地味な私がなぜかイケメン達に囲まれて愛されすぎて困る

ほーみ

文字の大きさ
5 / 8

5、愛しき囚われの姫

しおりを挟む
「……僕を選んで、リリア」

 エドワードの真剣な言葉が、静まり返った空間に響いた。

 アルバート、レオン、ノア。それぞれが彼を鋭く睨みつける。

 ──どうしてこんなことになってしまったの?

 私はただ普通に暮らしたいだけなのに。

「……あの、皆、少し落ち着いて……」

 そう言おうとした瞬間、扉の外で騒がしい気配がした。

「──リリア様! 大変です!」

 慌ただしく駆け込んできたのは、侍女のエミリアだった。

「エミリア?」

「お嬢様を狙う者の正体が判明しました!」

 私を狙っている者……?

 それを聞いた途端、空気が一気に張り詰める。

「……誰だ?」

 レオンが鋭く問い詰める。

「それは……」

 エミリアが言い淀んだその瞬間──

 バンッ!!

 突然、扉が勢いよく開かれた。

「リリア!」

 私の名前を叫びながら現れたのは──、

「──エヴァン様!?」

 金色の髪を持つ、私の婚約者だったはずの男。

「リリア、やっと見つけた……!」

「えっ……?」

 混乱する私をよそに、エヴァンはまっすぐに近づいてくる。

「君を迎えにきた」

「迎えに……?」

「そうだ。君は本来、僕のものなんだ」

 彼の言葉に、背筋が凍る。

「なにを言ってるの?」

「君は、僕以外の男に囲まれているべきじゃない……」

 その言葉が引き金となり、レオンがエヴァンの襟元を掴んだ。

「お前……まさかリリアを狙っていたのか?」

「……ふふ、何のことかな?」

 エヴァンは不敵な笑みを浮かべる。

 その瞬間、エドワードが低く呟いた。

「……全て、お前の仕業か」

「……っ!」

 空気が凍りつく。

「お前がリリアを狙うような連中を仕向けていたのか?」

 アルバートの問いに、エヴァンは笑いながら言った。

「全部は違うけれど、まぁ、僕の愛が深すぎたせいかもしれないね?」

「ふざけるな」

 ノアが鋭く睨みつける。

「お前の愛とやらのせいで、リリアがどれだけ怯えたか……分かってるのか?」

「それは愛の証だよ」

 エヴァンは呆れるほどの自信で言い切った。

「愛しているから、手に入れたい……当然だろう?」

 ──その言葉が、彼らの怒りを限界まで引き上げた。

「……リリアを連れて行かせると思うか?」

 エドワードが低く囁いた瞬間、レオンが拳を振り上げた。

「二度とリリアに近づくな」

 ドンッ!

 エヴァンの体が壁に叩きつけられる。

 顔を歪めながらも、彼はまだ笑っていた。

「……僕をここで倒しても、リリアの身は保証されないよ?」

「……?」

「だって、君を狙っているのは僕だけじゃない」

 その言葉に、胸騒ぎがした。

「どういうこと……?」

「……リリア、お前の存在が思った以上に目立ってしまったようだな」

 アルバートが険しい表情を浮かべる。

「君を巡る争いは、俺たちの間だけのものではなくなってしまった」

「……どういうこと?」

「お前に惹かれる者は、俺たちだけじゃないってことだ」

 レオンが悔しそうに言う。

「リリアが、貴族たちの間で『最も手に入れたい令嬢』になってしまったんだ」

「そんな……!」

 私は地味な存在だったはずなのに。

 ──どうして、こんなことに?

「だから、リリア」

 ノアがそっと私の肩に手を置いた。

「君を守るために、僕たちの誰かを選んでほしい」

 その言葉に、心臓が大きく跳ねた。

「……選ぶ?」

「もう、逃げられない」

 エドワードの静かな声が、私の胸に突き刺さる。

「お前が誰を選ぼうと……俺はお前を離さない」

 レオンが決意を込めた視線を向けてくる。

「僕も同じだよ」

 ノアが微笑む。

「リリア、君が欲しいんだ」

「……僕も、君を手に入れるためなら、何だってする」

 アルバートが甘く囁く。

 彼らの視線が、私を射抜く。

「リリア……僕を選んでくれ」

 エドワードが、そっと私の髪を撫でた。

 その指先の優しさに、心が揺れる。

「……っ!」

 けれど、私はまだ答えられない。

 ──本当に、私は誰かを選ばなくちゃいけないの?

 私を守るために、彼らは戦おうとしている。

 でも、それは私が望んだことではないのに……。

 ……だけど、彼らの真剣な眼差しを見ると。

 ──もう、逃げられないのかもしれない。

 私の胸に、重い現実がのしかかってくる。

 ──私は、どうすればいいの……?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です

有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。 ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。 高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。 モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。 高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。 「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」 「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」 そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。 ――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。 この作品は他サイトにも掲載しています。

冷徹文官様の独占欲が強すぎて、私は今日も慣れずに翻弄される

川原にゃこ
恋愛
「いいか、シュエット。慣れとは恐ろしいものだ」 机に向かったまま、エドガー様が苦虫を噛み潰したような渋い顔をして私に言った。

辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。

顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました

ラム猫
恋愛
 セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。  ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。 ※全部で四話になります。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

処理中です...