米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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帰還からまた旅支度

帰還からまた旅支度⑥

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 マリは黒く煤けた冒険者ギルドのロビー内を見回し、「うわぁ……」と苦笑いした。
 Sランクの冒険者同士の私闘は、結果から言うと、ユネの圧勝だった。男達が飛びかかって来た瞬間、マリはユネによってポイッとグレンの方に放り投げられた。
 硬い胸にぶつかるやいなや、ロビーは眩い閃光に包まれた。
 グレンがバリアを張ってくれなかったら、マリやセバスちゃんの命は無かったかもしれない。

 石の床には、ユネにケンカを吹っ掛けた男達が倒れ、白目を剥いている。

(生きてるのか……?)

 ロビー中央で仁王立ちするユネはそんな事、お構いなしにドヤ顔Wピースをきめているので、マリが逆に居た堪れなくなってくる。

「ユネ……、頼むから派手な魔法をギルド内でぶっ放すのは控えてくれ」

 カウンターの影からヨロヨロと立ち上がったのは、先程冒険者ギルド側を代表していた中年男性だった。頭頂部の髪がチリチリになった以外に外傷が無さそうなのは、カウンターが特殊な性能だからだろうか?
 魔法を防御する加工なのかと気になり、マリはカウンターをジロジロと観察する。

「アンタ達はアタシに感謝すべきだと思うけどね。せめてコイツ等の後始末は頼むよ」

「はぁ、全く……」



 冒険者ギルドでのバトルで死んだ者はおらず、負傷者は二階の病院に運び込まれた。マリ達は後始末やらなにやらを手伝ったりしたので、感謝され、優先的に事務処理の順番を回してもらえた。
 ナスドへの取り次ぎはユネに頼めばいいのだから、正直いって、ギルドに用はない。でも折角の機会だから冒険者ランクについて交渉してみる事にした。
 ダメ元のつもりだったが、意外にもランクを上げてもらえた。どうやら、レアネー市の冒険者ギルドのシルヴィアさんが、王都の方に連絡を入れてくれていて、マリ達のレアネーでの活躍がここに伝わっていたようなのだ。

 冒険者カードの右上に記された『C』の文字に、マリの胸は満たされる。前がFだったので、ランク上昇数は3。
 異世界のよく分からない組織のランクなんてどうでもいいと思っていたけど、人権が認められそうなくらいのランクが付けられてみると、悪くない感じだ。

 隣を歩くグレンも自らのカードに視線を落としている。
 レアネーでは登録をしなかった彼に、折角だからと冒険者になるように薦めてみたのはマリだ。
 冒険者ランクはマリやセバスちゃんと同じC。ビッグバッドの討伐の貢献値は加算されていないはずなのだが、マリ達と同じランクなのは、それだけレアネーでの実績が大きく評価されているからなんだろう。

 彼のステータスの測定の際、ギルドはちょっとした騒ぎが起こった。ジョブが「勇者」だったからだ。ケートス事件の中心人物ではないかと勘違いされ、剣呑な雰囲気になったが、そこはユネが間に入って誤解を解いてくれた。
 勇者はこの世界に二人しかいないので、これからもアレックスがやらかしたお馬鹿な行動がグレンの仕業だと決めつけられてしまいそうで、気の毒である。

 そんなこんなで、ギルドでの用を足したマリ達は、ユネに連れられ、亀の甲羅団のアジトへと向かっている。
 大通りを外れ、小道の角を幾つも曲がると、民間が立ち並んでいた。
 窓に干された洗濯物や入口の側に置かれた水瓶等がなかなかに所帯染みている。

「アンタの瞳、何で金色に変わったのかと不思議に思ってたんだけど、あの伝説のカリュブディスと同化しちゃったとはね」

 マリが先程話した水の神殿で経験した出来事をユネは再び持ち出し、面白そうに笑う。

「瞳だけじゃなくて、爪もだよ。ホラ見て」

 ユネは振り返り、マリが見えやすい様にかざしている爪を見る。

「本当だ。って事はアンタを倒したら、ギルドからたんまりと報酬が貰えるね」

「えぇ!?」

「冗談だよ。アンタ、殺気向けてくるのやめな」

 彼女がチラリと目を向けたのはグレンだ。彼のアメジスト色の瞳はユネをジッと見詰めている。“殺気”とやらを出しているんだろうか? マリには良く分からない。

「マリ。今の事、人前であんまり言わない方が良いよ。狙ってくれと言ってるようなもんさ」

「うーん。そうなのか。窮屈だなぁ……」

「有名になったら、どっちみち命の危険に晒されるんだけどね。あ、ここがアジトだよ」

 辿り着いた建物は、周囲と良く馴染む古臭いデザインだ。
 レンガと石のハイブリッドの外壁で、所々雨垂れで変色している。

「普通の民家みたい」

「元はナスドの生家だったからね。さぁ、入ろう」

 四人で建物の中に入る。
 内部はシンプルなインテリアで纏められていて、スパイシーな良い香りが漂っていた。
 レアネーでナスドに食べさせてもらったタンドリーチキン風の料理を思い出し、お腹が減ってくる。
 マリは図々しくも強請ってみようと考える。

「ナスドさん料理中なのかな? お腹空いたな」

「そうかもね。今昼時だし、アンタ達の分の料理を出せないか聞いてみるか。ちょっと応接室に入って待っててくれ」

「うん!」

 ユネは側の扉を開き、マリ達に「入る様に」と促し、自らは建物の奥へと消えて行った。
 豹の皮に似た物が掛けられたソファに三人で座っていると、程なくして荒々しく扉が開かれ、ナスドが現れた。相変わらず○テイサムに激似である。

「よぉ! お前等、よく来てくれたな!!」

 そのパワフルさに、三人で圧倒されながらも、それぞれ挨拶を返す。
 彼も大怪我を負ったはずだが、もうスッカリ良くなったようだ。とんでもなく大きな皿を持っていてもグラリともしない。
 そこに盛られているのは、七面鳥の丸焼きの様だが、大きさが10倍はありそうだ。

「それ、何の料理? スッゴイ迫力!」

 気になりすぎて、聞いてみると、「よくぞ聞いてくれた」と豪快に笑った。

「ちょうど新鮮なコカトリスが手に入ったから、中に米やらスパイスやらをつめて焼いたんだよ。お前等腹が減ってるんだってなぁ、遠慮なく食いな!」

「やった!」

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