ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 7. 救世主?

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「お前さんは...」
マスターが訝しげにつぶやく。

入口からツカツカとガーネットたちの方に歩いてくるのは、女の子3人組。
年齢は3人とも同じくらいで、ガーネットよりもちょっとだけ、お姉さんだろうか?

今、声をかけたのはリーダー格らしく、魔法使いの格好をしている。
ローブにとんがり帽子に杖。
標準的な身長。スタイルはなかなかで、胸もある程度あった。
髪は紫色でショート。あまり見た目にはこだわらないらしく、無造作にカットされている。

左側には、タンク役らしい重装備の少女。
肩に斧を担いでいた。
背は低めで、丸みを帯びた体型。胸も大きい。
灰色のミディアムボブだが、パーマがかかっている。

右側にいるのは、剣士のようだ。
軽装の鎧に、腰には剣を差している。
身長は高めで、スレンダーな体型。
髪の毛は緑色で、ロングのストレートだ。

「誰だ?こいつら...」
見物していた冒険者から声が上がる。
どうやら、この辺りの人間ではないらしい。

やがて、受付に着いた3人組。
「おっと!紹介が遅れたね!あたしはアメジスト!今日、この街に来たところさ!」
リーダーの魔法使いが、そう言って、冒険者証を出す。
「あたいはパールっス!」
「...ヒスイだ!」
タンクと剣士も同じく冒険者証をカウンターに置いた。

「おい!銀級シルバーじゃねぇか!!」
野次馬から驚きの声。

3人の出した冒険者証は銀色をしていた。

冒険者には大雑把だが、ランクがある。
金級ゴールド銀級シルバー銅級ブロンズだ。
金級ゴールドは、全冒険者の1%くらいの選ばれた冒険者。中ボスクラスの魔物も退治できる。
銀級シルバーは、全冒険者の10%くらいの主力の冒険者。辺境の強力な魔物も倒せる。
そして、銅級ブロンズはその他の普通の冒険者だ。

冒険者証の素材は、ランクの名前と同じだ。

つまり、銀色の冒険者証を持っているということは、銀級シルバーの冒険者。
辺境では、決して珍しくないが、ここ王都近辺の比較的、安全な地域で見ることはまれだ。
なぜなら、ここには簡単な依頼しかなく、魔物も弱いため、魔石を売ったりしてもあまりお金にならない。

山の主のオーガが討伐されていなかったのも、なかなか強い冒険者がやってこないのが原因の一つだったのだろう。

「おお!銀級シルバーか!その年で...」
マスターが驚嘆の声を上げる。

ランクはそう簡単に上がるものではない。
例えば、銀級シルバーに上がりたかったら、銀級シルバークラスの魔物を4回、討伐しなければならない。
一回ごとに、冒険者証にスターが刻印され、4つ揃うと、上のランクに昇格する。

つまり、辺境に行き、強い魔物を4回、倒さないと、銀級シルバーにはなれない。
そのためには、コツコツと実力を蓄えるか、それだけの才能が必要だった。
若くして、高ランクということは、イコール、冒険者としての高い才能を持っていることを意味していた。

「すげぇ...俺なんか10年も冒険者をしてるのに...」
どこからか感嘆の声が聞こえる。
周りの3人を見る目が一瞬で変わった。

「その銀級シルバー様がなんでこんな街に?」
マスターが尋ねると、
「ちょっと野暮用があってね!ここにはちょいと顔を出しただけさ!」
アメジストが答えた。

「それで、その嬢ちゃんが山の主を倒したのを見たと?」
マスターが先ほどの話を思い出し、問いただすと、
「ああ!こう見えて、すげぇ魔法を使うのさ!手助けしようと思ったけど、必要なさそうだったんで、見物してたんだよ!」
アメジストが説明する。
「この子がねぇ...」
マスターはじっとガーネットを見つめる。
まだ、信じられないようだ。

「ミャ~~...」
マリンが『失敗した』とでも言いたげな顔をしている。
(まさか見られてたなんて...あれだけ派手な魔法を使えばね...もっと手軽にやっちゃえば良かったかしら?)
心の中で姫様は反省していたが、
(だって、ガーネットをあんな目にあわせるんだもの!!あのくらいしなきゃおさまらないわ!!)
姫様はよほど、腹に据えかねたのだろう。無理もないことだった。
しかし、姫様はアメジストの言葉に違和感を感じる。
(それにしても...ガーネットは気絶してたはず...それに私の話をしないのも不自然...何か裏がありそうね!)
マリンは油断のない目で、アメジストたちを眺めるのだった。

そうしているうちに、マスターの後ろから受付嬢の声が聞こえた。
「あの...」
「なんだ?」
マスターが続きを促すと、受付嬢が意見を述べる。
「虚偽の報告には罰則があります。この子はともかく、銀級シルバーの冒険者がそんなリスクを冒すものでしょうか?」
するとマスターは、
「それもそうだな!お前、実はすごいヤツだったんだな!!だったらもっと堂々としてろよ!」
ガーネットを見て、そう言うと、肩をバンバンと叩く。
「は、はい...」
(痛い...)
ガーネットが眉をひそめながらも、愛想笑いをしていると、
「ほらよ!金貨10枚だ!」
<チャリン!>
マスターが無造作に金貨をカウンターに置く。
「あ、ありがとうございます...」
ガーネットが遠慮がちに、そのお金を財布用の小袋にしまうと、
「じゃあね!お嬢ちゃん!」
意味ありげにウインクをしたアメジストたちが、ギルドを去っていく。
「ありがとうございました!!」
深く頭を下げるガーネット。
「ミャ~~~...」
しかし、マリンはアメジストの態度にイヤな予感を感じていた。

「では、私はこれで...」
ガーネットもその場を去ろうとすると、
「ちょっと待ちな!」
マスターに引き留められた。
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