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テスカティア山からニューヨークへ
テスカティア山からニューヨークへ③
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翌日、ヘイムを母に預け、アレックスの家へとやってきたマリは、ワイズ家の執事に意外な事を告げられた。
『お坊っちゃまのご友人メルク=リウス様は、今高校に行っておられます』との事だ。
しかもその高校というのが、マリが通うキュリー&バンフォード女学園らしい。
入学するのがそれなりに難しい学校のはずなのに、これ程短時間に転入出来るのかと驚く。
アレックスの両親が金でも積んだのだろうか?
風の神と話をするため、マリは高校までやって来た。
当分来るつもりがなかったので、変な感覚だが、この際だから向こう一ヶ月程学校を休む事を担任に伝えたらいいだろう。
屋内の廊下には誰の姿も見えない。ただ、教鞭をとる教師達の偉そうな声だけが聞こえる中を、マリはローファーの踵を鳴らして歩く。
自分の教室のドアを開くと、クラスメイト達が一斉にこちらを向く。
静まり返る中で、マリが「久し振り」と右手を上げると、生徒たちは「ワッ」と周りに集まってきた。
「マリ!! 今までどこに行ってたの!?」
「南米に食材探しに行ったって本当!?」
「イイ身体の男いた!?」
相変わらずの友人達の様子に、マリは満面の笑みを浮かべた。
「皆心配かけてごめん! どうしても食べてみたい食材があったから、執事と一緒に旅してたんだ」
父と母にはバレてしまったが、同級生には異世界に行ってただなんて言えるはずがない。
無難な嘘を付く。
「マリらしいなぁ!」
「ほんと!」
彼女達はケタケタと笑い、マリの肩を抱いて教室の中に誘導してくれた。
そこでハタと気がつく。
教室の前方に金髪の美少女が座っていた。その幸薄そうな顔に見覚えがありすぎる。
風の神メルクリウスだ。制服ではなく、ワンピースを着ているので、周囲から完全に浮いてしまっている。
マリは友人達から離れ、ズンズンそちらに近寄った。
「はじめまして! メルクリウスさん。私はマリ・ストロベリーフィールド。少し話せないかな?」
彼女はマリを見上げ、驚愕の表情を浮かべた。
「ストロベリーフィールド君。今は授業中だ。転入生に絡んでないで座りたまえ」
担任が貧乏ゆすりをしながら失礼なことを言った。
暫く欠席していた生徒に向かってそれはないだろう。
休憩時間まで待つべきかと考えなおした時、意外なところから声が上がった。
「わたくしも、ストロベリーフィールドさんとお話ししてみたいです。少しだけ時間をください」
驚いたことに、目の前にいるメルクリウスが控え目な態度で主張してくれていた。
それでも担任はしぶり続けるので、マリはだんだん面倒になり、メルクリウスの腕を掴んで教室から出てしまった。
◇
無言状態で中庭に出て、ベンチに二人並んで座る。
「ねぇ、アンタ風の神なんでしょ?」
無駄な前置きは無しに、マリは単刀直入に聞いた。
隣の彼女は、思い詰めた表情でコクリと頷く。
「その通りです。わたくしからも質問があります。貴女の中に神族の気配があるのですが……、貴女は何者なんですか?」
流石は神なだけあって、察しがいい。
「私の中にはカリュブディスが居る。同化していると言った方が正しいのかもしれないけど」
今日は茶色のカラーコンタクトをして、金色の瞳を隠しているが、マリの中にはたしかに彼女がいる。
「カリュブディス……、水の神が養っている神族の子供ですか。瘴気に侵されやすい肉体だったと記憶していますが、貴女の身体はなんともないのですか?」
「何ともないよ。でもさ……、私の体を心配する暇があるんなら、アンタの信徒の身を心配すべきじゃない? 折角アンタを慕って信仰しているだろうに。見捨てるなんて可哀想」
悪い笑顔を浮かべながら、メルクリウスの美しい顔を覗き込むと、彼女は動揺したように、その目を彷徨わせた。
「アンタがこっちで男とイチャついている間に、向こうの人々は頭がおかしくなって、モンスターに襲われて、神を呪うのかな?」
「やめて下さい……」
「私からも逃げる?」
まるでいじめっ子の様な言い方になってしまっているが、マリも彼女の尻拭いをしてあげている以上、これくらいは 許される気がしている。
「悪い事をしている自覚はあります……。人を守り導く義務を負っているのに……、逆のことをしている。でももう限界なんです」
「限界?」
「神族に生まれ落ちてから、すぐに前代の風の神と世代交代し、私はずっとあちらの世界の民達の為に働き続けていました。朝から夕方までずっと……空気を浄化しつづけて……。最近は特に酷く、一時も休める時間がありませんでした」
彼女が最近忙しかったのは、たぶんオーパーツが壊れかけていたからだろう。
もう一つ創った事を伝えてあげた方がいいだろうか。
「ただひたすら働き続ける毎日が苦しくて、心が壊れてしまいそうだった……、そんな時に現れたのがアレックスでした。彼から聞く、別の世界の話はどれも楽しくて……」
「それで、今回一緒について来てしまったわけか」
彼女の話は分からなくもない。だけど、何でよりによってアレックスなんかに心を許してしまったのか?
そこが心底疑問である。
『お坊っちゃまのご友人メルク=リウス様は、今高校に行っておられます』との事だ。
しかもその高校というのが、マリが通うキュリー&バンフォード女学園らしい。
入学するのがそれなりに難しい学校のはずなのに、これ程短時間に転入出来るのかと驚く。
アレックスの両親が金でも積んだのだろうか?
風の神と話をするため、マリは高校までやって来た。
当分来るつもりがなかったので、変な感覚だが、この際だから向こう一ヶ月程学校を休む事を担任に伝えたらいいだろう。
屋内の廊下には誰の姿も見えない。ただ、教鞭をとる教師達の偉そうな声だけが聞こえる中を、マリはローファーの踵を鳴らして歩く。
自分の教室のドアを開くと、クラスメイト達が一斉にこちらを向く。
静まり返る中で、マリが「久し振り」と右手を上げると、生徒たちは「ワッ」と周りに集まってきた。
「マリ!! 今までどこに行ってたの!?」
「南米に食材探しに行ったって本当!?」
「イイ身体の男いた!?」
相変わらずの友人達の様子に、マリは満面の笑みを浮かべた。
「皆心配かけてごめん! どうしても食べてみたい食材があったから、執事と一緒に旅してたんだ」
父と母にはバレてしまったが、同級生には異世界に行ってただなんて言えるはずがない。
無難な嘘を付く。
「マリらしいなぁ!」
「ほんと!」
彼女達はケタケタと笑い、マリの肩を抱いて教室の中に誘導してくれた。
そこでハタと気がつく。
教室の前方に金髪の美少女が座っていた。その幸薄そうな顔に見覚えがありすぎる。
風の神メルクリウスだ。制服ではなく、ワンピースを着ているので、周囲から完全に浮いてしまっている。
マリは友人達から離れ、ズンズンそちらに近寄った。
「はじめまして! メルクリウスさん。私はマリ・ストロベリーフィールド。少し話せないかな?」
彼女はマリを見上げ、驚愕の表情を浮かべた。
「ストロベリーフィールド君。今は授業中だ。転入生に絡んでないで座りたまえ」
担任が貧乏ゆすりをしながら失礼なことを言った。
暫く欠席していた生徒に向かってそれはないだろう。
休憩時間まで待つべきかと考えなおした時、意外なところから声が上がった。
「わたくしも、ストロベリーフィールドさんとお話ししてみたいです。少しだけ時間をください」
驚いたことに、目の前にいるメルクリウスが控え目な態度で主張してくれていた。
それでも担任はしぶり続けるので、マリはだんだん面倒になり、メルクリウスの腕を掴んで教室から出てしまった。
◇
無言状態で中庭に出て、ベンチに二人並んで座る。
「ねぇ、アンタ風の神なんでしょ?」
無駄な前置きは無しに、マリは単刀直入に聞いた。
隣の彼女は、思い詰めた表情でコクリと頷く。
「その通りです。わたくしからも質問があります。貴女の中に神族の気配があるのですが……、貴女は何者なんですか?」
流石は神なだけあって、察しがいい。
「私の中にはカリュブディスが居る。同化していると言った方が正しいのかもしれないけど」
今日は茶色のカラーコンタクトをして、金色の瞳を隠しているが、マリの中にはたしかに彼女がいる。
「カリュブディス……、水の神が養っている神族の子供ですか。瘴気に侵されやすい肉体だったと記憶していますが、貴女の身体はなんともないのですか?」
「何ともないよ。でもさ……、私の体を心配する暇があるんなら、アンタの信徒の身を心配すべきじゃない? 折角アンタを慕って信仰しているだろうに。見捨てるなんて可哀想」
悪い笑顔を浮かべながら、メルクリウスの美しい顔を覗き込むと、彼女は動揺したように、その目を彷徨わせた。
「アンタがこっちで男とイチャついている間に、向こうの人々は頭がおかしくなって、モンスターに襲われて、神を呪うのかな?」
「やめて下さい……」
「私からも逃げる?」
まるでいじめっ子の様な言い方になってしまっているが、マリも彼女の尻拭いをしてあげている以上、これくらいは 許される気がしている。
「悪い事をしている自覚はあります……。人を守り導く義務を負っているのに……、逆のことをしている。でももう限界なんです」
「限界?」
「神族に生まれ落ちてから、すぐに前代の風の神と世代交代し、私はずっとあちらの世界の民達の為に働き続けていました。朝から夕方までずっと……空気を浄化しつづけて……。最近は特に酷く、一時も休める時間がありませんでした」
彼女が最近忙しかったのは、たぶんオーパーツが壊れかけていたからだろう。
もう一つ創った事を伝えてあげた方がいいだろうか。
「ただひたすら働き続ける毎日が苦しくて、心が壊れてしまいそうだった……、そんな時に現れたのがアレックスでした。彼から聞く、別の世界の話はどれも楽しくて……」
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