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婚約者からぞんざいな扱いをされているのは分かっている。そして、それを本来なら許してはいけないとも。けれどーー

「お陰様で生き甲斐を見つけれたってことで、これはこれで幸せなのよね」

学園内で期待大とされている魔力量上位に入る平民の女生徒と婚約者が密会していようとも、私、伯爵令嬢リアナ・スティルマンは一切合切気にしていない。
それよりも目の前で起きてる男女の焦ったい距離感が気になってしまう。
学園内のカフェテラスにて、ニヤけてしまう口元を隠すようにティーカップを運んだ。

「はぁ…あの二人って先日テスト結果で競い合っていた一つ下の生徒達よね。キャンキャン言い合って可愛らしかったのに、この数日で何があったのかしら?お互い気にしあってて、なんて初々しい。青春って感じするわね」
「なら、あの二人の件は私の方から報告しておくよ」
「ケイト、それは野暮ってものよ。もう少し静観しておきましょう」
「だが、」
「大丈夫よ。それに一つ二つ困難に打ち勝てなければ彼等の先はないわ」

公爵令嬢と子爵令息の恋。お互い末っ子であるのことから婚約者選びは上の兄弟より自由にしているようだ。
だが貴族というのは身分がある故に相応な試練がある。爵位の差というのはそう簡単に埋められない見えない障害壁。

「あと、単純に乗り越えた先の二人を見たいの。丁寧に舗装された道で結ばれた恋なんて先が見えてしまうわ。お互いに勉学で切磋琢磨して知らぬ間に積み重ねて、そして自覚した愛をしっかりと成就させてからあの二人には幸せになって欲しいのよ」
「リアナってば婚約者の件で吹っ切れてからは可笑しな言動が見受けられるようになったけど、その内容ってよくよく考えられているから驚くよ」
「失礼ね。これでも侯爵家に嫁ぐ者として勉学に励んでたのよ?まあ、必要性は無くなってからは放棄したけどね」
「パーシヴァル家は惜しい人材を手放したな」

本当に残念だ、と残念そうに言わない友人に私はそうかしら、と軽く返した。
友人となって三年となるが、未だに彼女の真意が全く読めない。だから時々、少しでもケイトから綻びが出そうな質問を投げるようにしている。

「貴女の婚約はどうなのよ?」
「そうだね。あと少し、ていうところかな」
「え?嘘!候補が絞られたの?!」
「リアナってこう言う時、言葉遊びしてくれないよね」
「ケイトってば踏み込まなかったら無かったことにするでしょう」
「これでも学園に入るまでは大事に隠されて来たからね。慎重にならざるを得ないんだよ」

ケイト・エンプレス。
現在の王家の番犬と言われているエンプレス伯爵家に大事に隠されていた一人娘。学園の入学と同時に明かされたエンプレス家の娘の存在に、長らくの間ありとあらゆる噂が流れたものだ。だが流石エンプレスと言うべきか。ケイトはその噂を一切気にせず堂々としており、噂が下火になるのは早かった。
当時私はパーシヴァル家に嫁ぐ為に色々なものを我慢していたが、どうしてもケイトと友人になりたくて話しかけた事から今の関係がある。

「そういうリアナの方はどうなってるのさ」
「そうね…」

分かってるくせにとは言わずに、温くなった紅茶を飲み干してから答えた。

「無事、婚約破棄の手続きが昨日終えたわ」
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