意地悪姫の反乱

相葉サトリ

文字の大きさ
192 / 200
第二十八話 魔法の鍵の物語

5

しおりを挟む



 客部屋を与えられ、ルウドは一人でぼんやり考え事をしているとロズアルドがやって来た。彼もこの屋敷への滞在を許されている。
 昼間はルウドとは別行動で何処かへ行っていたが夕方には戻ってきた。

「ロズ、調べ物は終わったのか?」

「まあ大体ね、ルウドは知りたい事は知れたのかい?」

「・・・さあ‥?」

 ルウドは自分の母と繋がる物を捜していたが実際何を捜していたのか忘れてしまった。
 身内とか血筋とかそういうものを求めても今更何になるのか?

「・・・・・母を知る人に会えて良かったが、私の捜していたのとは違う。何の意味も持たないとは思わないが何かが違う‥」

「何がだい?わからないよ・・」

「私が知りたいのは・・・そうだ、鍵の事だ」

「鍵?」

「それが欲しいとかそういうわけではなくて、必要だから知りたいんだ」

「そうなんだ‥?」

 ロズがにこりと笑う。

「じゃあ遺跡とか行ってみる?昔の城跡とか。僕結構詳しいんだ」

「以前行った所も城あとだったな。そう言うの調べて何かあるのか?」

「そりゃ大昔の残り香とか、もしかすると見つかるかもしれない」

「廃墟になった城と言うのは大概それを占有した国が調べつくすはず。有効なモノが残っている可能性はほぼないのでは?」

「完全にないとは言えない。だから何度でも足を運ぶんだよ」

 それは不毛な作業だ。しかしルウドはロレイアでロヴェリナの魔法の隠し扉に入った。
 また同じものがないとは言えない。








  ロヴェリナは湖を眺め佇む。
 静かな水面に風が吹き、波が立つ。
 その様を見つめて不安に揺らぐ。

  ―――ルウドが真実に近づいていく…
 
 不安がないと言えばウソになる。
 真実を知った彼に何の変わりがなかろうと彼の周囲はほっておかない。
 彼の意思とは関係なく周囲がそれぞれの思惑に彼を巻き込んでいく。
 そして彼は優しいから彼らを捨てておくことはできないだろう。

 「‥‥どうして…」

  知りたいというなら仕方がない。しかし今の彼に必要な情報があっただろうか?
  なぜ彼は真実を欲するのだろう。鍵など求めても彼には意味あるものとは思えない。

「・・・なにをしている?」

「・・・・・・」 


 ゆらりと騎士の幽霊が現れた。

「クラディウスさん。またお邪魔してごめんなさい。でもここに人がいるからと言っていちいち声をかけていただかなくてもいいのですよ?
 ここに来る人はたぶん何か悩んでいて一人でいたい人が多そうだから」

「ロヴェリナどのは人ではないだろう?」

「それでもあなたには苦痛ではないかしら?」

「なに。少しくらい構わないときに私は現れる。無理はしていない」

「そうなのね」

 ロヴェリナはぼんやり水面を見つめる。

「…またあの者の心配か。なら側についていればよいものを」

「ずっとついてると嫌な顔されるんだもの。聞かれたくないことを聞かれるし」

「仕方があるまい。答えを持っていると知っているのだから」

「あの子はどんな答えを求めているのかしら?」

「当人でなければわからんな」

「‥‥それが、当人もよく分かっていないようで」

「どこまで朴念仁だ」

「そうねえ…困ったものだけど。見ていることしかできない」

「真実に近づいていていくのがそれほど不安か」

「私がいることで運命が悪い方向へ向かっている気がしてならない。そもそも私が現れて子供たちに良かったことは一度もない」

「なのにあなたは現れるのか」

「きっとそれが私の罰なの。どうしてもこの物語の終わりを見届けなければならないの。私はそのくらい酷い罪を子供たちに残したから」

 騎士は眉根を寄せてロヴェリナを見る。

「・・・していることは私と変わらんが。私などよりずっと途方もない。魔女というものはそら恐ろしい」

「あなたはもう成仏してもいいでしょう。あなたが望むなら手伝ってもいいのよ?」

「魔力の残り香のあなたがか?」

「魔法使いが手伝ってくれるわ」

「そうか・・・・まあいずれな」

 ゆらり、と彼の姿が消える。
 ここにいてはならない不自然な存在はロヴェリナも同じ。

 ーーーーここにいてはいけない。

 分かっていてもロヴェリナは存在する。ロヴェリナの残した子供たちの悲劇を見届けるために。いなければならない。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた

月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

契約結婚のススメ

文月 蓮
恋愛
 研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。

処理中です...