9 / 76
Maid 9. 正義の味方
しおりを挟む
3人は意味ありげにニヤニヤと笑いながら、ガーネットを見ている。
「シャ~~~~~!!」
マリンが威嚇するが、
「ダメよ、マリン!!その人たちは私を助けてくれた優しい人なんだから!」
ガーネットはマリンをたしなめると、3人に改めてお礼を言う。
「先ほどはありがとうございました。おかげさまで、すんなりとことが運びました」
深く頭を下げたガーネットに、
「礼儀正しいお嬢さんだねぇ!...じゃあ、こういう時の誠意の表し方...」
アメジストは軽く笑いながら、何か口にしようとしたが、
「あの!アメジストさんはあの時のこと、見てたんですよね?!」
ガーネットに遮られてしまった。
(もしかして姫様が!!)
必死な形相のガーネットに、
「そ、そ、それは...」
思わず、たじろいでしまうアメジスト。
「お願いです!!詳しく、教えてください!!」
しかし、ガーネットはそんなアメジストを、更に問い詰める。
(まさか、『見てない』とは言えない雰囲気だね...)
そう感じたアメジストは、
「そんなのどうだっていいじゃないのさ!」
なんとかごまかそうと試みる。すると、
「そういうわけには!...って、姫様がいらっしゃるはずないですよね...」
ガーネットは急に落ち込んだ表情になった。
「ど、どうしたんだい?」
その様子に、少し慌てているアメジスト。それに対し、
「ん?...ということは...」
ガーネットは何かに気付いたようだった。
「そんなことより早くもらうもの、もらっちゃうっス!」
すると、隣で二人のやり取りを見ていた元気な少女、パールがしびれを切らしたように、アメジストに話しかける。
「そ、そうだったね!」
気を取り直したアメジストは、
「それよりも助けてあげたよね!!その代わりと言っちゃなんだけど、魔石のお金をちょ~~~っとばかし、分けてくれると、お姉さんうれしいな~~!」
口ぶりは丁寧だが、虫のいいお願いをしてくる。
「シャ~~~~~!!」
怒り心頭のマリンだが、
「もちろんです!!」
ガーネットは素直に財布を取り出す。
「...いい子だ!まあ、金貨1枚で...」
ヒスイが女性にしては低い、中性的な声でそう口にしたが、
「はい!!」
ガーネットは笑顔で、10枚、全てをアメジストに差し出した。
「「「・・・」」」
固まってしまうアメジストたち。
時間が止まったかのような光景に、道行く人が不思議そうな顔をして、通り過ぎた。
「ちょっと!!なんで全部、出すんスか!!...少しだけ分けてくれれば...」
慌てて声を上げるパールの口を、とっさにアメジストはふさいだ。
「そ、そ、そうだね!!...あ、ありがたくいただいておくとしようか!」
そう言いながらも、アメジストは『何かの罠なのでは』とでも思ったのか、慎重に金貨をその手に受け取る。
「おい!いいのか?さすがに...」
普段、クールなヒスイも、動揺した様子でアメジストを諭すが、
「『くれる』って言ってんだから、受け取るのが礼儀ってもんだろ!」
アメジストは完全に、開き直っているようだ。
しかし、さすがに後ろめたいのか、ガーネットの顔をうかがうと、
「私は当然のことをしただけです!むしろ、これでは足りないと思うのですが、私には余裕がなくて...」
ガーネットはなぜか、申し訳なさそうにしていた。
「じゅ、十分っス!!って、ホントに全部もらっていいんスか?!」
パールがガーネットに再度、尋ねると、
「そうだぞ!今からでも遅くは...」
ヒスイも考えを改めるように忠告する。しかし、
「いいえ!この度は本当にありがとうございました!!これからも頑張ってください!!」
ガーネットは笑顔でもう一度、礼を言うと、その場を去っていった。
「アメジスト!いいんスか?あたい、ちょっと罪悪感が...」
「そうだ!今からでも、半分返して...」
パールとヒスイは、アメジストに詰め寄るが、
「い、いいじゃないか!あの子も納得してるんだし...」
アメジストは結局、全額もらうことにしたのだった。
「でも、『頑張って』ってどういう意味なんだろうね?」
ガーネットの最後の言葉に、引っかかるものを感じながら...
☆彡彡彡
「ミャ~~~~!!...ミャ~~~~!!...」
アメジストたちと別れてから、マリンが何度もガーネットにまとわりつき、必死に何かを訴えている。
「もう!マリン、どうしたの?今日はいい人に会えて良かったね!」
しかし、ガーネットはマリンに笑いかけるだけだ。
「ミャ~~~~!!」
更にマリンが声を上げると、
「マリンも見たんでしょ?あの人たちが私をオーガから助けてくれるところ!」
ガーネットがそう言った。
「ミャッ?!」
マリンが首を傾げていると、
「オーガはすごい魔法で倒されていた...この辺りでそんな魔法を使えるのは、きっと、銀級のあの人たちくらいなんじゃないかな!」
ガーネットは魔法のことを良く知らない。
普段、姫様の魔法ばかり見ているので、それがいかに規格外か理解していなかった。
だから、魔石のあった場所に残されていた大きな穴を見ても、銀級の優秀な魔法使いなら、そんなことができると思ったのだった。
「ミャ~~~~!!」
マリンは何か言いたげに鳴くが、
「つまり、あの人たちは私を助けてくれただけでなく、私が魔石を横取りしても、ギルドで困らないように、私が倒したことにしてくれた...」
ガーネットは自分の推理を述べていく。
「そして、お金を返そうとしても、『全部はいらない』なんて...きっと、ああいう人たちを『正義の味方』って言うのね!!」
ガーネットは陶酔したような顔をしている。
「ミャッ?!」
それに対して、愕然とした表情を見せるマリン。
「本当は助けてくれたお礼と、ギルドでもらった星も返さないといけないんだけど...当たり前のように『いらない』なんて...普通、言えないよね!」
しかし、ガーネットはすっかり、アメジストたちを善人だと思い込んでいるようだった。そればかりか、
「もしかして、崖で意識を失った私を助けてくれたのも!!...そう考えると、全ての説明がつく!!」
ガーネットは思いついたように叫ぶ。
「ミャッ!!ミャ~~~~!!」
マリンは必死で訴えるが、
「すごいなぁ...あんなふうに人を助けて回っている人がいるなんて...尊敬しちゃう!!」
うっとりとしたガーネットの目に、
「ミャ~~~~~~!!」
絶望したように大声を出すマリンだった。
「シャ~~~~~!!」
マリンが威嚇するが、
「ダメよ、マリン!!その人たちは私を助けてくれた優しい人なんだから!」
ガーネットはマリンをたしなめると、3人に改めてお礼を言う。
「先ほどはありがとうございました。おかげさまで、すんなりとことが運びました」
深く頭を下げたガーネットに、
「礼儀正しいお嬢さんだねぇ!...じゃあ、こういう時の誠意の表し方...」
アメジストは軽く笑いながら、何か口にしようとしたが、
「あの!アメジストさんはあの時のこと、見てたんですよね?!」
ガーネットに遮られてしまった。
(もしかして姫様が!!)
必死な形相のガーネットに、
「そ、そ、それは...」
思わず、たじろいでしまうアメジスト。
「お願いです!!詳しく、教えてください!!」
しかし、ガーネットはそんなアメジストを、更に問い詰める。
(まさか、『見てない』とは言えない雰囲気だね...)
そう感じたアメジストは、
「そんなのどうだっていいじゃないのさ!」
なんとかごまかそうと試みる。すると、
「そういうわけには!...って、姫様がいらっしゃるはずないですよね...」
ガーネットは急に落ち込んだ表情になった。
「ど、どうしたんだい?」
その様子に、少し慌てているアメジスト。それに対し、
「ん?...ということは...」
ガーネットは何かに気付いたようだった。
「そんなことより早くもらうもの、もらっちゃうっス!」
すると、隣で二人のやり取りを見ていた元気な少女、パールがしびれを切らしたように、アメジストに話しかける。
「そ、そうだったね!」
気を取り直したアメジストは、
「それよりも助けてあげたよね!!その代わりと言っちゃなんだけど、魔石のお金をちょ~~~っとばかし、分けてくれると、お姉さんうれしいな~~!」
口ぶりは丁寧だが、虫のいいお願いをしてくる。
「シャ~~~~~!!」
怒り心頭のマリンだが、
「もちろんです!!」
ガーネットは素直に財布を取り出す。
「...いい子だ!まあ、金貨1枚で...」
ヒスイが女性にしては低い、中性的な声でそう口にしたが、
「はい!!」
ガーネットは笑顔で、10枚、全てをアメジストに差し出した。
「「「・・・」」」
固まってしまうアメジストたち。
時間が止まったかのような光景に、道行く人が不思議そうな顔をして、通り過ぎた。
「ちょっと!!なんで全部、出すんスか!!...少しだけ分けてくれれば...」
慌てて声を上げるパールの口を、とっさにアメジストはふさいだ。
「そ、そ、そうだね!!...あ、ありがたくいただいておくとしようか!」
そう言いながらも、アメジストは『何かの罠なのでは』とでも思ったのか、慎重に金貨をその手に受け取る。
「おい!いいのか?さすがに...」
普段、クールなヒスイも、動揺した様子でアメジストを諭すが、
「『くれる』って言ってんだから、受け取るのが礼儀ってもんだろ!」
アメジストは完全に、開き直っているようだ。
しかし、さすがに後ろめたいのか、ガーネットの顔をうかがうと、
「私は当然のことをしただけです!むしろ、これでは足りないと思うのですが、私には余裕がなくて...」
ガーネットはなぜか、申し訳なさそうにしていた。
「じゅ、十分っス!!って、ホントに全部もらっていいんスか?!」
パールがガーネットに再度、尋ねると、
「そうだぞ!今からでも遅くは...」
ヒスイも考えを改めるように忠告する。しかし、
「いいえ!この度は本当にありがとうございました!!これからも頑張ってください!!」
ガーネットは笑顔でもう一度、礼を言うと、その場を去っていった。
「アメジスト!いいんスか?あたい、ちょっと罪悪感が...」
「そうだ!今からでも、半分返して...」
パールとヒスイは、アメジストに詰め寄るが、
「い、いいじゃないか!あの子も納得してるんだし...」
アメジストは結局、全額もらうことにしたのだった。
「でも、『頑張って』ってどういう意味なんだろうね?」
ガーネットの最後の言葉に、引っかかるものを感じながら...
☆彡彡彡
「ミャ~~~~!!...ミャ~~~~!!...」
アメジストたちと別れてから、マリンが何度もガーネットにまとわりつき、必死に何かを訴えている。
「もう!マリン、どうしたの?今日はいい人に会えて良かったね!」
しかし、ガーネットはマリンに笑いかけるだけだ。
「ミャ~~~~!!」
更にマリンが声を上げると、
「マリンも見たんでしょ?あの人たちが私をオーガから助けてくれるところ!」
ガーネットがそう言った。
「ミャッ?!」
マリンが首を傾げていると、
「オーガはすごい魔法で倒されていた...この辺りでそんな魔法を使えるのは、きっと、銀級のあの人たちくらいなんじゃないかな!」
ガーネットは魔法のことを良く知らない。
普段、姫様の魔法ばかり見ているので、それがいかに規格外か理解していなかった。
だから、魔石のあった場所に残されていた大きな穴を見ても、銀級の優秀な魔法使いなら、そんなことができると思ったのだった。
「ミャ~~~~!!」
マリンは何か言いたげに鳴くが、
「つまり、あの人たちは私を助けてくれただけでなく、私が魔石を横取りしても、ギルドで困らないように、私が倒したことにしてくれた...」
ガーネットは自分の推理を述べていく。
「そして、お金を返そうとしても、『全部はいらない』なんて...きっと、ああいう人たちを『正義の味方』って言うのね!!」
ガーネットは陶酔したような顔をしている。
「ミャッ?!」
それに対して、愕然とした表情を見せるマリン。
「本当は助けてくれたお礼と、ギルドでもらった星も返さないといけないんだけど...当たり前のように『いらない』なんて...普通、言えないよね!」
しかし、ガーネットはすっかり、アメジストたちを善人だと思い込んでいるようだった。そればかりか、
「もしかして、崖で意識を失った私を助けてくれたのも!!...そう考えると、全ての説明がつく!!」
ガーネットは思いついたように叫ぶ。
「ミャッ!!ミャ~~~~!!」
マリンは必死で訴えるが、
「すごいなぁ...あんなふうに人を助けて回っている人がいるなんて...尊敬しちゃう!!」
うっとりとしたガーネットの目に、
「ミャ~~~~~~!!」
絶望したように大声を出すマリンだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる