米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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テスカティア山からニューヨークへ

テスカティア山からニューヨークへ④

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 風の神の表情は、身勝手にニューヨークへ来た者とは思えぬ程、後悔に満ちていた。

「本当は戻りたいんでしょ? 向こうの世界に」

 マリの質問に、彼女は一瞬たりとも迷わずキッパリと頷く。

「えぇ。その通りです。ですが、今更どんな顔をして戻っていいか分からなくて……。それに、帰るすべもありませんし……」

「その辺は心配しなくてもいいよ。私が連れ帰ってあげれる」

「……そうなのですか?」

「アンタが気まずくない様に、適当な理由を考えて、神官達との間に入ってあげてもいいよ。たださ、向こうの世界へのゲートを開けれる魔法使いが今、魔力の回復中だから、その間この世界で一緒に遊ぼう!」

 話についていけてないのか、メルクリウスはポカーンとしていたが、たっぷりと時間をかけて頷いてくれた。

「その魔法使いさんが回復するまでの間に、覚悟を決めます。そしてアレックスさんと離別します」

「オッケー! じゃあこれから五番街に行って買い物しよっか! 私は一度家に戻ってバイクにサイドカーつけて来るから、ここで待ってて!」

「え、サイドカー? 分かりました。待っています」

 生まれながらにして、生き方を決められる事がどれ程窮屈か、マリ自身良く分かる。
 これから風の神として苦労するであろう彼女を、思いっきり楽しませてあげたっていいだろう。



 二日間の間に、マリと風の神メルクリウスはトップ・オブ・ザ・ロックからの夜景を見に行ったり、タイムズスクエアで買い物したり、ブロードウェイでミュージカルを観たり等ひたすらニューヨークで遊んだ。
 最初は二人だったのに、途中から魔法使いのヘイムや、憎きアレックスまでも加わり、老若男女四人組で回る事になってしまったが、それでもそこそこ楽しかった。
 アレックスはマリから婚約破棄された事もあり、風の神の面倒を生涯に渡ってみるつもりでいたらしいが、彼女から戻る意思を伝えられ、逆にホッとしたようだ。
 恐らくマリがネチネチと、異世界の状況をメッセージで伝えたおかげで、罪悪感が芽生えたのだろう。

 ニューヨークに帰ってから三日目の深夜。
 再びセントラルパークへとやってきたマリとヘイム、そして風の神はタートル池の側で、見送りの人々に対してひとときの別れを告げる。

 マリの為には両親。そして風の神の為にアレックスが来てくれている。

「マリ、家を継ぐ決意を固めてくれて良かった。正直なところ、アレックスでは頼りなく思っていたから助かった」

「私はただ組織をぶっ壊したいだけだよ」

 父の言葉に肩を竦め、母の方を向く。

「ママ。心配ばかりかけてごめん。絶対生きて帰ってくるから」

「マリ。貴女のやりたい様にやるといいわ。将来の事も含めて」

「有難う。でももう決めたから……」

 頭を撫でてくれる母の手が心地良くて、ウットリしてしまうが、ヘイムの術式が完成してしまった。

「ゲートが開きましたぞ! 安定しない時期ですので、お互い手をとり、はぐれない様に致しましょう!」

「オーケー! じゃあ行ってくるから!」

「アレックスさん。では元気で!」

「「「行ってらっしゃい!!」」」

 魔法陣の上で、三人で手を繋いで輪になると、足元が眩く光った。

(漸くグレン達と合流出来る! どうか無事でいて!)

 最終決戦の時は近い。
 再会を心待ちにすると同時に、死と隣り合わせになる恐怖を覚悟し、マリは歯を食いしばった。
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