【2章連載中】もふもふに囲まれて記憶喪失のままアイドルになってしまった

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序章

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「コウ。待たせたな」

ちょうど鐘がなるタイミングでアオイはコウに呼びかける。アオイは先程の騎士然とした装備から装いが変わりラクダの毛で仕立てられたキャメルのコートを身に纏っている。


「俺もいま着いたところです!アオイ先輩、許可降りました?」

コウはウサギの毛をメインに仕立てた白いコートを着こなしている。首には妖精との対話に必要なアーティファクトを変形させたネックレスが胸元で揺れている。


「妖精嵐だからな。コウ」

アオイは留め具を外し、ポケットからガラスでできたドロップ缶を取り出す。
アオイは2つ取り出しコウの手のひらにべっこう飴を一つ落とすと、コウは物珍しそうに飴を眺めてから、アオイは明日の自分を想像し苦々しい表情で、鋭い犬歯で飴を噛み砕く。

すると動物の特徴をもつ二人の躰は徐々に動物的特徴を強めていき、アオイは金眼に青みを帯びた黒い毛をした狼に、コウは空色の瞳に金色の毛をもつ大型犬に完全に変化すると変化は止まった。事前に身に纏っていたコートは首元でとまっており、マントのような格好になっている。
これは、人獣スタイル両用の特注衣類である羊の特徴を持つ民族の伝統工芸品である。なかなか高価な一品なのだが、アオイは騎士団の装備として、コウはウサギの毛を多めに持ち込み買い取ってもらうことで価格を抑えて作ることができた。ちなみにこのウサギの毛はコウの幼馴染であるモモに頼んで持ち込んだものであり、なかなか評判が良かった。


閑話休題


コウは事前に妖精嵐が起きた場所に残った他の妖精の妖力を対価として妖精に妖精嵐が起きた方向へ案内するよう交渉しており。妖精がネックレスを引っ張って先導する形で道案内してくれる。アオイもコウのあとに続く。魔物が住み着く森を素早く駆け抜け、時にアオイは魔物に噛み付いて倒しながら深い森の奥に進む。

しばらくすると、コウは魔物の集団をみつけた。魔物は特定の種を除き群れることはないが、ここだけは異常なほどに魔物が多い。コウはその中心に濃い妖力を感じる。

「先輩!このあたりです!」

妖精にコンパス替わりに引っ張ってもらっていたペンダントの妖力が抜けたことで、ここか目標の妖精嵐が起きた場所だと確信する。

「コウは救助を優先しろ!俺は魔物を蹴散らしておく」

アオイはそう吠えると、今か今かとこちらに襲いかかろうとしている魔物からの注目を集めるため遠吠えをした。
コウは憧れの先輩であるアオイの久しぶりに現場で見る凛々しい姿に一瞬見惚れたが、自分がすべきことを思い出し濃い妖力が貯まっているモヤの中へ突入する。モヤの中は視界が悪かったが、すぐれた聴覚を頼りにチェンジリングの被害者である幼い女の子を探す。

コウにとって妖精嵐は初めての現場ではないが、モヤ状の妖力が通常より広範囲であること、妖力の濃度と質に違和感を覚える。

(いつも力を貸してくれる妖精たちとは妖力の質が違う場所がある?普通の妖精が起こす妖精嵐は一人かよくて二人が限界で、妖精嵐を起こす場所がたまたま重なった場合はお互いの妖力が邪魔して上手く行かないはずだ……高位の妖精の仕業か?その場合だと全体的に妖力の質が変わってくるはずで一部分ってのがヘンだ……)

コウは捜索を続けながら、この妖精嵐の異質さを分析する。コウにとっても、この世界にとっても、この特殊な妖精嵐は後にも先にも一度きりであるが、この時のコウは妖精が引き起こす未知の事象に対して被害者を捜索中に不謹慎な感情だと思いつつも妖精使いの性質に抗えず興奮していた。

思考を繰り返しつつも答えは出ぬままさまよっている最中、コウのもつの鋭敏な嗅覚が血の匂いを嗅ぎとった。

「こっちか」

コウは今までの思考を投げ捨て、全速力で匂いの方向に走り出す。被害者の救出が先だ、思考はあとでもできる。
到着した頃と比べて段々とモヤが薄まっていっていることを確認し、妖精に力を借りる対価として妖精嵐の妖力を吸収させる約束を果たすのはチェンジリングの被害者が見つかってからにすればよかったと後悔しながら走る。

コウが少女を明確に視界に捉えた時には、少女はこちらに背を向けて走り去ろうとしていた。不味いと思ったコウは思わず大声で吠える。

「とまれ!助けに来たんだ!!!」












作品中の飴について
※この世界の住人は、ほぼ人間から完ケモまで体を自在に変化させることができるが、変化する行為はすごく疲れるので、緊急時は特製の飴で強制的に体を変化する飴を使い疲労を肩代わりしてもらう。そのかわり次の日は倍疲れる。エナジードリンクみたいなもの。
どの動種族もほぼ人間になれることから、生活必需品は人間サイズが統一規格化されており、生活する上で便利なため多くの住人は人間に近い状態で生活している。
仔猫たちがボロボロなのは魔物から隠れるた
めに変化して無理をしていたり。
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