより、昨日の……、いや、なんでもない」
「ああ、マリさんの身体って綺麗だね。特にむn__」
「__うっさい! うっさい!」
とんでもない事を口にしようとするグレンの背中を拳でガツガツ殴る。
「痛い……」
困惑気味の彼の頬にはマリが昨日つけた手形が残ったまま。さっさと治さないのは何でなのか。
だけど10発程叩いた後、ハッとする。
昨日取り戻した、記憶らしき物の内容を思い出したからだ。
あれが事実だとするなら、マリは裸を見られただけでグダグダ言えない。
(やっぱりあれって、水の神から貰ったスキルが発動したんじゃないかな。ただの夢にしては具体的すぎたし……)
「グレン」
「何?」
「アンタってさぁ、この世界に来たのは初めてって言ってたよね?」
「……言った」
「ふぅむ……。ニューヨークの研究所で目が覚めるまでの間の事って、研究員からどう聞いてるの?」
「僕の身体が虚弱だったから、肉体の増強をしていたと言っていた……。マリさん、何か気になる事でも?」
「うーん。ちょっとね……」
完全に記憶を無くしている様子のグレンに、あの事を伝えていいものか悩んでしまう。そもそも昨日のはただ夢を見ていただけという可能性があるから尚更だ。何か核心に迫れる質問は無いかと、マリはポケットに手を突っ込んで、「うーむ」と唸る。
手に当たる硬い感触はスマートフォン。何となく取り出してみて、その黒い画面を見ているうちに、いい事を思い付いてしまった。
ポチポチと操作し、家族三人と犬一匹が写った画像を表示する。
静かにマリの出方を待っていてくれたグレンの目の前に、それをかざす。
「ん?」
「ここに写ってるオッサンに見覚えはない?」
「オッサン……」
アメジスト色の両の瞳が、中央に寄る。その表情がユニークではあるが、これから発せられる回答が怖すぎて笑えない。
「……一緒に写っているのはマリさん?」
「そ、そうだよ! そこのオッサンは私の実の父親だからねっ!」
グレンの質問にギクリとしてしまったが、この場限りの嘘をつくなんて選択肢はない。
彼はコクリと頷き、スマートフォンから目を逸らした。
「……彼に似ている人に会った事がある気がする。二、三回研究所に来て、僕への実験内容を研究者に質問していたんだ。外部の人間が来るのは珍しいから、何となく覚えていたけど……、会った回数が少な過ぎるから、同一人物かどうかは判別出来ない」
目の前の彼は自信が無さそうな表情をしたが、マリはその回答で充分だった。やっぱり、彼は父親の会社の息がかかった研究所に居たと考えていいだろう。そして昨日見たのは、マリの過去の記憶だったんだろう。
グレンはこの世界の錬金術の研究で生み出され、研究所を破壊した後、どういう方法かでマリの生まれた世界に渡った。
自力かもしれないし、他力かもしれない。
記憶の中の、成人した白髪の男が一枚噛んでるのは間違いなさそうである。
(そして、66番目の試験体に……)
マリは気持ちが重くなり、ため息をついた。
「たぶんそれ、パパで間違いない……」
「凄い偶然……」
今考えた内容を、グレンに伝えるべきだろう。
アメジスト色の瞳を見ながら、マリは決意した。しかし口を開きかけて、固まる。
(ちょっと待て、これって、私に死亡フラグ立っちゃうじゃん……)
伝えた結果、彼がブチギレで暴れ出したらやばい。
こんな酷い内容を知ったら、マリだったら絶対に怒り狂う。この少年だってそうなる可能性がある。
マリはまだ死ぬ気はないので、セバスちゃんにボディーアーマーなりを用意してもらい、それを装着してから伝えようと考える。
さっきから気配が無い彼がどうしているのか気になり出し、後ろを振り返ると、かなり後方で泣いていた。
しかも、通行人の老婦人に背中を撫でられている。
(うわぁ……)
たぶんアリアを思い出して泣いている。昨日の今日だからしょうがないのかもしれないが、彼等の色恋に全く関係のないマリは正直呆れてしまった。
取り敢えず、グレンに過去の出来事を伝えるのは先延ばしだ。
ギルドに何をしに行くかというと、レアネーで共闘したナスドへの引き合わせてを求めるためだ。やっぱり、出発前にアダマンタイトやオリハルコン、そしてドワーフ族についての情報を仕入れておいた方がいいだろうから、世界各地を冒険しているSランク冒険者のナスドが頼りになりそうだと思われた。
彼は王都の冒険者ギルドに籍を置く者。レアネーで別れる時の会話を思えば、暫く王都で休養するらしいから、今なら会える可能性が高い。
彼から、亀の甲羅団に所属している他のメンバーの事も聞いておきたい。魔王との戦闘で重傷を負ってしまった人達はどうしているだろうか。
「……公爵が王城に出掛ける前に言ってたんだけど、ハリテクトリ侯領の事は、プリマ・マテリアのモイスさんも詳しいだろうから、会った方がいいみたい。あの人の家は公爵家に近いらしいよ」
前を歩くグレンが喋りながら急に立ち止まったので、ぶつかりそうになった。
急に振り向いた彼に、マリは焦る。
「あ、あーそうなんだ。それより、昨日の……、いや、なんでもない」
「ああ、マリさんの身体って綺麗だね。特にむn__」
「__うっさい! うっさい!」
とんでもない事を口にしようとするグレンの背中を拳でガツガツ殴る。
「痛い……」
困惑気味の彼の頬にはマリが昨日つけた手形が残ったまま。さっさと治さないのは何でなのか。
だけど10発程叩いた後、ハッとする。
昨日取り戻した、記憶らしき物の内容を思い出したからだ。
あれが事実だとするなら、マリは裸を見られただけでグダグダ言えない。
(やっぱりあれって、水の神から貰ったスキルが発動したんじゃないかな。ただの夢にしては具体的すぎたし……)
「グレン」
「何?」
「アンタってさぁ、この世界に来たのは初めてって言ってたよね?」
「……言った」
「ふぅむ……。ニューヨークの研究所で目が覚めるまでの間の事って、研究員からどう聞いてるの?」
「僕の身体が虚弱だったから、肉体の増強をしていたと言っていた……。マリさん、何か気になる事でも?」
「うーん。ちょっとね……」
完全に記憶を無くしている様子のグレンに、あの事を伝えていいものか悩んでしまう。そもそも昨日のはただ夢を見ていただけという可能性があるから尚更だ。何か核心に迫れる質問は無いかと、マリはポケットに手を突っ込んで、「うーむ」と唸る。
手に当たる硬い感触はスマートフォン。何となく取り出してみて、その黒い画面を見ているうちに、いい事を思い付いてしまった。
ポチポチと操作し、家族三人と犬一匹が写った画像を表示する。
静かにマリの出方を待っていてくれたグレンの目の前に、それをかざす。
「ん?」
「ここに写ってるオッサンに見覚えはない?」
「オッサン……」
アメジスト色の両の瞳が、中央に寄る。その表情がユニークではあるが、これから発せられる回答が怖すぎて笑えない。
「……一緒に写っているのはマリさん?」
「そ、そうだよ! そこのオッサンは私の実の父親だからねっ!」
グレンの質問にギクリとしてしまったが、この場限りの嘘をつくなんて選択肢はない。
彼はコクリと頷き、スマートフォンから目を逸らした。
「……彼に似ている人に会った事がある気がする。二、三回研究所に来て、僕への実験内容を研究者に質問していたんだ。外部の人間が来るのは珍しいから、何となく覚えていたけど……、会った回数が少な過ぎるから、同一人物かどうかは判別出来ない」
目の前の彼は自信が無さそうな表情をしたが、マリはその回答で充分だった。やっぱり、彼は父親の会社の息がかかった研究所に居たと考えていいだろう。そして昨日見たのは、マリの過去の記憶だったんだろう。
グレンはこの世界の錬金術の研究で生み出され、研究所を破壊した後、どういう方法かでマリの生まれた世界に渡った。
自力かもしれないし、他力かもしれない。
記憶の中の、成人した白髪の男が一枚噛んでるのは間違いなさそうである。
(そして、66番目の試験体に……)
マリは気持ちが重くなり、ため息をついた。
「たぶんそれ、パパで間違いない……」
「凄い偶然……」
今考えた内容を、グレンに伝えるべきだろう。
アメジスト色の瞳を見ながら、マリは決意した。しかし口を開きかけて、固まる。
(ちょっと待て、これって、私に死亡フラグ立っちゃうじゃん……)
伝えた結果、彼がブチギレで暴れ出したらやばい。
こんな酷い内容を知ったら、マリだったら絶対に怒り狂う。この少年だってそうなる可能性がある。
マリはまだ死ぬ気はないので、セバスちゃんにボディーアーマーなりを用意してもらい、それを装着してから伝えようと考える。
さっきから気配が無い彼がどうしているのか気になり出し、後ろを振り返ると、かなり後方で泣いていた。
しかも、通行人の老婦人に背中を撫でられている。
(うわぁ……)
たぶんアリアを思い出して泣いている。昨日の今日だからしょうがないのかもしれないが、彼等の色恋に全く関係のないマリは正直呆れてしまった。
取り敢えず、グレンに過去の出来事を伝えるのは先延ばしだ。
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