ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 58. 反省会

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「はあ、疲れた!」
<ドサッ!>
宿に戻ってきたガーネットがベッドに倒れ込む。
帰ってみれば、もう夕刻だった。

「今日は頑張ったもんね!...お、お風呂には入らないの?」
アリーが顔を赤くする。
二人がお風呂に入るのなら、さっさと退散しないといけない。

「...体が冷えたからゆっくり入りたいけど、疲れちゃった...とりあえず、シャワーを浴びて一眠りしたい!...マリン!行こ!」
ガーネットはマリンを誘うと、風呂場へと向かう。
「ミャ~~~!」
うれしはずかしそうな様子でついていくマリン。

「じゃあ、あたしはこれで...」
アリーが去ろうとすると、
「ミャ~~~~!!」
マリンが何かを言った。
「分かった!後でね!」
そう答えたアリーに、
「なに?」
首を傾げたガーネットだったが、
「なんでもない!!」
アリーはごまかすように、窓から出ていった。
「なんの相談?」
ガーネットはマリンに聞くが、
「ミャ~~~!」
その鳴き声からは何も感じ取れなかった。
「まっ、いっか!」
<ファサッ!>
それ以上考えないことにしたガーネットは、メイド服を脱ぎ去る。
「ミャ~~~~!」
何度も見た光景にもかかわらず、マリンはつい、目を覆ってしまうのだった。

☆彡彡彡

「ス~~~...ス~~~...」
よほど疲れていたのか、ベッドに入ると、すぐに深い眠りに落ちるガーネット。すると、
<ゴソゴソ...ポンッ!>
布団から抜け出したマリンが姫様の姿に戻る。
「今日はゴメンね!」
そう口にすると、そっとガーネットの頬に顔を近づける。
<チュッ!>
軽く口を触れた姫様だったが、
「や、やだ、キスしちゃった!...も、もしかして、これってファーストキス?」
思わず、赤くなってしまう。そして、
「ガ、ガーネットは...うれしい?...それとも...」
悪い方の想像をしたのか、悲しそうに目を伏せた姫様。
しかし、再びガーネットの顔を見ると、
「迷惑だったら忘れていいからね!...ちょっと、行ってくるわ!すぐに帰ってくるから!」
そう言い残して、窓を開ける。
「アリー!いる?」
「は~~~い!」
姫様の声に寄ってくるアリー。
「行きましょうか!...重力グラビティ操作コントロール!」
姫様はアリーとともに、どこかへと飛んでいった。

☆彡彡彡

一方、
「ふう~~~~!生き返った!」
アメジストたちの宿では、風呂場からヒスイが出てきていた。
アメジストとパールはすでに入った後のようだ。髪の毛が濡れ、体がほんのり色づいている。
3人はワンピース姿で、くつろいでいた。

「今日は死ぬかと思ったね!」
アメジストが話を振る。
「ホントっス!!...いつまでこんなの続くんスかね?」
パールは『うんざり』といった顔だ。
「一度、姫様にうかがった方が...」
ヒスイがそう持ちかけると、

「その前にすることがあるわ!」
聞き覚えのある声が聞こえた。

「「「ひえっ!!」」」
飛び上がらんばかりに驚く3人。
とっさに床に正座をすると、窓から入ってきた姫様とアリーを迎える。

「な、な、なんでしょうか?!姫様のお言葉ならどんなことでも!!」
「そ、そうっス!...じゃなくてそうです!『これで終わりだといいな』なんて、思ってもいません!!」
「『一度、うかがう』と言ったのは、要件をお聞きするという意味で...」
何も聞かれていないのに、言わなくていいことまで話している、ろくでなし3人組。

「分かりやすいね...」
アリーは呆れたようにつぶやくが、
「今回のミッションはこれで終了よ!また、お願いすることがあるかもしれないけど、その時はアリーから連絡するわ!」
姫様は愛想笑いをしているアメジストたちに、そんなことを告げた。

「ホントですか?!」
「ありがとうございます!!」
「できれば、連絡はない方が...っていうのは冗談です!!次もお待ちしております!!」
深く礼をしてはいるが、その顔は喜色に満ちている。もう解放された気分でいるようだ。

「ただし!!」
そんなアメジストたちに対し、大きな声を出すと、姫様は大真面目な顔で続けた。
「今日の反省会が終わってからよ!」
「「「反省会?」」」
首をひねっているアメジストたちに、
「今日もガーネットが危険な目にあったわ!もう二度とこんなことが起こらないように対策を立てないと!!」
姫様はそう言う。

「あの...ガーネット様に何があったのでしょうか?」
アメジストが尋ねると、
「あなたたちが来る前の話だけど...」
姫様は詳細を話しだした。

☆彡彡彡

「は、はあ...」
「しかし、おかげで『青の奇跡の雫』が手に入ったんじゃ...」
「それと私たちになんの関係が...」
長い話を辛抱強く聞いていたアメジストたちだったが、話が終わると、『自分たちは関係ない』といった顔をしていた。

「なんですって~~~~!!」
それを聞いた姫様は怒りだす。

「「「ひぃぃ~~~!!」」」
その形相におびえだしたアメジストたちに、姫様は言い放つ。
「今の話、聞いてなかったの?!私のガーネットがもしかしたら死んでたかもしれないのよ?!それを知って、よく『なんの関係が』なんて言えるわね!!」

「け、決してそういう意味では...」
「も、もちろん、ことの重大さは認識しております!!」
「そ、そうですね!!確かになんとかしなければ!!」
慌てて、言い訳しだすアメジストたち。

「なら、今後、こういう事態を引き起こさないための案を出しなさい!!それまで、会議は終わらないわよ!!」
ムチャなことを言いだした姫様を前に、
「「「そんな~~~!!」」」
泣きそうな顔の、ろくでなし3人組。
「...ご愁傷様...」
アリーはそっとつぶやいたのだった。
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