ガーネットのキセキ

世々良木夜風

文字の大きさ
8 / 76

Maid 8. 冒険者にならないか?

しおりを挟む
「なんでしょう?」
内心、ビクビクしながら答えるガーネット。
すると、マスターから意外な言葉をかけられた。

「お前、冒険者じゃないんだよな?」
「はい...」
ガーネットが質問の意味をはかりかねていると、
「だったら冒険者登録しないか?それだけ強いヤツが、タダのメイドなんてもったいねぇ!」
マスターはそう誘ってきた。
「ぼ、冒険者ですか?!」
ガーネットは驚いているが、
「さっきも言ったが、お前が倒したオーガはA級指定の大物だ!クラスで言えば、金級ゴールドにあたる!」
マスターは少し、興奮しているようだ。声が大きくなっている。
「は、はあ...」
ガーネットはついていけず戸惑い気味だが、
「それを単騎で倒した!お前さんは将来の有望な金級ゴールド候補だ!」
それをよそに、目を輝かせて話すマスター。
「ゴ、金級ゴールドって...私はそんなんじゃ...」
ガーネットは説明しようとしたが、『オーガを倒したのは自分ではない』と今更、言えず、困ってしまう。
金級ゴールドになれば稼げるぞ~~!!今でもたくさんもらってるんだろうが、雇われより、自由な冒険者の方がいいと俺は思うがな!」
マスターは期待に満ちた目でガーネットを見つめてくる。
「どうしよう...」
ガーネットが迷っていると、
「別に登録しとくだけでもいい!冒険者は自由だから、メイドと掛け持ちで全然、構わない!デメリットはないから安心しな!」
マスターはそう言って、更に勧めてきた。

「どうしよっか、マリン?」
ガーネットがマリンに聞くと、
「ミャ~~~~!!」
マリンは力強く鳴く。
それを肯定の意味ととったガーネットは、了承することにした。
「で、ではお願いします!」
「よっしゃ!じゃあ、後の手続きは頼むぜ!」
その言葉に、マスターはうれしそうにガッツポーズをすると、受付嬢に引き継いだ。

「それではこの書類に...」
早速、手続きが始まると、
「ああ!それとオーガの討伐もカウントしといてやれ!事後になるが、こいつには早く銀級シルバーになってほしいからな!」
マスターはそう言い残して、奥へと去っていった。
「はい」
素直に答える受付嬢。
こうして、ガーネットは冒険者になった。

☆彡彡彡

「これが冒険者証...」
ガーネットは受付嬢にもらった青銅色のカードに見入る。
なんだかんだ言って、冒険者になった実感が湧いてきたようだった。
「それは今後のガーネットさんの冒険者としての身分を証明するものになりますので、大切にしてください!」
受付嬢が注意事項を述べるが、
「あっ!名前が刻印してある...冒険者ガーネット参上!!」
ガーネットはすっかりその気になったようで、カードを差し出すと、ポーズをとる。
本人は迫力のある芝居をしているつもりなのだろうが、はたから見ると、『可愛い』以外の印象はまるでない。
「ははは...」
愛想笑いをするしかない受付嬢。
ただ一匹、マリンだけが、
「ミャ~~~~~!!」
たたえるように声を上げ、拍手をするように両手を叩いていた。

改めて、冒険者証を眺めていたガーネットだったが、
「あれ?...星印が...2つ?」
ガーネットがそこに刻印されているスターに、首をひねる。
「ガーネットさんは銅級ブロンズですので、金級ゴールドクラスの魔物を倒したら、星が2つつきます!」
受付嬢が説明してくれた。
「そうなんだ...なんか悪いな...」
自分があげたわけでもない手柄に、ガーネットが恐縮していると、
「優秀な冒険者には早く、ランクを上げてもらいたいとの配慮です!もう一体、金級ゴールドクラスを討伐すると、ガーネットさんも晴れて銀級シルバーですよ!」
そんなガーネットの心を知るわけでもない受付嬢は、そう言って笑いかけてきた。
「ははは...」
ガーネットが苦笑いをしていると、

「おい!あいつ、ああ見えて、すげぇ強ぇらしいぜ?」
「この街から金級ゴールドの冒険者が誕生するかもな!」
「歴史的な瞬間に立ち会っちゃったわね!」

周りの冒険者たちからの羨望の眼差しが痛い。

「わ、私、用事がありますんで!」
ガーネットは逃げるようにその場を後にした。

☆彡彡彡

「なんか、すごいことになっちゃったなぁ...」
今更ながら、ことの重大さに気付くガーネット。
「ミャ~~~~!!」
マリンの声は、『大丈夫だよ!』と言っているように聞こえる。
「それにこのお金...」
ガーネットが財布の小袋を、服の上から握りしめる。
ずっしりとした金貨の重みが、大金であることを実感させた。
その時のことだった。

「出てきたね!」
街の路地から冒険者パーティーが顔を出す。
「あなたは...アメジストさん!!」
それは先ほどガーネットを助けてくれた女の子3人組だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...