ガーネットのキセキ

世々良木夜風

文字の大きさ
27 / 76

Maid 27. 白猫になったわけ

しおりを挟む
「ス~~~~...ス~~~~...」

「ウィンド!」
自動オート発動ランチャー!」
「マジックアロー!」

カリナンへの道中。
ぐっすり眠っているガーネットを、魔法で守ってあげている姫様。
そんな姫様にアリーが話しかける。
「かいがいしいね!」
すると姫様は、
「だって、ガーネットにもしものことがあったら、大変じゃない!」
照れながらも、心配そうにガーネットの顔を見つめる。
「なら、なんで猫なんかの非力な生き物に化けてるの?」
アリーが当然の質問をすると、
「それは私も思ってるわよ!...でも...」
姫様は昔話を始めた。

〇・〇・〇

「ガーネット!!...ガーネット!!...離しなさい!!」
ガーネットが去っていった後、姫様は暴れていた。
「ダメです!姫様が危険な旅に出るなど...」
「もし、必要なら十分な護衛をつけて...」
メイドたちは必死に押さえつけている。すると、

「そうじゃないの!ちょっと書物庫で調べ物をしたいのよ!」
さっきまで暴れていた姫様が、大人しくなると、そう口にする。
「・・・」
「・・・」
顔を見合わせていたメイドたちだったが、手を離すと、
「失礼しました。それでは私たちもご一緒いたします!」
恭しく礼をした。
(監視する気ね!好きなようにしたらいいわ!)
そんなことを考えながら、姫様は軽く身なりを整える。
そして、王城の書物庫へと向かうのだった。

☆彡彡彡

(あっ!ガーネット!)
そこではガーネットが熱心に書物を読んでいた。
(見つからないようにしないと...)
姫様はガーネットに気付かれないように、本棚に隠れながら目的の場所に向かう。
メイドたちは入口で待機しているようだった。
(好都合ね!)
そう思いながら音を立てないように、気をつけていると、

「あっ!『緑の奇跡』って書いてある!!もしかして!!」
ガーネットの弾んだ声が聞こえた。
(ふふふ!あんなに一生懸命になって...うれしい!!...でも、やっぱり一人じゃ危険だわ!)

やがて、姫様はある場所にたどり着く。
そこには『変化の魔法』に関する書物が並べられていた。
(こっそりついていくのに都合のいい魔法はと...)
姫様は早速、調べ始める。

(蛇?こんなのガーネットが気味悪がるわ!...巨大猿...いまいちね...)
なかなか目当てのものが見つからない。
(ペガサスなんてないかしら?可愛いし、ガーネットを乗せて、遠くに運んであげられるわ!)
姫様は想像してみる。
(ガーネットが私にまたがって...と、当然、下着越しにあそこが私の背中に...)
ポッと頬が染まる。
(そ、そして、飛んでいるうちにこすれて、ガーネットが...)
『あん!あん!気持ちいい!!...もっと!...もっと!!』
(なんてことになったら!!)
姫様が危うく、卒倒しそうになったその時、

「よし!場所は分かった!」
ガーネットの声が聞こえる。

(いけない!!こんなこと考えてるヒマなんてないわ!急がないと!!)
姫様は正気に戻ると、急いで本をめくる。すると、
(猫か...悪くないかも!!可愛いし、ガーネットの邪魔にならない!!)
しかし、詳しく読んでみると、
(...本当にただの猫になっちゃうみたいね...魔法も使えなくなるし、これじゃガーネットを守れないわ!...別のを...)
そう思った時だった。

「他にめぼしい情報はないね!とりあえず、この『緑の奇跡』の生えている場所に...」
ガーネットが椅子から立ち上がった音が聞こえた。

(いけない!!王都から出ちゃったら、どこにいるか分からなくなっちゃう!!もうこれでいいわ!!)
<ポンッ!>
姫様は白猫の姿になった。

そのまま、ガーネットについて書物庫を出ていく。
「姫様、まだかしら?」
メイドたちのおしゃべりが聞こえた。

☆彡彡彡

やがて、王都の門で、
「あれ?この猫、さっきからずっとついてきてる...どこの子かな?きれいだし、飼い猫なんじゃ...」
しかし、街の外に出ても猫はついてくる。
「どうしたの?おうちに帰りなさい!」
ガーネットは足を止め、猫に話しかけるが、
「ミャ~~~~!!」
白猫はガーネットに頬ずりしてきた。
「可愛い!!...でもどうしよう...このまま連れていくわけには...」
そうはいっても、満月は近い。それまでに目的地にたどり着かないといけない。
「私、行くね!」
ガーネットは早足で歩いていくが、猫はどこまでもついてきた。

☆彡彡彡

その日の夜。
「ミャ~~~~!」
ガーネットとともに野宿している白猫。
「もう!仕方ないなぁ~~~!一緒に行こっか!」
「ミャ~~~~~!!」
ガーネットの言葉に、白猫はうれしそうに頬をこすりつけてくる。
「じゃあ、よろしくね!私はガーネット!あなたは...」
ガーネットはしばらく名前を考えていたが、
「綺麗な青い目...姫様を思い出すな!」
「ミャッ?!」
そう言うと、猫が慌てだす。
「ふふふ!どうしたの?...そうだ!『マリン』、マリンなんてどうかしら?...マリン!」
ガーネットが呼びかけると、
「ミャ~~~~!!」
白猫はうれしそうに鳴いた。

こうして、ガーネットとマリンの旅が始まったのだった。

〇・〇・〇

「...というわけなのよ...」
ホウッとため息をつく姫様。
しかし、アリーの反応は予想外のものだった。
「猫は分かった。でも嫌がる相手の後をずっとついていくなんて、ストーカーだね!」
それを聞いた姫様は、
「えっ?!もしかして私、ガーネットに気持ち悪がられてる?!...で、でも、こうしないと守ってあげれないし...」
困ったように、あたふたしだした。
「ふふふ!面白~~~い!」
アリーの新たな楽しみが増えたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...