ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 13. アメジストたちの逃走劇

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その日の朝、ガーネットがシャワーを浴びていた頃。

「ない!...ない!...」
アメジストたちは何かを血眼になって捜していた。
「『紫の奇跡の雫』がないっス!!厳重な鍵をかけておいたのに...」
パールは『何かの間違いでは』とばかりに、箱をひっくり返して、隅々まで調べている。
「最後に見たのはいつだ?!」
ヒスイがベッドの周りを入念に確認しながら、アメジストに問いかける。
「昨日、宿に着いてから、一応、確かめたよ!その時には確かにあったはずさ!」
アメジストは部屋の家具を片っ端から、開けまくりながら、答えた。
「くそっ!ならなぜ...まさか、昨日、寝ている間に?...無理だ!ここに忍び込むなど!」
ヒスイがブツブツ考え込んでいると、

<コンコン!>
部屋のドアがノックされる。
「ひいっ!!」
飛び上がらんばかりに驚くアメジスト。

続いて外から声がかけられる。
「アメジスト!いるか?例のものを受け取りに来た!トパーズ伯がたいそう、楽しみにされていてな!わざわざ、ここまで足を運んでこられたのだ!早く、見たいと...」
更に話を続けようとする外の使者に、
「そ、そ、それはご足労様です!そ、それでは私たちもそれなりの格好を...」
なんとか、時間を稼ごうとするアメジスト。しかし、
「ははは!格好などどうでもよい!それより、一刻も早く実物を確かめたい!すぐに出てくるように!」
使者にそう言われてしまう。
「そ、そうですか!しかし、私たちも女ゆえ、もう少しだけ時間をいただけないでしょうか?」
アメジストの言葉に、
「やれやれ!どこも女は支度に時間がかかっていかん...まあ、よい!急ぐのだぞ!」
そう言い残すと使者は、1階のラウンジに下りていった。

「ど、どうするっスか~~?今更、『なくした』なんて言ったら...」
パールの顔が青ざめていく。
「仕方ない!!ずらかるよ!!」
アメジストは決意したようだ。
「しかし、どこからだ?入口にはトパーズ伯の一行が...」
ヒスイが尋ねると、
「ここしかないだろう!」
アメジストは窓を指差した。
「ひえぇぇ~~~~~!!ここ、3階っスよ?落ちたら...」
パールが窓の外をのぞき込みながら、おびえているが、
「お前も冒険者なら覚悟を決めろ!」
ヒスイに説教されてしまう。
「二人は軽装だからいいスけどあたいは...」
そう言われても、重装備のパールは泣きそうな顔になるのだった。
「とにかく、急ぎな!!時間がないよ!!」
「そうっスね!もうそれしかないっス!」
「承知!」
アメジストの催促に、覚悟を決めるパールとヒスイ。
急いで荷物をまとめるが、

「ない!...ないっス!」
まだ、パールが何かを捜している。
「だからアイテムはもういいって言ってんだろ!」
アメジストが苛立たしげに怒鳴るが、
「そうじゃないっス!お金がないっス!」
パールは困ったように訴える。
「なに?!」
アメジストも必死で捜すが、どこにも貨幣を入れてあったはずの小袋はなかった。すると、

「遅い!まだ、支度ができんのか?!伯爵はイライラしておられるぞ!!」
外からまた、使者の声が聞こえてきた。
おそらく、伯爵に催促されて、戻ってきたのだろう。
「は、はい!今すぐ!」
そう言いながら、窓から逃げだすアメジスト。
「...ジ・エンドだな...」
続いてヒスイも窓から外に出る。
「待って~~~~っス!」
パールも諦め、動きにくそうにしながらも、二人に続くのだった。

☆彡彡彡

「はぁ...」
ここはミールの街から王都とは反対側に向かう、街道。
3人組のパーティーの小さいタンク役の少女が、ため息をついていた。
「今頃、雫を売ったお金で豪遊してたはずっスのに...」
パールは諦め切れないようだ。
「言うな!私だって落ち込んでるんだ!」
普段、クールなヒスイも浮かない顔をしている。
「くそっ!アイテムを盗んだヤツ、見つけたらタダじゃおかないよ!!」
アメジストはというと、怒り心頭だ。

そんなアメジストに向かって、
「でも、これからどうするっスか?無一文で、トパーズ様には追われる身...」
パールが途方に暮れたように尋ねると、
「金はもともと金貨1枚ぽっちだったんだ!また、魔物を倒して、魔石を売ればいいさ!それより何かうまい儲け話を...」
アメジストがそう言う。
「何か当てがあるのか?!」
ヒスイが期待に満ちた目でアメジストを見つめるが、
「だから探すんだよ!!」
アメジストは声だけは威勢がいいが、決まり悪そうに目を逸らした。
「そうっスよね~~~...」
もともと期待していなかったのか、パールが元気のない返事をした時、

「強い冒険者、見つかるかなぁ~~~?」
「さあ...ミールよりもアーガイルに行った方が良かったんじゃないのか?」
「でも、アーガイルは遠いだろ?俺らただの農民には無理だよ...」

貧相な格好をした、二人組の男の会話が聞こえた。

「何かお困りですか?...私たちはこう見えて銀級シルバーの優秀な冒険者!きっとお役に立てると思いますが!」

アメジストがいつの間にか、男たちの前に立って、恭しく礼をしながら話しかけていた。
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