ローズマリーの冒険

世々良木夜風

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Episode 47. 絶望の淵で

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「くっ!!」
「ローズちゃん!!」
ローズが崩れ落ちそうになる体をなんとか踏ん張って、その場に仁王立ちになる。
「ほう...まだ、倒れぬか...」
サタンがその様子を見て感心したような、それでいてバカにしたようにも聞こえる声でそう言う。
先程から、ローズはなんとか打開策を見つけようと、様々な事を試していた。
フェイント、目くらまし、足技、じゅうの剣。
思いつくことはありとあらゆることを試した。
しかし、どれも簡単にあしらわれ、局面打開への糸口にすらなりそうになかった。
サタンは時折、そんなローズをあざ笑うかのように、適度に力を抜いた一撃を与える。
相手にダメージを与えるというよりも、その心を折ることを目的としたような攻撃だった。
「ヒール!!」
マリーがローズを癒やすが、ローズの顔には絶望の色が濃くなっていく。
(ダメ!!...基本的な能力に差がありすぎる...子供が大の大人にかかっていってるみたい...まるで歯が立たない...)
ローズはそれでも考え続けた。
(でも諦めるわけにはいかない!!ここにはマリーがいるの!!...あの時、マリーの言うことを聞いて、転移石を持ってきていれば...あたしのバカ!バカ!)
しかし、後悔先に立たずだ。
(なんとか...なんとかマリーだけは...)
マリーには『隙を見て逃げろ』と言ってある。
しかし、肝心のその隙すら作れなかった。
今、逃げようとすれば岩の棘に貫かれて死ぬだけだろう。
「さて...そろそろ飽きたな...」
「!!!」
サタンの言葉にローズは慌てる。
それは二人の死を意味していたからだ。
「待って!!まだ奥の手が...」
ローズが言うが、
「ほう?なら使ってみよ!つまらない技だったら即、殺す!!」
「・・・」
サタンの言葉にローズは黙り込むしかなかった。
もう時間稼ぎすらできない。その時、

「ファイアボール!!」
サタンのもとに火の玉が撃ち出された。
サタンはそれを横目で見ると、躱すこともなく手で握りつぶす。
「...こんな低級の魔法を...侮辱だな!!」
サタンがマリーを睨む。
「ひっ!!」
マリーは腰を抜かし、その場に座り込んでしまった。
「マリー!!余計なことはしないで!!」
ローズは言うが、マリーは震えながらも、
(やった!!注意を私の方に引けた!!...ローズちゃんならなんとか逃げれるかも!!)
そう思っていたが、ローズの方を見ても逃げようとする気配は感じられない。
(なんで?私の事なんて放っておいてくれたらいいのに...)
マリーは自分がローズの足かせになっている事に落ち込んでしまうのだった。
「今ので分かったでしょ!!あたしはともかく、あの子はあなたにとって全然、脅威にならないの!!逃がしても何も変わらないわよ!!」
そんなマリーの気持ちを知ってか知らずか、ローズはサタンに頼み込む。
「そうだな...」
(やった!!)
考え込むようなサタンの仕草にローズの顔が明るくなる。しかし、
「では、お前を殺してからあいつを殺すとするか...」
「!!!」
サタンがそう言うと、ローズの顔が絶望に染まった。
「はっ!はっ!は!!」
その様子を見てサタンは楽しそうに笑うのだった。

(お願い!!神様!!マリーだけは助けてください!!あたしはどうなっても構いません!!お願い!お願い!お願い!!)
(神様!お願いします!!私は死んでも構いません...でもローズちゃんだけは...ローズちゃんだけは助けてください!!お願いします!!)
ローズもマリーも今や神様に祈ることしか出来なかった。
ただ祈り続ける二人。そして...二人の心からサタンという『敵』が消えた...

☆彡彡彡

「くっ!!どれだけ出てくるんだよ!!やってもやってもキリがねぇ...」
ネルソンがマジックアローを連発しながら愚痴っていた。
「大丈夫よ!!敵の数がさっきより減っているわ!!こっちの殲滅スピードが地獄の扉から出てくる魔物の数より多いのよ!!少しずつ楽になるわ!!」
そんなネルソンを元気づけるかのようにミランダが言う。
「で、でも魔力が...」
さっきから、防御魔法と回復魔法を使い続けていたキャサリンが弱音を吐く。
「魔力が切れそうなら休んで回復してていいわよ!!私たちだけでなんとかするわ!!」
ミランダはそう言うが、
「しかし、避けるのが上手いお前らはともかく俺は...くっ!!」
ダイアンがデーモンの重い一撃を受けた。苦しそうな顔をする。
「ハイ・ヒール!!」
回復したキャサリンだったが、
「もう無理!!ちょっとだけ休ませて!!」
そう言うと、後ろに下がってしまった。
「ちっ!!」
舌打ちをするダイアンに、
「すまない...私が『魔力は惜しまなくていい』と言ったから...サタンも現れないし、私の読みが甘かったようだ...苦しかったら下がってくれてもいい...私だけでやる!!」
そう言って謝るジークだったが、
「冗談ですよ!!ここで下がっちゃ漢が廃る!!やってやるぜ~~~!!おりゃ~~~~!!!」
ダイアンは息を吹き返したように、大きな斧でデーモンを次々と倒していく。
「気にしないで下さい!ジークさん!!私もまだまだやれます!!それにさっきも言った通り、敵の数が減っている...戦い始めよりも楽ですよ!!」
ミランダも落ち込んだ様子のジークに声をかけていた。
「...すまないね...私の失敗の尻拭いをさせて...私も頑張らねばな!!」
ジークはそう言うと、また、ジャンプして敵の真ん中に飛び込み、剣を一回転させると多くの敵を一度に葬った。
しかし、その瞬間を狙っていたかのように、上空からガーゴイルが三叉の槍を突き出し、ジークに襲いかかる。
「おっと!」
ジークは平静を装って避けるが、今の攻防には焦りが感じられた。
「ジークさん...」
ミランダがジークが無理をしているのではないかと心配していると、
「危ない!!キャサリン君!!魔法防御を!!」
ジークがいきなり叫んだ。
見ると、地獄の扉からデーモンを一回り大きくしたような巨大な魔物が姿を現し始めている。

『アークデーモン』だ。
デーモンの上位種で全ての能力がデーモンを上回る。
さらに物理攻撃だけでなく、最強クラスの呪文まで使える厄介な魔物。
それだけではない。命を3つ持っており、葬り去る為には3回、倒さないといけないのだ。
地獄の軍勢の中では指揮官ともいえる強力な魔物だった。

「ダメだ!!キャサリンは魔力切れで後方に...」
ダイアンが言うと、
「みんな!!強力な魔法がくるぞ!!気をつけろ!!」
ジークが叫ぶ。
「そんなこと言われても...」
ネルソンが弱音を吐いていると、

アンチ魔法マジック障壁フィールド!!」

どこからか若い女性の声が聞こえた。
その直後、
「ダークフレイム!!」
アークデーモンが呪文を唱える。
闇と炎の属性を持つ中範囲魔法。その威力は絶大で高レベルの冒険者といえども、防御魔法無しでは一撃死の可能性すらあった。
<ゴォォォ~~~~~!!>
辺りを黒い炎が渦巻く。
「キャ~~~~!!」
ミランダの叫び声。魔法障壁をもってしてもそれなりのダメージにはなったようだった。
「くっ!」
体力のあるダイアンはまだ平気そうだが、
「ひぇ~~~~!!」
魔法使いであるネルソンは悲鳴を上げていた。
「ジークさん?!」
姿の見えないジークにミランダが焦っていると、
「ギャ~~~~~~~~!!!」
アークデーモンの断末魔の声が聞こえた。
見ると、黒い炎に紛れてアークデーモンに近づき、3連撃で3つの命を一瞬で刈り取っていた。
「さっすが~~~~~!!」
ネルソンがジークの神業に喝采を送る。
しかし、
「ジークさん!!」
ミランダが叫ぶ。
戻ってきたジークはかなりの火傷を負っていた。
やはり年には勝てないのか、体力を大幅に削られたようだった。
すると再び、さっきの女の子の声が聞こえる。

「パーフェクト・ヒール」

ジークの怪我は完全に癒やされた。
さらに『ハイ・ヒール』で他の3人の怪我も癒やす。
ジークたちが声の方を向くと走ってやってきたのは、

「大丈夫ですか?!わたくしはスカーレット・シェナリー!!シェナリー伯爵の娘です!!」

スカーレットとワカクサだった。
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