ガーネットのキセキ

世々良木夜風

文字の大きさ
18 / 76

Maid 18. 助けてくれたのは...

しおりを挟む
「姫様!!」
ガーネットはその詠唱に、思わず大声を上げると、目を開く。すると、

「グォォォ~~~~~...」
巨大な稲妻に打たれたドラゴンが、断末魔の叫び声とともに、光となって消えていく。
<コツン...>
床に落ちた、大きな魔石。
そして、ドラゴンのいた向こうからは...

「ミャ~~~~!!」
マリンが慌てて、駆けつけてきた。
「マリン!!大丈夫だったの?!」
飛びついてくるマリンをギュッと抱きしめるガーネット。
「・・・」
大きな胸に挟まれ、マリンは頬を染めている。
しばらくそうしていた二人だったが、

「そうだ!!姫様?!」
ガーネットは姫様を捜し、辺りを見回す。
しかし、どこにも姫様の姿は見つけられなかった。

「幻?...でも今の魔法は...」
狐につままれたような顔をしているガーネット。
すると、入口の方から声が聞こえた。


「どこにいるんだろうね?あのメイド?」
「ホントに大丈夫っスかね?やられたりなんかしてたら...」
「しかし、先ほどの轟音!それと、強力な魔法の光の後、音がしなくなった...おそらくこの先に...」


「アメジストさん!!」
ガーネットが声を上げる。
それはアメジストたち、3人組だった。

「ああ!ここにいたんだね!...この魔石...間違いない!これはドラゴンの...あんたが...」
ガーネットを見つけたアメジストが、何か聞こうとした時、

「もしかして!!」
ガーネットが何かに気付いたようだ。アメジストたちを見つめて叫ぶ。
するとアメジストたちは、

「な、何がさ?!あ、あたしたちは決して、ドラゴン討伐の手柄を横取りしようと思ってるわけではなく...」
「そ、そうっス!!先に村に帰って、『ドラゴンを倒してきました』なんて言うつもりは全く...」
「そ、そうだ!!『あわよくば分け前を』などという卑しい気持ちはこれっぽっちも...」
慌てて、言い訳を始める。

「ミャ~~~...」
そんなアメジストたちを白い目で見ているマリン。
しかし、ガーネットは違った。

「ありがとうございました!!」
アメジストたちに向け、大きく頭を下げる。

「はっ?!」
「えっ?!」
「なにっ?!」
戸惑っているアメジストたち。
そんなアメジストたちの前で、ドラゴンの残した特大の魔石を拾うガーネット。そして、

「はいっ!」
笑顔でアメジストに差し出す。

「こ、こ、これはどういう...」
そう言いながらも、当たり前のように魔石を受け取っているアメジスト。
「ちょっ!!いいんスか?!」
パールが咎めるが、
「これはあたしたちのものでいいんだよね?!」
アメジストは念のためにガーネットに確かめている。
すると、ガーネットは、
「もちろんです!!それにドラゴンの財宝も...」
アメジストたちを奥の方へと案内しだした。
「ミャ~~~...」
『またか』という表情のマリン。
しかし、それを無視して、皆は財宝の山へとたどり着く。

「これはこれは...なかなかのもんじゃないか!!」
「す、すごいっス!!」
「私もこれほどの宝は見たことも...」

その光景に、アメジストたちが感激の声を上げていると、
「ふふふ!どうぞ困っている人のために役立ててください!」
ガーネットが笑顔で話しかける。

「そうさね!実は困ってたんだよ!」
「そうそう!もうどうしようかと...でもいいんスか?ちょっとだけもらえたらそれで...」
「うむ!私たちは少しでいい!」

ろくでなし3人組も、さすがに遠慮するが、
「ふふふ!相変わらず謙虚なんですね!どうぞ全部...」
ガーネットはにっこり笑っている。

「では、遠慮なく...」
喜びが顔から隠せない様子のアメジストだったが、
「いや、さすがにそれはまずいだろ!!少しくらい持っていけ!!」
ヒスイはガーネットに向き直ると、宝を勧める。
「でも...」
ガーネットは断ろうとしたが、
「ミャ~~~~!」
マリンの声に振り返る。
「なに?これはアメジストさんたちの...」
そう言いながらマリンを抱き上げようとすると、
<カチャン!>
ガラス瓶が落ちた。
「あっ!割れちゃったかも!!」
ガーネットが慌てて拾い上げるが、
「なんだ!魔法のガラス瓶か...」
全く、傷がないのを見て安心するガーネット。
そして、中を見ると、

「綺麗...」
黄色の液体が幻想的に光っていた。
「ああ!それくらいなら分けてあげるよ!もらっておきな!」
アメジストがまるで自分のもののように言うと、
「いいんですか?!...じゃあ、お言葉に甘えて...」
その液体に心惹かれるものを感じたガーネットは、腰のポーチにしまう。

「これで一件落着だな!!」
高らかに宣言するアメジストに、
「本当に欲のない人たちですね!」
目を輝かせるガーネット。

「...少し、胸が痛むっス!」
「実は私も...」
少し、罪悪感を感じているパールとヒスイ。そして、

「ミャ~~~...」
『困ったもんだ』とばかりに首を振っているマリンがいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...