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ストーカー、向いてないよ
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私は、隣町の大学に通う女子大生だ。
最近少し、困っていることがある。
そう、それは今からちょうど1ヶ月前のことか。
ちょうど1ヶ月というのは、私がそれを目撃してから1ヶ月たった、ということ。
最近私は、ストーカーをされているのだ。
なんとこの私が、である。
この言い方は語弊があるので補足させてもらうと、別にモテない訳では無い。
高校では彼氏もいたし、まあ、もう別れたけれど。
容姿に多少のコンプレックスはあれど、人並み程度のもの。
激しく隠したくなる様なものでもない。
ただ、ストーカーってもっとアイドルみたいな子がされるイメージだったもので。
私みたいな普通の女子にストーキングなんてするもんなの?と思ったものだ。
ともあれ私はストーカーをされていて、まあなんというか、それなりに困っていたりする。
そう、それは1か月前のこと。
私はアパートで一人暮らしをしているのだが、その日はゴミ出しの日で、いそいそとゴミを出しに行った。
ゴミの指定場所に持ってきた、それほど大きくないゴミ袋をちょこんと置いて、さてアパートに戻るかぁと思ったその時。
ふと視線を感じて来た道の反対側の方を向いた。
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、ちらっと人影が見えた、ような気がした。
いや、なに、別に私以外に人がいない世界というわけでもなし、ただの通行人だろうと思って、私は来た道を戻った。
道をアパートに向かって歩いている途中、やっぱりあの人影が気になって、少し戻ってみることにした。
間違いなく私の勘違いなのだろうけど、なんだかちょっとだけ引っかかるような、違和感のあるような。
言葉に言い表せないようなモヤモヤがあった。
そこの角を曲がってすぐにごみ捨て場。
角からひょっこり顔だけ出して、ごみ捨て場を確認してみた。
すると、なんということだろうか。
先程の人影が、私の置いていったゴミ袋を漁っているではないか。
いやー、なにやってるのー、って感じだ。
大した物は捨ててないけども、下着とかは捨ててないけども。
大体はお惣菜のパックかレトルトの袋かカップ麺かテイクアウトか...。
見られたら、少し恥ずかしい。
というか、純粋に気持ちが悪かった。
「ちょっと、なにやってるんですか!」
私は角を曲がって、それでも一定の距離をとりつつ変質者に声をかけた。
びくっ!と驚いたように体を震えさせ、動きを止める変質者。
「あっ、あ、えっとその...」
そう言いつつ、ゆるりと立ち上がった。
かと思うと途端に、ばっ!っと駆け出して、走り去ってしまった。
追いかけようか一瞬迷ったが、走るのが得意なわけではない私が追いかけたところで、捕まえられるとは思わない。
そもそも捕まえて何をしようというのか。
捕まえたけど反撃されたり、なんてことを考えると足がすくんだ。
「はぁ...、片付けなきゃ...」
ストーカーが散らかしたゴミ達を眺めて、朝から深いため息が止まらなかった。
それからというもの、ちょこちょことストーカー被害っぽいものを、この1ヶ月間に渡り受け続けている。
例えば、後ろをつけられたりだとか。
例えば、先回りされていたりだとか。
玄関に何かしらが置いてあったりだとか。
そんなふうな事をされているのだが、なんだかそれほど、このストーカーを悪く思えない。
ゆえにストーカー被害っぽいもの、と表現したのだ。
後ろをつけられる時は、決まって昼間。
振り返っても注意しなければ気づかないほど遠くで、なにやら遠目に見られている。
最近電車に乗ると、座れることが多くなったのだが、それもストーカーが私の乗る車両に先回りして座席を取っているのだ。
私が乗り込んでくると、姿を見せる前にどこかへ消えてしまう。
私が落し物をした時なんかは、その落し物と一緒に私の好きなカップ麺を袋に入れて、アパートのドアに吊るしてあった。
期間限定の、厚揚げが3枚入っているきつねうどんのやつ。
前から食べたいなぁとは思っていたのだが、コンビニではいつも売り切れていて買えなかった。
まさかストーカーにプレゼントされるとは思ってもいなかったけども、ずっと食べたかったので美味しく頂いた。
と、まあそんなことが続き、ぎょっとすることはあれど、すごく怖いことをしてくるわけではないし、なによりあのカップ麺を買ってきてくれたのは、純粋に嬉しかった。
そんなわけで私は、そのストーカーを悪く思えないのである。
今日は朝から雨が降っていて、午前から講義のある私は、憂鬱ながら傘をさしてアパートを出た。
ザアザア降り、というわけではないが、傘にあたる音が小気味いい程度には降っている。
既に水溜まりも出来ていた。
こんな雨の日には、流石のストーカーも追っては来ないだろうなぁと思いながら、たまに立ち止まって後ろを確認する。
アパートから大体駅までの半分くらいの所で、ストーカーの影を遠い後ろの方に見付けた。
あろうことか大胆にも、大きな黒い傘をさしているではないか。
私の勝手なイメージではあるのだが、雨の日のストーカーってカッパとか着ない?
振り返った私から隠れるように、コソッと電柱の影に入っているのだが、傘がはみ出している。
あんたストーカー向いてないよ、と教えてあげたいところだ。
駅に向かう近道、住宅街の入り組んだ道をクネクネと進んでいると
「ニャー」
「にゃー?」
猫が、捨てられていた。
よくアニメなんかで目にするやつ、ダンボールに「可愛がってあげてください」って書いてあるやつ。
ダンボールも猫もびちゃびちゃにずぶ濡れて、弱々しく鳴いていた。
あぁ、嫌なもの見たなぁ...。
うちのアパート、動物禁止だしなぁ...。
大体なんだ、可愛がってあげてくださいって。
これを書いたやつはどんな気持ちで書いてるんだ。
あぁもう、ムカついてきた。
「ニャー」
ただ私には、何も出来ない。
善人ぶって怒っても、この猫のためにしてあげられることはない。
自分のことばかりだ。
「...。ごめんね、何もしてあげられなくて...。ごめんね...」
もう行かなくては、大学に遅れてしまう。
猫を捨てた人も最低だと思うけど、見て見ぬふりをする私も、そう大差なかった。
ため息と憂いの眼差しだけ、申し訳程度に置いて、また駅に向かって歩き始めた。
立ち止まっていた時間は、きっとそんなに長くなかった。
きっとあのままあの猫は、雨に打たれて体が冷えて、衰弱して死んでしまうのだろう。
たとえ雨をしのげても、あそこから動かなければエサもない。
どうあっても、死にゆくだけ。
私に出来ることは何もない。
思えば、アニメなんかでは見た事のある光景だが、現実で遭遇するのは初めてだ。
思っていたよりもずっと、猫はか弱くて、すぐにでも死にそうで。
思ってたよりもずっと、私は利己的で、優しくなくて。
傘ぐらい置いてきてあげればよかったのに、なんて後悔だけが、駅に向かう足を重くして、グルグルと胸を渦巻いていた。
「はぁ...、ダメだ、私。ダメだなぁ...」
きっとこのまま大学に向かっても、授業に集中できないだろう。
せめて、傘ぐらい置いてきてあげて、タオルくらい持ってきてあげて。
とりあえず、道を戻ろうと思って振り返ると、また遠くにストーカーが見えた。
また遠くにストーカーが見えたのだが、さっきとは装いが違う。
傘をさしていないのだ。
時折震えるように両腕で肩を抱き、さすっているように見える、
私に見られているのに気がついたのか、スっと道の端へ隠れた。
先程よりは上手に、傘がない分だけ隠れられているようだ。
...。
猫に、傘を置いてきてあげたのだろうか。
私はなにもできなかったのに、しなかったのに、あんたは。
そう思ったら、足が動いていた。
ゴミを漁られていた時は動かさなかった足を、そのストーカーに向けて。
いつもすごく遠くから私を追いかけて、感謝もされないのに電車の席取ったりとか、カップ麺買ってきてくれたりとか。
だんだんと、歩調が速くなっていくのを感じていた。
ストーカーの方も、私が引き返してきたのを見て道を戻っていく。
逃がすものか、気付けば私は走り出していた。
死にゆく猫に後ろ髪を引かれるような重い足取りではなく、なにか、なにかを伝えなければという焦燥感。
ストーカーが角を曲がった。
その先をもう少し戻ったところに、猫が捨てられているはず。
追いかけて私も、角を曲がった。
「ねぇ!」
私は、ストーカーの背中に、声をかけていた。
ちょっとまだ、遠いけれど。
びちょびちょの後ろ姿のその先に、さっき見た猫とダンボールと、さっきより少し前に見た大きな黒い傘が見えて。
走りながら、その背中に叫んでいた。
「ねぇ!あんた!ストーカー向いてないよー!」
きっとこんなこと言われるなんて思わなかったのだろう。
ストーカーは足を止めて、振り返った。
びちゃびちゃに雨に濡れたその顔は、私が想像してたよりもずっと、可愛らしい、悪くない顔だった。
「ストーカー、向いてないよ」
最近少し、困っていることがある。
そう、それは今からちょうど1ヶ月前のことか。
ちょうど1ヶ月というのは、私がそれを目撃してから1ヶ月たった、ということ。
最近私は、ストーカーをされているのだ。
なんとこの私が、である。
この言い方は語弊があるので補足させてもらうと、別にモテない訳では無い。
高校では彼氏もいたし、まあ、もう別れたけれど。
容姿に多少のコンプレックスはあれど、人並み程度のもの。
激しく隠したくなる様なものでもない。
ただ、ストーカーってもっとアイドルみたいな子がされるイメージだったもので。
私みたいな普通の女子にストーキングなんてするもんなの?と思ったものだ。
ともあれ私はストーカーをされていて、まあなんというか、それなりに困っていたりする。
そう、それは1か月前のこと。
私はアパートで一人暮らしをしているのだが、その日はゴミ出しの日で、いそいそとゴミを出しに行った。
ゴミの指定場所に持ってきた、それほど大きくないゴミ袋をちょこんと置いて、さてアパートに戻るかぁと思ったその時。
ふと視線を感じて来た道の反対側の方を向いた。
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、ちらっと人影が見えた、ような気がした。
いや、なに、別に私以外に人がいない世界というわけでもなし、ただの通行人だろうと思って、私は来た道を戻った。
道をアパートに向かって歩いている途中、やっぱりあの人影が気になって、少し戻ってみることにした。
間違いなく私の勘違いなのだろうけど、なんだかちょっとだけ引っかかるような、違和感のあるような。
言葉に言い表せないようなモヤモヤがあった。
そこの角を曲がってすぐにごみ捨て場。
角からひょっこり顔だけ出して、ごみ捨て場を確認してみた。
すると、なんということだろうか。
先程の人影が、私の置いていったゴミ袋を漁っているではないか。
いやー、なにやってるのー、って感じだ。
大した物は捨ててないけども、下着とかは捨ててないけども。
大体はお惣菜のパックかレトルトの袋かカップ麺かテイクアウトか...。
見られたら、少し恥ずかしい。
というか、純粋に気持ちが悪かった。
「ちょっと、なにやってるんですか!」
私は角を曲がって、それでも一定の距離をとりつつ変質者に声をかけた。
びくっ!と驚いたように体を震えさせ、動きを止める変質者。
「あっ、あ、えっとその...」
そう言いつつ、ゆるりと立ち上がった。
かと思うと途端に、ばっ!っと駆け出して、走り去ってしまった。
追いかけようか一瞬迷ったが、走るのが得意なわけではない私が追いかけたところで、捕まえられるとは思わない。
そもそも捕まえて何をしようというのか。
捕まえたけど反撃されたり、なんてことを考えると足がすくんだ。
「はぁ...、片付けなきゃ...」
ストーカーが散らかしたゴミ達を眺めて、朝から深いため息が止まらなかった。
それからというもの、ちょこちょことストーカー被害っぽいものを、この1ヶ月間に渡り受け続けている。
例えば、後ろをつけられたりだとか。
例えば、先回りされていたりだとか。
玄関に何かしらが置いてあったりだとか。
そんなふうな事をされているのだが、なんだかそれほど、このストーカーを悪く思えない。
ゆえにストーカー被害っぽいもの、と表現したのだ。
後ろをつけられる時は、決まって昼間。
振り返っても注意しなければ気づかないほど遠くで、なにやら遠目に見られている。
最近電車に乗ると、座れることが多くなったのだが、それもストーカーが私の乗る車両に先回りして座席を取っているのだ。
私が乗り込んでくると、姿を見せる前にどこかへ消えてしまう。
私が落し物をした時なんかは、その落し物と一緒に私の好きなカップ麺を袋に入れて、アパートのドアに吊るしてあった。
期間限定の、厚揚げが3枚入っているきつねうどんのやつ。
前から食べたいなぁとは思っていたのだが、コンビニではいつも売り切れていて買えなかった。
まさかストーカーにプレゼントされるとは思ってもいなかったけども、ずっと食べたかったので美味しく頂いた。
と、まあそんなことが続き、ぎょっとすることはあれど、すごく怖いことをしてくるわけではないし、なによりあのカップ麺を買ってきてくれたのは、純粋に嬉しかった。
そんなわけで私は、そのストーカーを悪く思えないのである。
今日は朝から雨が降っていて、午前から講義のある私は、憂鬱ながら傘をさしてアパートを出た。
ザアザア降り、というわけではないが、傘にあたる音が小気味いい程度には降っている。
既に水溜まりも出来ていた。
こんな雨の日には、流石のストーカーも追っては来ないだろうなぁと思いながら、たまに立ち止まって後ろを確認する。
アパートから大体駅までの半分くらいの所で、ストーカーの影を遠い後ろの方に見付けた。
あろうことか大胆にも、大きな黒い傘をさしているではないか。
私の勝手なイメージではあるのだが、雨の日のストーカーってカッパとか着ない?
振り返った私から隠れるように、コソッと電柱の影に入っているのだが、傘がはみ出している。
あんたストーカー向いてないよ、と教えてあげたいところだ。
駅に向かう近道、住宅街の入り組んだ道をクネクネと進んでいると
「ニャー」
「にゃー?」
猫が、捨てられていた。
よくアニメなんかで目にするやつ、ダンボールに「可愛がってあげてください」って書いてあるやつ。
ダンボールも猫もびちゃびちゃにずぶ濡れて、弱々しく鳴いていた。
あぁ、嫌なもの見たなぁ...。
うちのアパート、動物禁止だしなぁ...。
大体なんだ、可愛がってあげてくださいって。
これを書いたやつはどんな気持ちで書いてるんだ。
あぁもう、ムカついてきた。
「ニャー」
ただ私には、何も出来ない。
善人ぶって怒っても、この猫のためにしてあげられることはない。
自分のことばかりだ。
「...。ごめんね、何もしてあげられなくて...。ごめんね...」
もう行かなくては、大学に遅れてしまう。
猫を捨てた人も最低だと思うけど、見て見ぬふりをする私も、そう大差なかった。
ため息と憂いの眼差しだけ、申し訳程度に置いて、また駅に向かって歩き始めた。
立ち止まっていた時間は、きっとそんなに長くなかった。
きっとあのままあの猫は、雨に打たれて体が冷えて、衰弱して死んでしまうのだろう。
たとえ雨をしのげても、あそこから動かなければエサもない。
どうあっても、死にゆくだけ。
私に出来ることは何もない。
思えば、アニメなんかでは見た事のある光景だが、現実で遭遇するのは初めてだ。
思っていたよりもずっと、猫はか弱くて、すぐにでも死にそうで。
思ってたよりもずっと、私は利己的で、優しくなくて。
傘ぐらい置いてきてあげればよかったのに、なんて後悔だけが、駅に向かう足を重くして、グルグルと胸を渦巻いていた。
「はぁ...、ダメだ、私。ダメだなぁ...」
きっとこのまま大学に向かっても、授業に集中できないだろう。
せめて、傘ぐらい置いてきてあげて、タオルくらい持ってきてあげて。
とりあえず、道を戻ろうと思って振り返ると、また遠くにストーカーが見えた。
また遠くにストーカーが見えたのだが、さっきとは装いが違う。
傘をさしていないのだ。
時折震えるように両腕で肩を抱き、さすっているように見える、
私に見られているのに気がついたのか、スっと道の端へ隠れた。
先程よりは上手に、傘がない分だけ隠れられているようだ。
...。
猫に、傘を置いてきてあげたのだろうか。
私はなにもできなかったのに、しなかったのに、あんたは。
そう思ったら、足が動いていた。
ゴミを漁られていた時は動かさなかった足を、そのストーカーに向けて。
いつもすごく遠くから私を追いかけて、感謝もされないのに電車の席取ったりとか、カップ麺買ってきてくれたりとか。
だんだんと、歩調が速くなっていくのを感じていた。
ストーカーの方も、私が引き返してきたのを見て道を戻っていく。
逃がすものか、気付けば私は走り出していた。
死にゆく猫に後ろ髪を引かれるような重い足取りではなく、なにか、なにかを伝えなければという焦燥感。
ストーカーが角を曲がった。
その先をもう少し戻ったところに、猫が捨てられているはず。
追いかけて私も、角を曲がった。
「ねぇ!」
私は、ストーカーの背中に、声をかけていた。
ちょっとまだ、遠いけれど。
びちょびちょの後ろ姿のその先に、さっき見た猫とダンボールと、さっきより少し前に見た大きな黒い傘が見えて。
走りながら、その背中に叫んでいた。
「ねぇ!あんた!ストーカー向いてないよー!」
きっとこんなこと言われるなんて思わなかったのだろう。
ストーカーは足を止めて、振り返った。
びちゃびちゃに雨に濡れたその顔は、私が想像してたよりもずっと、可愛らしい、悪くない顔だった。
「ストーカー、向いてないよ」
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