婚約破棄された悪役令嬢ですが、なぜか第二王子に溺愛されています

ほーみ

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 私はレオナード殿下と共に、王宮の廊下を静かに歩いていた。

 アルベルト殿下が「もう一度話したい」と申し出てきたことに、私は考える時間を要した。

 私は本当に彼と向き合うべきなのか?

 けれど、結論はすぐに出た。

 私はもう、過去に縛られたくない。

 だからこそ、自分の気持ちに整理をつけるために、彼と最後の話をしようと決めたのだった。





 王宮の応接室――

 そこには、アルベルト殿下がひとりで座っていた。

 以前と変わらない整った容姿。けれど、その表情には余裕がない。

「……久しぶりだな、エレノア」

 彼の声はどこか沈んでいた。

「お久しぶりです、アルベルト殿下」

 私は静かに挨拶し、彼の向かいに腰を下ろした。

 数秒の沈黙の後、彼は口を開いた。

「……君と話す機会を、ずっと探していた」

「そうですか」

「……リリアとは、もう終わった」

 私は少し目を細める。

「そうでしょうね」

「……驚かないのか?」

「驚きません。いずれそうなると思っていましたから」

「……そうか」

 彼は微かに眉をひそめ、深いため息をつく。

「エレノア……君のことを、僕は誤解していたのかもしれない」

「そうでしょうね」

「……」

 私は冷静な態度を崩さずに続けた。

「アルベルト殿下。あなたは私を捨てました。理由はともかく、あなたの意思で私との婚約を破棄し、リリア嬢を選びました」

「……」

「ですが、その結果が期待通りではなかったからといって、私に戻ってこいとでも?」

「違う! そういうつもりじゃない!」

 彼は机を叩き、声を荒げた。

「……僕は、君の大切さに気づくのが遅かった。それだけだ」

「それだけ、ですか」

 私は静かに目を伏せ、そっと息をついた。

「ならば、なぜ私を信じなかったのですか?」

「……」

「なぜリリア嬢の言葉を信じ、私を悪者にしたのですか?」

「それは……」

「あなたは、私を信じなかった。その時点で、もうすべて終わっていたのです」

 彼は何も言えなかった。

「私はもう、あなたに縛られるつもりはありません」

「エレノア……」

「私は……」

 私はそっと視線を上げた。

 その先には、扉の前で私を待つレオナード殿下の姿があった。

 その目は、私を強く見つめている。

 ――私は、もう迷わない。

「私は、レオナード殿下のもとに行きます」

「……!」

 アルベルト殿下の顔が驚愕に染まる。

「君は……本気で……?」

「はい」

 私は立ち上がり、扉へと向かった。

 最後に、彼へと一言だけ告げる。

「さようなら、アルベルト殿下」

 彼の返事を聞くことなく、私は扉を開けた。





 扉の向こうで、レオナード殿下が優しく微笑んでいた。

「おかえり、エレノア嬢」

「……ただいま戻りました、殿下」

 私は微笑み、彼の手を取る。

 その手は、以前よりもずっと暖かかった。




 それから数週間後。

 私はレオナード殿下との正式な婚約を発表した。

 アルベルト殿下は王太子の座を追われることはなかったが、しばらく謹慎処分となったと聞いた。

 リリア嬢は、すでに宮廷を去っていた。

 ――だが、それはもう私には関係のないこと。

「エレノア、僕は君を幸せにする」

「……私も、あなたと共に幸せになります」

 私は、愛する人と共に、新しい人生を歩み始めたのだった。

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