ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 16. 姫様との結婚の条件

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「姫様!王様がお呼びです!!」
部屋に入ろうとした姫様に、王宮の官吏の声がかけられる。

先ほど、姫様の魔法のお披露目が行われたばかりだ。
多くの貴族が観覧に来ており、王様も社交に忙しいはず。
イヤな予感がする姫様。

「何かしら?面倒なことでなければいいけど...ガーネットもついてきて!」
「はい!」

官吏の後に続いて、姫様、ガーネットと王様の私室へ向けて歩いていく。

<トントン!>
「サファイア姫様をお連れしました!」
官吏が王様の部屋のドアをノックすると、要件を告げた。

「入れ!」
王様の声。

「失礼します!」
姫様がドアを開けると、入室する。
ガーネットは入っていいものか迷っていたが、姫様に促されて一緒に続いた。

「なんじゃ、またそのメイドと一緒か!...まあ良い。座りなさい!」
王様は一言、そう口にした後、姫様に席に着くように促す。

「はい」
部屋の中央には6人くらいが座れそうなテーブルがあった。
王様はすでに奥の中央に座っている。
姫様は王様の対面に座り、ガーネットはその斜め後ろに控えた。

「今日の魔法、実に見事であった!どの貴族も感心しておったわい!」
王様は心底、自慢げに姫様を褒める。
「ありがとうございます」
軽く頭を下げる姫様。
「そこで...なのじゃがのう...」
王様は少し、言いにくそうに、言葉を止めた。

「なんでしょうか?」
姫様が小首を傾げていると、
「その...なんじゃ...お前ももう、16じゃろう...その...」
年齢の話を持ち出した王様に、姫様はピンとくる。
「結婚の話ですか?それはまだ時間をいただきたいと申しているではありませんか!!」
姫様の責めるような口調に、
「わ、分かっておる!!...しかし、お前は器量もいいし、魔法の才能もある!『是非、うちに』と貴族どもがうるさくてな!」
王様は目を逸らしながら、そう言った。
(それでこのタイミングね!)
姫様はなぜ、今、自分が呼ばれたのかを理解した。
(多分、あの後の謁見で、結婚を強く要望されて、困っているのね!)

王様といえど、絶対権力者ではない。
有力貴族の協力がなければ、国を上手く統治することができない。
場合によっては、隣国との戦争にも発展するだろう。

「それで、なんと答えたのです?」
姫様が王様を問い詰める。すると、
「じょ、条件を与えたのじゃ!」
王様はそう答えた。
「条件?」
姫様が聞くと、
「うむ!誰と結婚しようと、必ず不満を言う貴族が出てくる!そこで難しい条件を出して、それを達成できたなら、結婚を認めることにしたのじゃ!」
王様の言葉に、
「そんな勝手に!!」
姫様は立ち上がって抗議する。すると、
「ま、待て!条件は簡単ではない!伝説の『奇跡の雫』を手に入れた者に、お前を与えると約束したのじゃ!」
王様は大慌てで釈明した。

奇跡の雫・・・『奇跡の花』の蜜とも伝えられ、虹色に輝いているという。
その名の通り、奇跡のような力を発揮し、不治の病や臓器の損傷、更には精神の異常まで、あらゆる怪我や病気を治すことができると言われていた。
『言われている』というのは、それは伝説級のアイテムで、誰も見たことがない。
人々の伝承に残っているおとぎ話のようなものだった。

「でも、もし、誰かが手に入れたら...」
姫様は心配するが、
「そのような偉業を成し遂げる者なら、結婚相手として不足はないと思うのじゃが...お前はどうなのじゃ?」
王様はそう問いかける。
姫様は少しの間、逡巡したが、思い切ったような顔をすると、王様の目を見て言った。

「私には...好きな人がいるのです!!」

「・・・」

その場がしばらく静寂に包まれた。
姫様はそっとガーネットの方を見る。
驚いた様子だったが、
<ニコッ!>
軽く微笑んでくれた。
途端に姫様が満面の笑みになる。そして、

「私はその人以外と結婚する気はありません!!」

ハッキリと口にすると、どっかりと腰を下ろす。
「...そうか...」
有無を言わせぬその態度に、困ったように考え込む王様。

しばしの後、
「まあ、『奇跡の雫』など伝説!見つける者などおるまい!数年して、落ち着いた頃にその話をしようではないか!」
王様はごまかすように笑うとそう言った。
「・・・」
納得のいかない顔の姫様。
「そうは言うても、皆の前で発表した手前、今更、『できません』とは...」
泣きそうな目で訴えてくる王様。
もはや、威厳も何もない。娘の前でだけ見せる情けない姿だ。すると、

「はぁ...分かりました!その代わり、約束していただきたいのです!『奇跡の雫を手に入れた者は誰であろうと結婚相手として認める』と!」
姫様は一つ、ため息をつくと、厳しい目で王様を見つめる。
「うっ!も、もちろんじゃ!そのようなことを成し遂げる者に、誰も異論は挟まないじゃろう!」
その目にたじろぎながらも、約束した王様。すると、
「話はそれだけですか?」
「うむ!分かってくれて良かった!」
納得してくれた姫様に、安心した様子の王様。
「では、私は考えることがありますので...」
それを見た姫様は、席を立ったのだった。
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