ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 14. 怪しい契約条件

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「あれ?アメジストさんだ!」
「ミャ~~~?」
アーガイルの街に向け、歩いていたガーネットは、アメジストたちを見つける。

彼女たちは、村の入口で村人たちを前に、愛想良さそうに手を振ると、村から離れていった。
街道沿いにアーガイル方面に向かうのかと思いきや、途中で向きを変え、北の茂みの中に消えていく。

「どうしたのかな?」
気になったガーネットは、村の入口にまだ残っていた村人に声をかけた。

「こんにちは!」
「ああ、こんにちは!あんたメイドかい?こんな村になんの用だい?」
村人は不思議そうにガーネットを見る。
そんな村人にガーネットは尋ねた。

「今の、アメジストさんたちですよね!何かあったんですか?」
すると、
「ああ!実は村に厄介なことが起こってるんだが、その解決を彼女たちに依頼したんだ!」
村人が事情を説明してくれた。

「さすが、アメジストさん!!こうしてみんなを助けて回ってるんですね!すごいです!!」
ガーネットは目を輝かせるが、
「ミャ~~~?」
マリンは不審そうな顔をしている。

「あんた、あの冒険者の知り合いかい?」
村人の問いに、
「いえ、私もアメジストさんたちに助けてもらった一人です!!あの人なら、きっと解決してくれますよ!!」
ガーネットは誇らしげに言い切る。
「ミャ~~!ミャ~~!」
何か言いたそうなマリンをよそに話は進む。

「そうかい!少し、契約条件が変だったので、村長は不安がっていたが、それなら大丈夫そうだな!」
少し、安心したような村人に、ガーネットは尋ねる。
「契約条件が変?」
すると村人は話しだす。
「ああ!実はドラゴンの退治を頼んだんだが...」
「ドラゴン?!」
驚いたガーネットは話の途中にもかかわらず、声を上げてしまった。

ドラゴンは言わずと知れた、魔物の頂点に君臨する存在。純粋に身体能力が高いだけでなく、ブレスも吐ける。
倒せる冒険者パーティーは、それだけで尊敬されるほどだ。

「そうなんだよ!こんなところにビックリだろ?...それが数日前から北の砦跡に住み着いてしまっていてね...」
村人の言葉に、
「北の砦?」
その存在を知らないガーネットは、首を傾げてしまう。
「ああ!嬢ちゃんは知らないのかい?...ずっと昔のことだが、戦争があった時に、王都を守る砦がこの村の北にあったんだ!平和になった今は、放置されていて、荒れ放題だがね!」
村人の説明に、
「へぇ~~~!知らなかった!そんなのがあったんだ!...マリンは知ってた?」
ガーネットがなんとはなしにマリンに聞くと、
「ミャ~~~~!!」
マリンは誇らしげにうなずく。
「ふふふ!マリンったら!」
それを本気にとっていないガーネット。
「ミャ~~~...」
マリンは不満げに鳴くが、村人が話を再開した。

「ドラゴンは、今のところ、大人しくしている!だが何をするか分からないので、退治してもらおうと、ミールの街に向かっている途中で、彼女たちに会ったんだ!」
「へぇ~~~~!そうなんですね!ラッキーですよ!」
ガーネットはアメジストたちを信頼しているようだ。太鼓判を捺す。
「そうかい!向こうから話しかけてきて、自分たちは銀級シルバーだと、やけに売り込んできてね!怪しかったんだが、冒険者証は本物らしいし、村長のところに連れていったんだ!」
村人はガーネットの言葉に少し、頬を緩めると説明を続ける。すると、
「ふふふ!アメジストさんらしいですね!あの人は困っている人を見ると、放っておけないんです!」
ガーネットが笑う。
そこまで彼女たちを知っているわけではないと思うのだが、思い込みというのは恐ろしい。

「それで、ドラゴンを退治してくれるようにお願いしたんだが...」
村人の顔が、一瞬、曇る。
「何かあったんですか?」
ガーネットが聞くと、
「ああ!最初、彼女たちは報酬として金貨10枚を要求してきた...」
村人の言葉に、
「まあ、ドラゴン退治ともなるとそれくらいは...」
ガーネットが答える。
それは適正な報酬額だった。
「しかし、うちの村は見ての通り、貧乏だ!」
村人の言葉に、ガーネットは村の中を見渡す。
「・・・」
言葉には出さなかったが、お世辞にも栄えているとは言えない。
「そこでなんとか、用意できないか、村中の金を集めていると、彼女たちはこう言ったんだ!」
ガーネットの態度を特に気にする様子もなく、村人は続ける。
「『最初に前金として、金貨3枚をいただけたら、残りの報酬は金貨2枚で結構ですよ』と!」
「ミャ~~~~!」
マリンがあからさまに胡散臭そうな声を出す。
しかし、ガーネットは、
「さすがアメジストさんです!!あの人はお金のない人から、無理に取ろうとはしません!私もそうでした!!」
我がことのように胸を張っている。
「そうだったのかい!『前金』というのが引っかかって、村長は迷ったようだったが、結局、うちの村で出せるのはそれだけだったので、仕方なく、彼女たちに依頼したんだ!」
村人は不安が払拭されたようだ。ガーネットを見て笑っている。
「ミャ~~~~!!」
マリンは何か言いたそうに、体を大きく動かしてアピールしているが、
「ふふふ!マリンも感動したの?」
ガーネットはその様子を微笑ましげに見ると、村人に話しかけた。
「それは皆さんが負担に思わないように、ワザとそんな態度をとったんですよ!あの人たちはそういう人です!」
「ミャ~~~?!」
ガーネットの答えに驚いているマリン。しかし、
「そうだったのかい!いや~~~~、心配して損したよ!てっきり、前金だけ持って逃げるつもりなのかと...杞憂だったな!」
「そうですよ!アメジストさんたちはそんなこと、絶対にしません!!」
村人とガーネットは楽しそうに笑い合っている。
「ミャ~~~...」
ただ一人、マリンだけが悲しそうな声で鳴いていたのだった。
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