意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第七話 マルス城の噂の真相

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「城内のどこからか魔女が出没して実験するって噂。ホントかなあ、見てみたいけどでるかなあ?」

「……」

 パティーが行きたいというから城内を案内する事になった。
 城内の方へ進みながら先を歩くパティーがふと呟く。

「さっきの人、たまたまだよね。ならあの噂って一体…?」

「さあ…、何かしら?」

 歯切れ悪くティアが答える。ルウドが未だ疑いの眼差しを向けている。

「まあ、噂は所詮噂だし、誰かが見間違って騒いだのかもしれないわ」

「そうかあ、まあ確かに花が笑うのはあり得ないか。ああでも、お城に踊り狂い人形が出るってのは現実的かなあ」

「…‥………さあ?」

 姫とルウドはふっと目を逸らし遠くの空を見た。
 本日も空が青い。日差しが照りつけ少々暑い。
 三人は黙々と歩いて庭園側から城内の廊下へ入る。廊下はひんやりとしていて涼しい。

「奥の方がもっと涼しいわ。しかも日中は明かりをつけないから程良く暗いのよね」

「へえ?それはいい感じで出そうだね?」

「でも昼間は特に人通りが激しいから可能性は低いかも」

「可能性が高いのはどこ?分かる?」

「隠し通路の近くかしら。でも結構数が多いから難しいのよね」

「隠し通路?そんなのあるんだ」

「隠し部屋もあるわよ。王族しか知らないから公には出来ないけど」

「面白いなあ、お城って」

「まあお城だから。脱出経路が多々あるのは当然なのよ」

「見てみたいなあ」

「それは駄目だけど出没してる魔女がその通路を使っている可能性はあるわね。真実を突き止めれば噂の真相も分かりそう」

「………」

 魔女は誰だ?とルウドは思い、悩む。
 王族しか知らない隠し通路を使う魔女などもう問うまでもない。
 それよりも問題なのは隠し通路、隠し部屋。
 前々から分かっていたがやはりあった。恐らくやはり王族だけが知っていて警備隊にもそれは知らされていない。
 何故だ?それでは問題があり過ぎる。それでは何の為の警備隊だ。
 王族は一体何を考えているのだ?
 この問題は早急に訴え出なければならないがそれは無論姫にではなく、警備隊を統括する総責任者パラレウス皇子にである。
 ルウドは渋い顔をして二人の後を追う。
 ルウドの顔を見たティア姫が朗らかに笑う。

「あらルウド、もしかして魔女が怖いの?大丈夫よ、私が守ってあげるから」

「平気ですよ、この城に貴方より凶悪な魔女なんていませんから」






「――――うわああっ!でたっ!」

 静かな人気のない廊下を歩いていると突然パティーが叫んだ。

「えっ?ほんと?どこに?」

 ルウドの腕にしっかりしがみついてティアは辺りを見回した。

「あそこだよ!あの隙間から白いものが見えた」

「隙間?そんなのないわよ?見渡す限り壁だけど」

「あれっ、でも今そこに隙間が…」

 ルウドに捕まったままのティアは壁を触って叩いてみる。

「壁じゃないわここ。空洞ね。中から押さなきゃ開かないようになってる」

「ええ?じゃあ正体突き止めるの無理だねえ」

「うーん、でも何かいたのでしょう?気になるわね」

「……」

 ルウドにしがみ付いたまま姫は難しい顔をして考える。
 ルウドは無言でじっとしている。

「ねえルウド、この壁何とかならない?」

「なりません、ティア様、怖いなら別に無理して追う事ないでしょう?」

「―――なっ!怖くなんか無いわよ!何言ってるのよルウド」

「………」

 ならばこの腕にしがみ付いているのは何だ?とは言わなかったが冷めた視線を姫に向けた。
 姫はバツが悪そうにそっとルウドの腕を離した。

「と、とにかく正体は突き止めなきゃ。仕方ないから近くの抜け穴を使いましょう。裏の通路は大抵繋がっているのよね」

「わあ、やったあ、裏道探検だ!」

「パティー、調査よ。犯人を見つけるのよ」

 犯人。いつの間にか目的が変わっている。
 しかしルウドは特に突っ込まない。護衛なので黙って姫についていく。

「この部屋よ」

 ティア姫は適当に近場の部屋に入った。その部屋にも隠し扉が付いていた。
 姫にも用のない、普通は入らないだろう空き部屋にも拘らず、姫は当然の如く易々と扉を見つけた。
 このからくりを知っていなければ永遠に見つける事はない仕掛け扉である。

 ルウドは頭痛がしてきた。こんな扉がこの城にはどれだけあるのだろう?
 きっと調べるのは容易なことではない。王族の協力がなければ。

 ティア姫は部屋に備え付けられていたランプを持って火を点す。

「パティー、危ないから勝手に行かないで。しっかり私に着いて来て」

「ティア姫様は迷わないんだ?」

「王族は迷わないのよ。実は分かる目印があるし、日常的に使っているから」

「…………」

 知らなかった。ルウドでさえも聞いていない事実である。
 ランプを持った姫は開いた手でルウドの腕をしっかり掴んで扉の奥へと入る。
 階段を降りると壁ばかりの通路を進む。
 少し進むと通路は三つに分かれた。姫はランプを壁にかざし、文字らしき物を見る。

「さっきの扉は右にあるのよ。左はまた出口と地下の部屋ね。真っすぐは通路続きね」

「魔女はどこかの部屋に隠れているはずだよ。表には出れないから」

「じゃあ左の部屋ね。でも開いている部屋と開いていない部屋があるのよね。開かない部屋は誰かが占有している部屋だから入れないの」

「姫様もそんな部屋持っているの?」

「……まあ一応ね」

 姫がちらりとルウドを見るがルウドは黙って口を引き結んでいた。
 城の誰もがこの姫に振り回される理由がよく分かった。
 しかも王族はこれを知っていて黙っていたのか。それより腹立たしいのはずっと傍にいて姫に隠されていたことだ。

「…私は姫に全く信用されていなかったという事ですね」

 ティア姫は困った顔でルウドを見つめる。
 理由があるのは分かってるが姫に隠し事をされると悔しい。

「…ルウド、もしかして拗ねてる?」

「そんなわけないでしょう。何言ってんですか」

「そう?なんか怒ってるように見えるけど…‥」

「怒ってなんかいません」

「…あのね、ここは王族しか知っちゃいけないのよ。緊急避難用経路だから」

「いいのですか、そんな大切な秘密を私や子供などに漏らして」

「いいのよ、緊急時には皆避難させるのだから。大切な人には教えておくの。お姉さま達もそうしているし」

「……‥」

「でも他言無用よ?公にされたら困るんだから」

「はい」







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