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Maid 59. 姫様からの使者
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「やはり、ガーネットの代わりに犠牲になる人をこの中から選んで...」
議論は白熱していた。
というよりも、姫様が出す、理不尽な要求に対処するので精一杯だった。
「い、いくらなんでもそれは!!」
今にも泣きだしそうなアメジストに、
「やっぱり、リーダーのアメジストかしら?」
姫様はこともなげに言う。
「そ、それならタンクのパールの方が適任...」
アメジストの言葉に、
「なんでっスか!!あたいは動きが遅いから、むしろ、ヒスイの方が...」
パールが必死で提案すると、
「それはおかしいだろう!!やはり、リーダーたるアメジストが...」
ヒスイはまた、アメジストを指名する。
「あんた!!」
3人で贖罪の山羊を押しつけあっていた。
「ふぁぁ~~~~あ!」
アリーが眠そうにあくびをする。そして、
「もう帰らなくていいの?ガーネット、起きて心配してるかも...」
窓の外を見ると、すっかり日が落ちて、真っ暗になっていた。
「いけない!!...いい!あなたたち!次に私が来る前に、誰が犠牲になるか決めておくのよ!!」
そう言いつけて、去ろうとする姫様に、
「「「そんな~~~!!」」」
この世の終わりのような顔をしているアメジストたちだった。
☆彡彡彡
一方、姫様のいなくなった後のガーネットの部屋では、
<コンコン!>
ドアをノックする音が聞こえた。
「うう~~~~ん...誰ですか?」
ぐっすり眠っているところを起こされ、朦朧とした頭で返事をするガーネット。すると、
「私は姫様からの使者です!ガーネット殿がここにいらっしゃると聞き、やってまいりました!」
外から、神経質そうな、男にしては高い声で、自己紹介がされる。
「姫様?!」
その単語に、反射的にベッドから飛び起きるガーネット。
「今、開け...」
急いでドアに手をかけたまでは良かったが、
「キャッ!!」
次の瞬間、ガーネットの悲鳴が響いた。
「どうされました?」
心配そうな声で問いかけてくる来訪者。
「な、なんでもありません!!申し訳ありませんが、少々お待ちいただけますか?」
真っ赤な顔でそう答えるガーネット。
「はい...」
外から不思議そうな声が聞こえた。
(いけない!私、今...服は...)
慌てて、洗濯用の魔道具に向かう。
シャワーの後、まだ乾燥中だったので、そのまま動かしておいたのだ。
なので、今は何も着けていない。
(まず下着を...って姫様からの使者の方をお待たせしてしまう!!...いいや!!)
ガーネットはメイド服だけを身に着けた。
(み、見えないよね...)
ミニのワンピースの裾を引っ張っているガーネット。
見えるはずはないのだが、どうしても意識してしまう。
(それと...)
薄い生地の胸の先を見つめるガーネット。
(ちょっと...膨らんでる?)
良く見ると、分かる気がした。
(こ、こうして...)
服を緩めてみる。
(よし!大丈夫!)
確認したガーネットは大急ぎでドアを開けた。
「お待たせしました!!」
大きく頭を下げるガーネット。顔を上げると、淡黄色の髪で痩身の、神経質そうな外見をした、背の高い男が立っていた。
「おや?顔が赤いようですが...お加減でも?」
姫様からの使者が聞いてくる。
「だ、だ、大丈夫です!!ちょっと部屋の中が暑かったものですから...」
ガーネットはごまかすように答えた。しかし、その顔は更に赤く染まってしまっていた。
「体調がよろしくないようですので、手短に...」
そう前置いた使者が続ける。
「実は姫様から、今まで集めた『七色の奇跡の雫』を預かってくるようにことづかりまして...」
すると、
「なぜそれを?!」
ガーネットは驚いてしまう。
姫様は王城にいるはずだ。知っているわけがない。しかし、
「姫様はなんでもお見通しです!それはガーネット殿が一番、良くご存じなのではありませんか?」
使者はそう言うと、にっこり笑う。
「た、確かに!!」
ガーネットは瞬時に理解する。
(姫様は私を心配して、ずっと見ていてくださったんだ...今までのことも、この宿に泊まっているのも、全て知ってらして...)
そこまで考えて、思わず頬を緩めたガーネットだったが、ふと、あることに気付いた。
(ま、ま、まさか全部?!...私が裸で寝てるのも、下着のにおいを嗅いでるのも、マリンにあそこのにおいを嗅がせてるのも!!)
ガーネットの顔から血の気が引いた。
「どうされました?」
心配そうに尋ねてくる使者の男。
「あの...姫様は何かおっしゃっておられませんでしたか?」
ガーネットが恥ずかしそうに男に聞く。
「??...いえ、ガーネット殿が頑張っていらっしゃるのを褒めておいででした!」
使者が答えると、
(な、何を?!)
一瞬、悪い方に考えたガーネットだったが、
(そ、そんなわけないよね!!だったら、とっくに見捨てられているはず!!きっと、プライバシーには配慮してくださってるんだ...)
そう結論付けた。
「あ、ありがとうございます!!...ところでなぜ、雫を?」
ガーネットが一礼した後、質問すると、
「はい。ガーネット殿は危険な旅を続けておいでです!その間に、不測の事態が生じ、失われてしまうかもしれません!『全て揃うまでは、安全な場所に保管しておくのが良いでしょう』と...」
使者はいかにも、心配そうな顔をしながら説明した。
(そこまで考えていらっしゃるとは!!)
改めて、姫様の洞察力の鋭さに感心したガーネットは、
「分かりました!すぐにお渡しいたします!少々お待ちください!」
部屋の中に戻ると、ポーチの中から、6本の魔法のガラス瓶を取り出す。そして、
「どうぞ!!」
急いで入口に戻ると、雫を全て、差し出したのだった。
議論は白熱していた。
というよりも、姫様が出す、理不尽な要求に対処するので精一杯だった。
「い、いくらなんでもそれは!!」
今にも泣きだしそうなアメジストに、
「やっぱり、リーダーのアメジストかしら?」
姫様はこともなげに言う。
「そ、それならタンクのパールの方が適任...」
アメジストの言葉に、
「なんでっスか!!あたいは動きが遅いから、むしろ、ヒスイの方が...」
パールが必死で提案すると、
「それはおかしいだろう!!やはり、リーダーたるアメジストが...」
ヒスイはまた、アメジストを指名する。
「あんた!!」
3人で贖罪の山羊を押しつけあっていた。
「ふぁぁ~~~~あ!」
アリーが眠そうにあくびをする。そして、
「もう帰らなくていいの?ガーネット、起きて心配してるかも...」
窓の外を見ると、すっかり日が落ちて、真っ暗になっていた。
「いけない!!...いい!あなたたち!次に私が来る前に、誰が犠牲になるか決めておくのよ!!」
そう言いつけて、去ろうとする姫様に、
「「「そんな~~~!!」」」
この世の終わりのような顔をしているアメジストたちだった。
☆彡彡彡
一方、姫様のいなくなった後のガーネットの部屋では、
<コンコン!>
ドアをノックする音が聞こえた。
「うう~~~~ん...誰ですか?」
ぐっすり眠っているところを起こされ、朦朧とした頭で返事をするガーネット。すると、
「私は姫様からの使者です!ガーネット殿がここにいらっしゃると聞き、やってまいりました!」
外から、神経質そうな、男にしては高い声で、自己紹介がされる。
「姫様?!」
その単語に、反射的にベッドから飛び起きるガーネット。
「今、開け...」
急いでドアに手をかけたまでは良かったが、
「キャッ!!」
次の瞬間、ガーネットの悲鳴が響いた。
「どうされました?」
心配そうな声で問いかけてくる来訪者。
「な、なんでもありません!!申し訳ありませんが、少々お待ちいただけますか?」
真っ赤な顔でそう答えるガーネット。
「はい...」
外から不思議そうな声が聞こえた。
(いけない!私、今...服は...)
慌てて、洗濯用の魔道具に向かう。
シャワーの後、まだ乾燥中だったので、そのまま動かしておいたのだ。
なので、今は何も着けていない。
(まず下着を...って姫様からの使者の方をお待たせしてしまう!!...いいや!!)
ガーネットはメイド服だけを身に着けた。
(み、見えないよね...)
ミニのワンピースの裾を引っ張っているガーネット。
見えるはずはないのだが、どうしても意識してしまう。
(それと...)
薄い生地の胸の先を見つめるガーネット。
(ちょっと...膨らんでる?)
良く見ると、分かる気がした。
(こ、こうして...)
服を緩めてみる。
(よし!大丈夫!)
確認したガーネットは大急ぎでドアを開けた。
「お待たせしました!!」
大きく頭を下げるガーネット。顔を上げると、淡黄色の髪で痩身の、神経質そうな外見をした、背の高い男が立っていた。
「おや?顔が赤いようですが...お加減でも?」
姫様からの使者が聞いてくる。
「だ、だ、大丈夫です!!ちょっと部屋の中が暑かったものですから...」
ガーネットはごまかすように答えた。しかし、その顔は更に赤く染まってしまっていた。
「体調がよろしくないようですので、手短に...」
そう前置いた使者が続ける。
「実は姫様から、今まで集めた『七色の奇跡の雫』を預かってくるようにことづかりまして...」
すると、
「なぜそれを?!」
ガーネットは驚いてしまう。
姫様は王城にいるはずだ。知っているわけがない。しかし、
「姫様はなんでもお見通しです!それはガーネット殿が一番、良くご存じなのではありませんか?」
使者はそう言うと、にっこり笑う。
「た、確かに!!」
ガーネットは瞬時に理解する。
(姫様は私を心配して、ずっと見ていてくださったんだ...今までのことも、この宿に泊まっているのも、全て知ってらして...)
そこまで考えて、思わず頬を緩めたガーネットだったが、ふと、あることに気付いた。
(ま、ま、まさか全部?!...私が裸で寝てるのも、下着のにおいを嗅いでるのも、マリンにあそこのにおいを嗅がせてるのも!!)
ガーネットの顔から血の気が引いた。
「どうされました?」
心配そうに尋ねてくる使者の男。
「あの...姫様は何かおっしゃっておられませんでしたか?」
ガーネットが恥ずかしそうに男に聞く。
「??...いえ、ガーネット殿が頑張っていらっしゃるのを褒めておいででした!」
使者が答えると、
(な、何を?!)
一瞬、悪い方に考えたガーネットだったが、
(そ、そんなわけないよね!!だったら、とっくに見捨てられているはず!!きっと、プライバシーには配慮してくださってるんだ...)
そう結論付けた。
「あ、ありがとうございます!!...ところでなぜ、雫を?」
ガーネットが一礼した後、質問すると、
「はい。ガーネット殿は危険な旅を続けておいでです!その間に、不測の事態が生じ、失われてしまうかもしれません!『全て揃うまでは、安全な場所に保管しておくのが良いでしょう』と...」
使者はいかにも、心配そうな顔をしながら説明した。
(そこまで考えていらっしゃるとは!!)
改めて、姫様の洞察力の鋭さに感心したガーネットは、
「分かりました!すぐにお渡しいたします!少々お待ちください!」
部屋の中に戻ると、ポーチの中から、6本の魔法のガラス瓶を取り出す。そして、
「どうぞ!!」
急いで入口に戻ると、雫を全て、差し出したのだった。
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