バスト・バースト!

世々良木夜風

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Burst13. 少女救出作戦

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「お待たせしました。僕は『コムネスキー』といいます。今回、オトメさんを『A子』...結界内にいる女の子のいる場所まで案内することになりました」
「コムネスキー...も、もしかしてA子さんが好きだったりして...」
オトメは名前から相手の個性を推測できるという特技を持っていた。
すると図星だったのか、コムネスキーの顔が赤くなる。
「な、何故それを!実は今日、A子にプロポーズをするつもりでいろいろ準備をしていたのです。それがこんな事になって...」
「そうなんだ...じゃあ、焦ってるよね。大丈夫!私がA子さんの周りの魔物をぶっ飛ばしてあげるから!」
二人が準備をしていると、一人の少女が現れた。なかなか立派な胸だ。Cカップだろうか。
「A子...私のこと誤解してないといいけど...」
「A子さんの友達?もしかして『C子』さんだったりして」
オトメがその少女に話しかける。
「な、何故私の名を!すごい冒険者さんは特殊な能力をお持ちなのですね!」
C子は大変驚いている様子だった。
(う~~~ん、手抜きにも程がある...)
オトメは何かに怒りを覚えていた。
「そんなオトメさんならもう気づいているかもしれませんが、僕とC子が、A子に誤解を与えてしまったのです!」
「それは分からなかったなぁ...」
「最近、僕はA子へのプロポーズの準備をしていたのですが、女心の分からない僕には難しくて...そこで幼馴染のC子にアドバイスをもらっていたのです」
「ははぁ、その現場を見られて二人が付き合ってると誤解されたと...」
「A子、胸にはコンプレックスがあったから...コムネスキーも本当は私が好きなのだと勘違いしていたようで、何べんも相談されました」
C子が事情を説明する。
「まあ、A子さんの気持ちは分からないでもないよね...」
オトメはA子に同情していた。
「僕は、A子のお淑やかな胸が大好きだったのに...どうして...」
「コムネスキーは『全国ちっぱい協会』の理事もしているものね」
C子が言う。
「そ、そんな協会が...えっ!もしかしてそこでは私、モテモテ?」
オトメが期待に胸を膨らませる。
「いいえ。私たちは『小さい』胸が好きなのです。『無い』胸は興味の対象外です」
「殺す!」
オトメとコムネスキーは出発前からギスギスした間柄になってしまった。

・・・

「わぁ、魔物だらけね...」
オトメとコムネスキーは村長の張った結界の内側に来ていた。
結界を通り抜けるとき、オトメは僅かな抵抗感を感じた。
コムネスキーは全く感じないそうだ。
オトメは自分が女であることを一応、実感することができた。
二人は無言で歩いていく、徐々に魔物の数が多くなり、ついに密集しすぎて進めなくなってしまった。
「この向こうにA子がいます...お~~い!A子!助けにきたぞ!」
コムネスキーは大声をあげる。しかし、
「来ないで!どうせ、私の胸はぺちゃんこよ!あなたもC子みたいな大きな胸が好きなんでしょう!」
A子の声が聞こえる。すると、その瞬間、魔物の向こうから黒い靄のようなものが立ち上がり、それは魔物へと姿を変え、地上に降り立った。
オトメは『冒険者検定』の教科書に書いてあった一節を思い出していた。
(『魔物は恵まれなかった女性の大きな胸に対する嫉妬から生まれる』...まさか本当に!)
「君の胸はぺちゃんこなんかじゃない!ちゃんと膨らみがある。ここにいるモノホンの...」
「ドカッ!」
オトメの蹴りがコムネスキーに決まった。
「私はここで死ぬわ!あなたはC子と幸せになって!」
また、黒い靄が生まれ魔物になる。
「誤解だ!僕とC子はただの幼馴染。僕が愛しているのは君だけだ!」
そう言って、コムネスキーがバッグから何かを出すと、A子目がけて投げる。
「カラン...ふぁさっ...」
固い金属質のものとやわらかい何かが落ちる音がする。
「これは...」
「僕の気持ちだ!受け取ってくれ!」
「指輪...それにこの花束は...」
「そうだ!すみれだ!」
「...花言葉は...謙虚...」
「そう!僕は君の謙虚な人柄と胸が大好きなんだ!お願いだ!僕と結婚してくれ~~~!!」
大声が辺りにこだました...
(これってプロポーズの言葉としてはどうなの?いいの?それで?)
オトメはハラハラしながらA子の言葉を待った。
「まさか、C子と何かしていたのはこれの準備の為に...私、バカだった。自分の胸の小ささを嘆いて、C子に嫉妬して...あなたの気持ちをちゃんと考えてなかった!...こんな私でいいの?私と本当に結婚してくれるの?」
「当たり前だ!一生、君とその小さな胸を愛し抜くと誓う!」
(だから、それでいいんか~~~い!!)
オトメは口には出せない思いを心の中で叫んでいた。
「ありがとう。私、あなたと幸せになる!私をもらって!この小さな胸を愛して!」
(ま、まあ、二人が幸せならいいけど...どうしてどいつもこいつも胸、胸、胸、胸!しかもAで小さいだと!なめとんのか!)
今度はオトメの体から黒い靄が立ち上り、魔物になった...
「ああ、A子!君の姿が見たい!」
「私もよ!コムネスキー!あなたの胸に飛び込ませて!」
「仕方ないなぁ~!ちょっと待ってて!」
オトメはバースト・ボールで辺りの魔物を一掃した。
「A子!!」
「コムネスキー!!」
しっかりと抱き合う二人を見て、オトメのささくれた心は浄化されたようだった。
(まあ、いっか!幸せな人を見るのっていいよね!)

しばらく後、二人は名残惜しそうに離れた後、オトメにお礼を言う。
「いや、お恥ずかしい所をお見せしました。せっかく、助けてくれたというのにお礼もせずに...本当にありがとうございました!胸の無い人!」
「あなたがコムネスキーを私の元へ...本当にありがとうございます!それにあなたを見ていると何故か安心できます。私よりも...いえ、気にしないでください」
「いやぁ、本当に失礼なカップルだなぁ...お幸せにね!」
オトメの言葉にはバラのように棘が絡みついていた。額には青筋も浮かんでいる。
「ありがとうございます。あなたにまで祝福の言葉をもらえるなんて...」
「私たちって幸せものよね!」
「うん、空気が読めないって幸せよね!」
こうして三人は村へと戻っていった。
二人の心は青空のように晴れ、もう一人の心は黒雲のようにどんよりしていた。

やがて、皆の姿が見えてくる。
「A子!」
C子が駆け寄ってくる。
「C子!ごめんなさい、私...」
A子が駆け寄ろうとするが、見えない壁に弾かれた。
「あぁ!!」
「大丈夫か?A子!」
コムネスキーが心配をする。
「今のままではA子は結界を通り抜けられぬ。結界を一度解く。合図をしたらこちらへ走ってくるのじゃ」
村長が結界の外で待ち構えていた。
「二人とも準備はいいか!魔物どもがお主らの胸を狙い、押し寄せてくるぞ!」
村長がマリアとグレースの方に顔を向け、発破をかける。
「もちろんです!オトメさんが仕事をやり遂げたのです!私だって負けてはいられません!」
「任せてくれ!これだけの数の魔物の相手は初めてだ!腕が鳴る!」
今、この村で最も大きな胸を持つのはマリア。そしてその次はグレースだ。
次のC子はCカップ。おそらく、魔物たちはマリアとグレースに狙いを定めてくるだろう。
二人は覚悟を決め、魔物を睨みつけている。
「待って!私も闘う!」
オトメが結界から飛び出し、マリアとグレースの元に来る。
「オトメさん!」
「オトメ!」
二人がうれしそうな顔で迎える。すると、
「あぁぁ~~~~~~!!!」
オトメがバースト・ボールを生み出した。
これで、この一帯の魔物は残らずここに引き付けられるだろう。
「では三秒後に、結界を解除する。張りなおすまでには一分くらい必要じゃ。それまで何とか持ちこたえるのじゃ!ではいくぞ!3!2!1!」
こうして、百匹を優に超える魔物とオトメたちとの壮絶な闘いが始まろうとしていた。
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