ガーネットのキセキ

世々良木夜風

文字の大きさ
28 / 76

Maid 28. タイタンとの遭遇

しおりを挟む
「それでね!ガーネットったら『私には好きな人がいる』って言って見つめたら、ニコッて微笑んでくれたの!!...これって絶対、オーケーサイン...」
「はいはい!」

それから毎晩、ガーネットが寝た後は、姫様とアリーの女子会がお決まりになった。
普段、話せない姫様は、ガーネットとののろけ話を何度もする。
(あ~~~~、つまんない!もう寝よ!)
「あたし、寝るね!」
アリーがそう言うと、
「え~~~~~!!まだ、話したいことが...」
「はいはい!また明日!」
物足りなそうな姫様を、軽くいなすアリー。
すると、どこからか声が聞こえてきた。

「ねぇ!まだ、歩くんスか?もう、野営するっス!」
「そうだぞ!急いでも仕方ないだろう!」

「あいつらね!...あれは...パールと...ヒスイだったかしら?」
「あたし、知らない!」
その様子を隠れて見ながら、ヒソヒソ話をする姫様とアリー。

「う~~~~ん...そうはいってもいい野営地が...ここら辺は街道沿いでも魔物が出るからね!」
アメジストはというと、困っているようだ。

もうアーガイルから数日、歩いている。
この辺りからは、魔物の出現頻度が、目に見えて高くなるのだった。
実際、ガーネットたちも何度か戦闘をしている。
ただ、まだあまり強くないので、アリーが簡単に倒してしまっていたが...

「あそこの茂みとかどうっスか?」
パールがガーネットたちのいる茂みを指差した。
「ああ!なかなか良さそうだね!」

それを聞いたアリーは、
「ガウゥゥ~~~~~!!」
魔物の鳴き声を出す。
(上手いものね!ほんっと器用なんだから!)
姫様がアリーに感心していると、

「魔物がいるようだな!もう少し、先に行くか!」
いい具合に、ヒスイがだまされてくれる。
「そうさね!ここら辺は茂みが多いから、ちょっと行けば、いいところがきっと、見つかるさ!」
アメジストの言葉に、
「そうっスね!」
パールも同意した。

「ナイスよ!」
姫様がアリーにささやいていると、

「しかし、本当にそんなうまくいくのか?」
ヒスイがアメジストに何かを問いかけていた。
「絶対、高く売れるさ!!アーガイルでさえ、あれだけの値がついたんだ!...聞けば、あの雫は『あらゆる怪我を癒やす』らしいじゃないか!」
アメジストがそう答えると、
「そうっス!辺境のカリナンなら、強い魔物との戦いで大怪我をすることも多いはず!きっと、もっと高く売れるっス!」
パールも取らぬ狸の皮算用をしていた。
「まあ、そうだな!少し、遠いが行く価値はあるか!辺境ならうまい儲け話もあるかもしれないしな!」
ヒスイも納得したようだ。
「そういうことさ!楽しみだねぇ~~~!」
そんな会話をしながら、アメジストたちは去っていった。


3人の声が聞こえなくなると、茂みから顔を出す姫様とアリー。
「...相変わらず、あさましいこと考えてるわね!」
姫様の言葉に、
「それにバカときてる!『七色の奇跡の雫』は研究者だから高く買ってくれるのに...カリナンの冒険者なら高位の治癒魔法くらい使えるでしょ!」
アリーも『どうしようもない』とばかりに首を振っていた。
「でも、ガーネットはなぜかあの人たちを高く買ってるのよね~~~...困っちゃうわ!」
姫様がため息をつくと、
「あの子、純粋そうだから、悪人の気持ちが理解できないんじゃないの?」
アリーはそう推測する。
「まあ、そこが好きなんだけどね!」
姫様が再び、のろけていると、
「ほっとけばいいよ!きっとあいつらには不幸が起こる!そして、ガーネットには幸運が訪れるから!」
予言めいた言い方をするアリー。
「そういえば、『あの雫は倍になって返ってくる』って言ってたわね?関係あるの?」
姫様が尋ねると、
「『世の中、そういうもの』ってことだよ!」
「ふ~~~~ん...」
適当にはぐらかされる姫様だった。

☆彡彡彡

翌朝、
「今日もいい天気だね!」
「ミャ~~~~!」
ガーネットたちが街道を歩いていると、

<ドドドドド...>
「うわぁぁ~~~~!!」
アメジストたちが前方から、土煙を上げながら、ものすごい速さで走ってきた。

「あっ!アメジストさん!!...また会いましたね!私たち、カリナンに...」
ガーネットがうれしそうに話しかけるが、

「急げ、急げ~~~~!!」
アメジストたちは素通りしてしまう。
<ドドドドド...>
小さくなっていく、ろくでなし3人組を見て、
「どうしたんだろ?何か急いでたみたいだけど...」
首を傾げるガーネット。すると、

「あれが原因じゃない?」
後ろからアリーの声がした。
「えっ?!」
ガーネットが振り返ると、

<ドシ~~~~ン!!...ドシ~~~~ン!!...>
大きな地響きを立てて、山のように大きな巨人が歩いてくる。

「タイタン!!」
ガーネットが驚愕の声を上げた。

『タイタン』...それは、滅多に姿を現さない、金級ゴールドクラスの中でも、更に上級に位置する魔物。
ドラゴンに匹敵する攻略難易度を持ち、倒すのは並大抵のことではない。
深い山の奥にしか出没しないはずのその魔物が、悠々と街道を歩いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...