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第七話 マルス城の噂の真相
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しおりを挟む三人が黙々と歩いているとどこからか突然誰かの笑い声が聞こえて皆同様に足を止めた。
「…今度こそ、笑う花?」
「地下通路に花はないわよ。それよりなんか知った声だわ」
「ええ?聞いたこと有るの?幽霊の声を?」
「パティー、地下通路だからと言って幽霊だけいるわけではないだろう。人間に決まっている」
王族しか知らない通路で聞いた声ならもう限られている。
三人は声のする方を歩いてドアを見つけ、そっとドアを開けてみる。
ドアは開いた。そしてその隙間から三人は見てしまった。
「くふふふふふふ。ああもう可愛いっ。その真っ黒な瞳に見つめられると堪んない。あっ、駄目よこんな所で。いや、だめ、そんなとこ舐めないで」
何をしているのだあの姉は?
いやしている事は分かっている。あの真っ黒い生き物と戯れているのだ。
パティーが姫を見て困惑顔で聞く。
「ねえ、あの生き物は何?見た事ないけど。もしかして毛深い人間?」
「あんな毛深い人がいてたまるもんですか。というかあり得ないわ」
ティアは入り口をバンと派手に開ける。
「ミザリーお姉さま、とうとう尻尾をつかんだわよ。即座に報告して撤退させるからね」
「ティア!わ、わわわわ私の個室に勝手に入るなんてルール違反よ!訴えてやるわ!」
「勝手にしたらいいわ。その前にそれを排除するのよ」
「排除なんてひどい!こんなに可愛いのに!外に放り出されたら行き場をなくして死んじゃうじゃない!」
「馬鹿言わないで。そんな生き物野放しになんて出来るわけないでしょう?捕えて即刻動物園か殺処分よ」
「酷い!ティア!貴方には人情はないわけ?人の血が流れているわけ?こんなに可愛い彼を殺処分なんて!貴方、ルウドが同じ目に遭っても同じことが言える?外に放り出されて死んじゃっても笑える訳?」
「ルウドとその生き物を同じにしない!そんなモノをここで飼っていたらうるさくて眠れないのよ!そいつが居る近隣の上の部屋から毎晩不気味な遠吠えが聞こえてるって最近苦情とか噂が酷いのよ!さらに上の部屋で寝てるお姉さまは分からないでしょうけどね!」
「な、なによ!それで何で貴方が怒るのよ?何も迷惑かけてないでしょう?」
「掛けてるわよ!地下通路中にそいつの不気味な唸り声が一晩中聞こえるのよ!私の研究所にも聞こえるんだからね!迷惑なのよ!」
「何よ唸り声くらいいいじゃない!ルウドだって喋るじゃない!」
「だからそこで何でルウドが出てくのよ!大体こんな所に閉じ込めてそいつが暴れ出したらどうするのよ?危険じゃない!」
「ちゃんと鎖でつないでるから大丈夫だもの!」
「それって監禁でしょ?どこで拾ったんだか知らないけど酷いのはお姉さまじゃないの!」
「なによ!そうでもしないと彼と一緒にいられないじゃない!彼との仲を引き裂かれるなんて嫌よおおおおお!」
ミザリー姫はその真っ黒ででかい生き物に縋りついて泣く。
「何よティアの馬鹿あああっ!ルウドも動物園に売り飛ばされたらいいんだわあああっ!」
「………」
やつあたりだ。
とにかくその場でミザリーを捕獲し、兄の下へ連行しすぐに詳細を報告。そして黒い生き物の撤去を手早く行った。かの生き物はとりあえず牢場に押し込んですぐに近くの街のサーカス団に引き取りを要請した。
「いやもともとサーカス団のゴリラが脱走したと報告が来ていたんだがまさか城に居るとは思わなかったな」
兄が呑気に言い、笑っていた。
「ミザリーお姉さまは時々生き物を拾ってくるのよ。何でも拾ってくるなって言われているのにホント懲りない人で困るわよ」
この時、パティーの脳裏に城の噂が一つ増えた。
【王国の第二王女は変わった生き物を拾い可愛がる癖がある】
嘘ではない、真実の話だ。
「じゃあ幽霊は?」
「やっぱり噂は噂よね。何かのはずみで尾ひれがついて街に流れたかしらね」
「そう……」
パティーはがっかりしたがティアは安堵した。
これでようやく安心して地下に降りれる。
「さっ、次にいきましょう」
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