彩り

ガタヤマ

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観葉植物

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東京に来て半年が経った。

玄関の戸を開けて

靴箱の上に置いてあるサンスベリアが

少し萎れていることに

気がついた僕は

初めて東京に来た日を思い出していた。



~~~~~

今日から1人暮らしが始まる。

ベランダの外を観ると

桜が満開に咲いている。


田舎から東京への引っ越しで

1人では寂しいと思い、

ペットを飼いたいところだが、

僕にはアレルギーがあって飼えなかった。

そこで

観葉植物を1つだけ

部屋に置くことにした。

サンスベリアという名前らしい。



今日は初めて大学の授業に行く日だった。

初日から遅刻はしたくなかったので

早めにアパートを出た。

電車は朝から

会社に行く人たちで満員だ。

田舎ではこんな経験はあまりない。

ぎゅーぎゅーに詰められながらも

初めての体験に

なぜかワクワクする自分もいた。

大学の授業が始まる5分前

端っこの席を見つけ

座って、ツイッターを見ながら

先生が来るのを待っていた。

すると、


「隣空いてる?」


身長は低めだが

顔立ちは整っていて、落ち着いている

雰囲気の男が

話しかけてきた。


「空いてるよ。」


「ありがとう。」


2人とも不器用に会話をした。

他の席がどこも空いていなかったから

その男は

助かった~

というような表情でもあった。

いつもだったら

僕から声をかけることは少ないが

自然に声をかけていた。


「出身はどこですか?」


慣れない質問で少し畏まってしまった。


「大分県です。」


「へぇー遠くから来たんだね!」


「なんで東京の大学に来たの?」


「なんとなく。かな」


「そうか~、僕の名前は佐助。名前は何ていうの?」


「柊(ひいらぎ)です。」


「カッコいい名前だね、よろしく!」


「よろしく」


口数は少ないけど、

不思議と柊君に

興味が湧いている自分がいた。

授業が終わり

LINEの連絡先だけ交換した。


次の週も

教室に入ると


「よっ!」


「ども」


「そういえば、1人暮らしはどこに住んでるの?」


「北千住だよ」


「えっ!近い!今度遊びに行っていい?」


「大丈夫だよ」


会う度に言葉を交わす回数が

増えていった。


その授業がある度に

自然と端っこの席で

隣に座っていた。


日に日にその授業に行くことが少しだけ

楽しみに感じていた。

ほんの少し関わっただけで

僕の人生に新たな芽が

出てきたような感覚だった。


~~~~~


懐かしさを感じながら

サンスベリアに想いを馳せて

コップ一杯の水を注いだ。

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