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第二十四話 ルウド誘拐疑惑事件
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しおりを挟む馬車は速度を落とさない。ひたすら何処かに向かって走っている。
このままでは城からどんどん遠ざかってしまうのでルウドは馬車から飛び降りた。
土の上に転げ落ちて多少汚れて傷を負ったのは仕方がない。
脇の木の陰に隠れて馬車が去っていくのを見送ってからその場に座り込む。
空を仰ぐと木陰から真っ青な空が見える。もう陽が高い。
―――――何故こんな事に…?
昨晩まで楽しく飲んでいたのに。一体自分に何が起こっているのか?
ともあれここに居ては何も分からない、早く城に戻らなければ。
ルウドはゆっくり立ち上がり、歩きだす。
木々に囲まれた山道では通る者も滅多にいない。助けを呼ぼうにも人がいない。
山道の外れから大きな街が一望して見える。
門に囲まれた街、街の横には城壁に囲まれた敷地と大きなお城。
あの大きな街が見える程にルウドは城から遠ざかってしまった。
―――――誘拐されたとばれれば助けは来るだろうが…
嫌だ。そんな情けないことは容認できない。
ならば自力で出来るだけ急いで城へ帰らねばならない。
馬車を降りる際に打撲を負ったが足は無事なので早足に山を下る。
しばらく黙々と歩いていると突然どこからか声がかけられた。
「おい、あんた、止まりな!」
辺りを見回すと木陰から山賊の様ななりの男達が五人出てきた。
「……」
人は見かけではない。心底困っていたルウドは確認の為聞いてみる。
「山賊か?」
「そうだよ、山賊だよ!何だそのがっかりした顔?」
「私は今とても困っているのだが」
「おう!俺らは金に困っている!そうだな、金を出すなら聞いてやってもいいぞ?」
「私は何者かに突然ここまで運ばれて来たんだ、金はない」
「信じねえよ、その話全て。ここを通るには通行料がいる。有り金全部寄こしな!」
「金がないという話も信じないのだな。仕方ない…」
「お、なんだ、やるか!」
「言っても信じてくれないのだろう?」
「おうともさ!お前を倒して身ぐるみはいでやる!」
山賊の大男五人は木の棒を持って一斉にルウドに襲いかかる。
ルウドは素手だったがそれでも山賊達は簡単に倒せた。
そもそも鍛え方が違う。
「ところでお前達、この道人は通るのか?」
「通る訳がない。通る奴は余程の訳ありだ。ここが山賊の縄張りと言うのは昔から誰でも知っている。だからここを通って襲われた奴は被害届も出せない寸法だ」
「なるほど…‥」
ルウドは倒れた山賊達を冷たく見降ろす。
「まあもっとも最近はそんな力づくなやり方をせんでも高い通行料を払ってここを通りたいと言う輩が多い。だから通行料を定めて商売になった」
「嘆かわしいな…」
「兄ちゃん、それが処世ってもんだよ。それが有り難い連中もいる」
「もういい…そんな話が聞きたいわけではないし」
結局ここに助けはいない。それだけが明らかだ。
ルウドはがっかりした。歩いて山を下っても帰りつくのは夜中か明日だ。
「どうしよう…‥」
呟いたところでどうしようもない、歩き続けるしかない。
「ではな、次に会ったら捕えてやるから覚えておけ」
ルウドは仕方なく歩きだす。
昨晩から何も食べていない、怪我を負いずっと歩き続け山賊を片づけ相当体力が消耗している。
だからと言って止まる訳にはいかない。遅くなっても城に帰って、何かいい訳を考えておかねばならない。
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