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第二十八話 魔法の鍵の物語
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しおりを挟む客部屋を与えられ、ルウドは一人でぼんやり考え事をしているとロズアルドがやって来た。彼もこの屋敷への滞在を許されている。
昼間はルウドとは別行動で何処かへ行っていたが夕方には戻ってきた。
「ロズ、調べ物は終わったのか?」
「まあ大体ね、ルウドは知りたい事は知れたのかい?」
「・・・さあ‥?」
ルウドは自分の母と繋がる物を捜していたが実際何を捜していたのか忘れてしまった。
身内とか血筋とかそういうものを求めても今更何になるのか?
「・・・・・母を知る人に会えて良かったが、私の捜していたのとは違う。何の意味も持たないとは思わないが何かが違う‥」
「何がだい?わからないよ・・」
「私が知りたいのは・・・そうだ、鍵の事だ」
「鍵?」
「それが欲しいとかそういうわけではなくて、必要だから知りたいんだ」
「そうなんだ‥?」
ロズがにこりと笑う。
「じゃあ遺跡とか行ってみる?昔の城跡とか。僕結構詳しいんだ」
「以前行った所も城あとだったな。そう言うの調べて何かあるのか?」
「そりゃ大昔の残り香とか、もしかすると見つかるかもしれない」
「廃墟になった城と言うのは大概それを占有した国が調べつくすはず。有効なモノが残っている可能性はほぼないのでは?」
「完全にないとは言えない。だから何度でも足を運ぶんだよ」
それは不毛な作業だ。しかしルウドはロレイアでロヴェリナの魔法の隠し扉に入った。
また同じものがないとは言えない。
ロヴェリナは湖を眺め佇む。
静かな水面に風が吹き、波が立つ。
その様を見つめて不安に揺らぐ。
―――ルウドが真実に近づいていく…
不安がないと言えばウソになる。
真実を知った彼に何の変わりがなかろうと彼の周囲はほっておかない。
彼の意思とは関係なく周囲がそれぞれの思惑に彼を巻き込んでいく。
そして彼は優しいから彼らを捨てておくことはできないだろう。
「‥‥どうして…」
知りたいというなら仕方がない。しかし今の彼に必要な情報があっただろうか?
なぜ彼は真実を欲するのだろう。鍵など求めても彼には意味あるものとは思えない。
「・・・なにをしている?」
「・・・・・・」
ゆらりと騎士の幽霊が現れた。
「クラディウスさん。またお邪魔してごめんなさい。でもここに人がいるからと言っていちいち声をかけていただかなくてもいいのですよ?
ここに来る人はたぶん何か悩んでいて一人でいたい人が多そうだから」
「ロヴェリナどのは人ではないだろう?」
「それでもあなたには苦痛ではないかしら?」
「なに。少しくらい構わないときに私は現れる。無理はしていない」
「そうなのね」
ロヴェリナはぼんやり水面を見つめる。
「…またあの者の心配か。なら側についていればよいものを」
「ずっとついてると嫌な顔されるんだもの。聞かれたくないことを聞かれるし」
「仕方があるまい。答えを持っていると知っているのだから」
「あの子はどんな答えを求めているのかしら?」
「当人でなければわからんな」
「‥‥それが、当人もよく分かっていないようで」
「どこまで朴念仁だ」
「そうねえ…困ったものだけど。見ていることしかできない」
「真実に近づいていていくのがそれほど不安か」
「私がいることで運命が悪い方向へ向かっている気がしてならない。そもそも私が現れて子供たちに良かったことは一度もない」
「なのにあなたは現れるのか」
「きっとそれが私の罰なの。どうしてもこの物語の終わりを見届けなければならないの。私はそのくらい酷い罪を子供たちに残したから」
騎士は眉根を寄せてロヴェリナを見る。
「・・・していることは私と変わらんが。私などよりずっと途方もない。魔女というものはそら恐ろしい」
「あなたはもう成仏してもいいでしょう。あなたが望むなら手伝ってもいいのよ?」
「魔力の残り香のあなたがか?」
「魔法使いが手伝ってくれるわ」
「そうか・・・・まあいずれな」
ゆらり、と彼の姿が消える。
ここにいてはならない不自然な存在はロヴェリナも同じ。
ーーーーここにいてはいけない。
分かっていてもロヴェリナは存在する。ロヴェリナの残した子供たちの悲劇を見届けるために。いなければならない。
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