意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第七話 マルス城の噂の真相

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  王国騎士団二番隊隊員ジルは悩んでいた。
 目が覚めたら小部屋に監禁されたいたが自分に何が起こったかまるで分らない。
 顔を触ると痛みが走り、近くにあった鏡を見ると顔が腫れあがり青あざが出来ていた。

 ――――一体自分に何が?

 ぼんやりする頭で記憶を何とか掘り起こす。
 ティア姫にやばい薬を飲まされた。それから姫のいいなりに動かされ、そして自分の欲望に負けた自分はティア姫に―――――



「うっ、わあああああああああ!」


 やばい記憶が蘇り、ジルは泣きたくなった。しかもその後の記憶がない。


「おっ俺、まさか、姫様に……?まさか…‥?」


 不埒な行いなどすれば首どころでは済まない、死刑だ。確実に。一族郎党処断されるかもしれない。
 ジルは息が詰まった。しかも何も覚えていない、姫の感触とか…。


「おおおおおお、俺は…‥?」


 どうしてこんな事になったのか、さっぱり分からない。
 監禁されているという事はそれなりの事をしたのだろう。
 誰も答えを言ってくれない場所で一人悩んでいると外から足音がした。

「――――――ジル?起きたの?」

「ひっ!ひひひひひっ、姫様っ……!」

 ジルはドアの向こうにひれ伏した。

「ももももも、申し訳ございませんっ!私、姫様にとんでもない事を!けして許されることではないのは分かっておりますが、私の処断は如何様にもお受けいたしますが、せめて一族にはご寛容な処断を。これは私の罪です、家族には関わりない事ですから、どうか!」

「……あなた、自分が何をしたか覚えているの?」

「その、うっすらと。何となく。しかし私のしたことは不埒以外の何ものでもなく…」

「つまり覚えていないというのね?―――酷いわ。あんな事までしておいて。知らないふりで責任逃れする気ね?」

 ジルは最早血の気がなくなり蒼白になった。背筋が凍り、嫌な汗が流れる。

 ―――――俺は一体姫に何を?何を?何をっ!

 全く覚えていない事が恐ろしい。

「ももも、申し訳ございません。責任は取らせていただきます!何でもします!何でもおっしゃってください!腹を切れと言われれば喜んで切りますとも!覚悟は出来ています!」

「そう?じゃあこれからいろいろと動いて貰おうかしら。ルウドの命じゃなくて私の命令で単独で動くのよ。どんな事でも黙って言うとおりにするのよ?使えなければいらないわ」

「動きます!姫様の為に何でもいたします!どうぞお使い下さい!私使えます!何でもいたします!」

「分かったわ。じゃあ早速動いて貰うけど、誰にも内緒だからね?」

「はいいいっ!勿論です!」

 これ以降ジルはティア姫の奴隷化するが、これは始まりであり、そして水面下で拡大化していくので事が公にされるまで誰にも気付かれることはなかった。







 ルウドがジルの監禁部屋に入ると彼は頭を地につけて泣いて謝った。

「申し訳ございませんっ!私っ、とんでもない事を!隊長に八つ裂きにされても文句はいえません!どうぞ心おきなくやって下さい!」

「いや、落ち着け。ジルは悪くないから」

 ルウドはジルの身体を起こす。ジルは真っ青だ。

「大丈夫か?その顔の痣に効く薬を貰って来たから使うといい」

「そんな、隊長!優しくなどしないでください、私のような罪深いものに!」

「ジル、落ち着け。君は媚薬を飲まされて操られていたんだ。君には罪はないし悪くもない。そんなに気に病まなくていいから」

「媚薬?」

「そんな物を飲まされて耐えられる男が居るか。全くあの姫にも困ったものだ。厳重に注意しておくから許してやってくれ」

「何故姫はそんな物を私に…?」

「何でも実験しないと気が済まないのだろう。ホントに困ったものだ」

「……」

「君には申し訳ないがまだしばらくここにいてくれ。薬の効果が消えるまでは姫には会わせられない」

「しかし任務は?」

「護衛隊には休みを取らせた。ティア姫の護衛というだけで心労も大きいからな。ジルも休むといい。しばらくは姫の護衛は私が付くから」

「……はい…」

 ジルは何故か落ち込んでいる。
 ルウドにはジルの心情は分からないがやはりまだ薬の効果は切れていないのかもしれない。

「…ジル、その。殴ってすまなかった。君が悪くないのは分かっている。だがちょっと、頭に血が上ってしまってな…」

「いいえ!それは当然のことです。私がいけないのです。隊長の大切な人に害を及ぼしたのですから。私が許されるべきではないのです!」

「……ホントに気に病まないでくれよ?」

 ジルは若いながらに最精鋭に選ばれるほど優秀な騎士である。この先まだまだ上へ行くだろう彼をこんな事で潰すわけにはいかない。

「君もしばらく休んでくれ。何も心配する事はない、大丈夫だから」

 ルウドはそう言って部屋を後にした。







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