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Maid 17. ガーネットの決意
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「・・・」
部屋に帰ってくるなり、黙り込んで窓の外を見つめている姫様。
「姫様、お茶が冷めてしまいます...」
「うん...」
ガーネットの声かけにも生返事だ。
その様子をしばらく眺めていたガーネットだったが、
「姫様!!お願いがございます!!」
思い切った顔をすると、普段からは想像もできない激しい口調で話しだす。
「な、なに?」
その様子に圧倒されながらも、姫様が答えると、
「しばらくおヒマをいただけないでしょうか!!」
ガーネットは深く、頭を下げると、そうお願いしてきた。
「な、なんで?!私が嫌いになったの?!」
姫様が驚きに目を見開いていると、
「とんでもございません!!私が姫様を嫌いになるなど、天地がひっくり返っても有り得ません!!」
ガーネットは言い切る。
「じゃあ、なんで...」
姫様の問いに、
「私に...姫様への恩返しをさせていただきたいのです!!」
ガーネットはそう口にした。
「恩返し?」
不思議そうに首をひねった姫様に、ガーネットは説明する。
「姫様は今まで私にとてもよくしてくださいました!だから...その恩返しとして...『奇跡の雫』を見つけてまいります!!」
すると姫様は、
「ガーネット!!」
途端に笑顔になる。
(ガーネットも私とおんなじことを考えていたのね!!メイドのガーネットと結婚なんて、普通は許されない...しかし、お父様は『奇跡の雫を手に入れた者は誰であろうと結婚相手として認めてくれる』と約束してくださった...)
「もう!恩返しなんて大げさなんだから!!」
姫様が、いつになく真剣な表情のガーネットに笑いかけると、
「では、許してくださるので?」
ガーネットは緊張が解けたのか、頬を緩ませる。
「許すもなにも...大歓迎よ!!それなら私も一緒に行かなくちゃ!旅の支度を...」
うれしそうな顔で、早速、そう命じる姫様だったが、
「いけません!!」
ガーネットに止められる。
「なんで?ガーネット一人じゃ、無理でしょ?」
姫様が首を傾げていると、
「大丈夫です!!姫様のためでしたらどんな苦労でも...しかし、姫様はこの国にとって...私にとって、なくてはならない人!!それを危険な旅に同行させるわけにはまいりません!!」
ガーネットは頑なに拒否する。
「そんな!!ダメよ!!ガーネット一人じゃ、きっと死んでしまうわ!!」
姫様はなんとか、考え直すよう、説得するが、
「ご心配には及びません!!こう見えて体力だけは自信があるんです!!」
ガーネットは安心させるように、にっこりと笑う。
「ダメ!!旅には賛成よ!でも、私も絶対、ついていく!!」
それでも聞かない姫様だったが、
「だれか!!」
ガーネットが大声で他のメイドを呼ぶ。
<パタパタパタ...>
すぐに隣の部屋に控えていた、メイドたちがやってきた。
「姫様が『旅に出る』とおっしゃっています!!全力でお止めしなさい!!」
ガーネットは下位のメイドにそう命じると、踵を返し、部屋の外へと歩いていく。
「ガーネット!!待って!!」
姫様は必死に追いかけようとするが、
「姫様!いけません!!」
「外出は王様の許可をとってから...」
メイドたちに止められてしまう。
ガーネットは部屋を出る際、姫様に振り返ると、笑顔で口にした。
「姫様!必ず、私が奇跡の雫を手に入れてまいります!!ですからご安心を!!...それと...ついてきたら絶交ですからね!」
「ガーネット...」
姫様の声を置き去りに、ガーネットは、そのままどこかへと去っていったのだった。
〇・〇・〇
(ふふふ!バカだよね!私なんかが姫様のお役に立てるなんて...)
そう約束した自分が滑稽に思えてくる。
(私が死ぬのは全然、怖くない...でも...姫様が望まれない結婚を強要されるのは...)
ガーネットの目から涙がこぼれた。そして、
(こんな私でも死んだら、悲しがっていただけるかしら?)
そんなことが頭をよぎる。
(姫様はお優しいからきっと...ごめんなさい...私は口だけの女でした...どうぞ嫌いになってお忘れになってください...)
前方から熱気が感じられる。
今にもブレスが吐かれようとしているのだろう。
「姫様...」
<ポタッ!>
ガーネットの涙が床を濡らした。
「ライトニング!」
その瞬間、忘れられない声が聞こえた。
部屋に帰ってくるなり、黙り込んで窓の外を見つめている姫様。
「姫様、お茶が冷めてしまいます...」
「うん...」
ガーネットの声かけにも生返事だ。
その様子をしばらく眺めていたガーネットだったが、
「姫様!!お願いがございます!!」
思い切った顔をすると、普段からは想像もできない激しい口調で話しだす。
「な、なに?」
その様子に圧倒されながらも、姫様が答えると、
「しばらくおヒマをいただけないでしょうか!!」
ガーネットは深く、頭を下げると、そうお願いしてきた。
「な、なんで?!私が嫌いになったの?!」
姫様が驚きに目を見開いていると、
「とんでもございません!!私が姫様を嫌いになるなど、天地がひっくり返っても有り得ません!!」
ガーネットは言い切る。
「じゃあ、なんで...」
姫様の問いに、
「私に...姫様への恩返しをさせていただきたいのです!!」
ガーネットはそう口にした。
「恩返し?」
不思議そうに首をひねった姫様に、ガーネットは説明する。
「姫様は今まで私にとてもよくしてくださいました!だから...その恩返しとして...『奇跡の雫』を見つけてまいります!!」
すると姫様は、
「ガーネット!!」
途端に笑顔になる。
(ガーネットも私とおんなじことを考えていたのね!!メイドのガーネットと結婚なんて、普通は許されない...しかし、お父様は『奇跡の雫を手に入れた者は誰であろうと結婚相手として認めてくれる』と約束してくださった...)
「もう!恩返しなんて大げさなんだから!!」
姫様が、いつになく真剣な表情のガーネットに笑いかけると、
「では、許してくださるので?」
ガーネットは緊張が解けたのか、頬を緩ませる。
「許すもなにも...大歓迎よ!!それなら私も一緒に行かなくちゃ!旅の支度を...」
うれしそうな顔で、早速、そう命じる姫様だったが、
「いけません!!」
ガーネットに止められる。
「なんで?ガーネット一人じゃ、無理でしょ?」
姫様が首を傾げていると、
「大丈夫です!!姫様のためでしたらどんな苦労でも...しかし、姫様はこの国にとって...私にとって、なくてはならない人!!それを危険な旅に同行させるわけにはまいりません!!」
ガーネットは頑なに拒否する。
「そんな!!ダメよ!!ガーネット一人じゃ、きっと死んでしまうわ!!」
姫様はなんとか、考え直すよう、説得するが、
「ご心配には及びません!!こう見えて体力だけは自信があるんです!!」
ガーネットは安心させるように、にっこりと笑う。
「ダメ!!旅には賛成よ!でも、私も絶対、ついていく!!」
それでも聞かない姫様だったが、
「だれか!!」
ガーネットが大声で他のメイドを呼ぶ。
<パタパタパタ...>
すぐに隣の部屋に控えていた、メイドたちがやってきた。
「姫様が『旅に出る』とおっしゃっています!!全力でお止めしなさい!!」
ガーネットは下位のメイドにそう命じると、踵を返し、部屋の外へと歩いていく。
「ガーネット!!待って!!」
姫様は必死に追いかけようとするが、
「姫様!いけません!!」
「外出は王様の許可をとってから...」
メイドたちに止められてしまう。
ガーネットは部屋を出る際、姫様に振り返ると、笑顔で口にした。
「姫様!必ず、私が奇跡の雫を手に入れてまいります!!ですからご安心を!!...それと...ついてきたら絶交ですからね!」
「ガーネット...」
姫様の声を置き去りに、ガーネットは、そのままどこかへと去っていったのだった。
〇・〇・〇
(ふふふ!バカだよね!私なんかが姫様のお役に立てるなんて...)
そう約束した自分が滑稽に思えてくる。
(私が死ぬのは全然、怖くない...でも...姫様が望まれない結婚を強要されるのは...)
ガーネットの目から涙がこぼれた。そして、
(こんな私でも死んだら、悲しがっていただけるかしら?)
そんなことが頭をよぎる。
(姫様はお優しいからきっと...ごめんなさい...私は口だけの女でした...どうぞ嫌いになってお忘れになってください...)
前方から熱気が感じられる。
今にもブレスが吐かれようとしているのだろう。
「姫様...」
<ポタッ!>
ガーネットの涙が床を濡らした。
「ライトニング!」
その瞬間、忘れられない声が聞こえた。
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