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第二十八話 魔法の鍵の物語
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しおりを挟む「ここから一番近い遺跡へ行ってみないか。以前少しだけ見た場所だけどもっとじっくり調べてみたい」
「旧アルメディア国のお城があったという遺跡か。見た以上のものがあるとは思えないが?」
「それは行ってみないと分からない。それは一度や二度では見つからないものだよ」
「そういうものか」
「そうだよ。馬なら日帰りで行けるから。雪が降らない今のうちに」
「わかった」
マルスは秋が来ればすぐ冬になる。冬になればそうそう遠出は出来ない。
出かけるなら今のうちだ。
そういうわけで二人は早朝から馬を借りて最果ての村に赴く。
馬を走らせ続けてお昼には村にたどり着いた。
村長に挨拶してから二人は足早に遺跡に入る。
土石に埋まった城には光は入らない。
中に入ってランプをつけるとそこはお城の一室に見えた。
お城の外は土砂に埋まっても中は普通の部屋としてある。お城の壁が頑丈だったのだろう。埃にまみれてはいるが土砂で汚れてはいない。
入口から別の部屋へ入る。一階の階段わきの部屋は以前入った絵画のある部屋だ。
おそらくこのお城の住民である王家の方々が描かれている。
かなり古くからここにある絵は煤けて汚れてほとんど分からない。何とか人だと認識できる程度だ。
「ルウド、手分けして探そう。あまり時間がないからね」
「待ってくれロズ。探すといっても私は何を探していいか分からない」
「君が気になるものを探せばいいよ。僕だって手探りだし、なかなか見つかるものじゃない」
「・・・・・・・」
ロズは明かりを持って別室へ向かう。
盗賊ではないので別に金目の物を探しているわけではないが歴史的価値のあるものとかルウドには分からない。
そしておそらく書籍関連はすべて持ち去られてしまっているだろう。
今のところここにあるおそらくアルメディアの住民であろう彼女の絵画にしか興味がない。
「・・・・なぜこの絵画は運び出されなかったんだろう?」
白銀の髪の女性の絵だ。価値のないものとは思えない。
泥汚れを落とそうとそっと絵を撫でてみても汚れは全く落ちない。
「・・・・・・」
静かな空間にすっと風が流れる。
ふと目の端に白いものを見た気がしてルウドはあたりを見回す。
「‥‥ロヴェリナ様‥?」
いくらなんでも距離がありすぎる。まさかここまで付いてこれるとは思えない。
だけど、なにか白い靄のようなものが見える気がする。
「・・・・・・」
ルウドはゆっくりそのほうへ進む。
とくに恐怖もない。誰かに手を引かれる感覚だけを感じる。
『真実を知れば、あなたは変わるの?』
「何を知ったとて私は変わりません。ただ、知っておくことが私には必要なことなのです」
靄の先は壁だった。だがその白い靄は壁に吸い込まれていく。
『大丈夫。あなたなら越えられる』
白い誰かに望まれるままにルウドは壁に進み吸い込まれる。
そこはただの小部屋だった。その部屋の中にはただたくさんの書籍があった。
『ここは魔法使いの部屋よ。アルメディア公国の歴史と魔女の秘密が隠されてる』
「・・・・・あなたは?」
『魔女の残滓』
白い髪をふわふわと漂わせた少女が微笑む。
「・・・魔女ロヴェリナを知っていますか?」
『もちろんよ。この魔法を残した偉大な方』
残滓の魔法。なくなってもなおその記憶を残す魔法。
魔女ロヴェリナはなぜそんな魔法を残したのか?
現世への執着か、終わりを見るためか。
「・・・カギを知っていますか?」
『カギは王と魔法使い。それで宝が手に入るわ』
「なぜそんなにあっさり答えるのです?」
『あなたが答えを求めてここへ来たのでしょう?』
少女がニコニコと答える。
ルウドは黙する。もうこれ以上何を聞いたとて、答えは分かっている。
・・・魔女の書籍を姫から取り上げても、知ってはいけなかったのは自分も同様だったのではないか?
だから魔女はあれほど迷っていたのだ。だけど今更もう遅い。
ルウドは真実を知るために動き出したのだ。
どのくらいの時間がたったのだろう。
ルウドは夢中で本を読み漁り、疲れたころに元居た場所に戻った。
「・・・・・・・」
最初に眺めていた絵画の前である。
しばらくぼんやりしてからふと思い出す。
「・・・・・ロズ‥?」
ルウドがいないことに気づいて帰ってしまったか、もしくは探しているか。
そもそも時間がどのくらいたっているかもわからない。
だけどルウドは動く気にはなれない。
「・・・・・・」
真実はけしていい事ばかりではない。有益なことなどほとんどない。
ルウドにとっては不利益で無意味で、少し苦しい。
しばらくぼんやりしているとどこからか足音が近づいてきた。
「ーーーあっ、ルウド。よかった!」
「すまないロズ。ちょっと、迷ってしまって…」
「そうなの?丸一日消えていたから心配したよ」
「一日・・・・すまない」
あの部屋に入ると時間を忘れてしまう。
どう言い訳しようかと悩むルウドにロズが微笑む。
「お腹すいてない?時間を忘れていたでしょう?」
「・・・・あ、そういえば」
「用意してあるよ、仮宿の主に頼んである」
「ありがとう、気が利くな」
「ふふっ、待っていたからね、ずっと」
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