バスト・バースト!

世々良木夜風

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Burst26. オテンバ姫の冒険(中編)

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「そこの皆さま、なかなかファッションセンスがおありのようですね。私、ニホンノ帝国の珍しい服を持ってきています。見ていかれてはいかがですか?」
ユメミルとオテンバがトナリノの街を歩いていると、美しい女の子から声を掛けられた。
「やっぱり、分かっちゃう?見る人が見ると分かるのよねぇ...どんな服を売ってるの?」
オテンバが満更でもない顔で、興味深げに商品を覗く。
「『キモノ』と呼ばれる服で、すっぽり体を覆うものではなくて、前で重ねて帯で締めるのです。洋服の上に羽織ってもおしゃれかもしれません」
「へぇ~~、変わってるわね!あなたが着てるのもキモノ?」
「そうです。慣れるとなかなか良いものですよ!」
「きれいな色ねぇ~~」
オテンバがいろいろ物色していると、ユメミルが突然、爆弾発言を繰り出した。
「そこの君!なんてきれいなんだ!私と結婚してくれないか!!」
「えっっ!!」
「え~~~~~!!」
驚く二人。
「そ、そんなこといきなり言われましても...」
赤くなり戸惑う女の子。
「もちろん、返事は後でいい。しばらく私たちと行動を共にしよう!...この服は...さっさと売ってしまってお金に換えようじゃないか!お金の管理は私がしてあげよう!」
「あなたねぇ...」
オテンバはユメミルの魂胆に気づいたようだ。
しかし、女の子は...
「分かりました...ただ、儲けを出さなくてはいけないので、たたき売りはできません。数日、この街で商売をした後、荷物と一緒にご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?ご迷惑はおかけしません」
「しかし、荷車を引きながらでは邪魔ではないか?」
「いえ、これくらいなら走りながらでも引けます!体は鍛えていますので!」
その女の子が袖をまくる。女性らしい曲線のある白く細い腕だが、引き締まっており、筋肉がついているのが分かる。
「そ、そうか...まあ、結局お金になるのならいいかな...」
「はい!きっと高く売って見せます!」
「うん。じゃあ、私たちも数日、この街に滞在することにしよう」
「毎日、会いに来てくださいね...」
女の子が控えめに言う。
「う、うん...考えておこう...」
こうしてユメミルとオテンバは数日、トナリノの街に滞在することになった。

・・・

翌日、ユメミルとオテンバが女の子の様子を見に行くと、昨日と同じようにキモノを販売していた。
「どうだ?売れてるか?」
ユメミルが声をかけると、
「はい。物珍しさからかそこそこ...あの...昨日は突然の事で名前も伺っておりませんでしたが、教えていただいてもよろしいでしょうか?」
やはり、控えめに言う。大人しい子のようだ。
「ああ、私は『ユメミル』。冒険者をしていて各地を旅している」
「私は『オテンバ』よ。同じく冒険者でユメミルと一緒に旅をしているわ!」
「『ユメミル』様に...『オテンバ』さん...私は『オトナシ・サユリ』。『サユリ』と下の名前でお呼びください」
「『サユリ』か。よい名だ」
「なんで私は『様』づけじゃないのよ!」
オテンバ姫はご立腹のようだ。
「もしくは...『ハニー』でも構いません。ユメミル様のことは『ダーリン』とお呼びしても?」
「あなた、どこの国の人よ...」
「あ、ああ。好きに呼んでくれサユ...」
「ハニーです!」
「えっ、ああ...」
「ハニーです!」
声が一段と低くなり、凄みを感じさせる。こういう声も出せたようだ。
「...よろしく頼む。ハニー...」
「キャッ!ダーリンたら!まだ、結婚のお申し込みを受けたわけじゃないのですよ!」
頬を染めながら言う、サユリ。
(なら、サユリでいいじゃねぇか...)
そんな事を思う、ユメミルだった。

「サ、サユリはニホンノ帝国から来たの?どうしてわざわざ海を渡ってここまで?」
オテンバは話題を変えることにした。
「はい。私、ニホンノ帝国の呉服商...あっ洋服屋さんと思っていただければ...の娘なのですが、販路を広げようと、ここトナリノ王国まで試し売りに来たのです」
「それじゃ、国では親御さんが待っているのでは?」
「はい。ですが長い旅になると言っておりますし、将来の旦那様を見つけたわけですから、どこまでもダーリンについていきます!」
「そ、そう...あまり期待しすぎると本当の事を知った時のショックが...いいえ、なんでもないわ!ちなみにユメミルが女性なのは知ってるわよね?」
「もちろんです!私、ダーリンみたいな胸の無い女性が好みだったみたいです。求婚されて初めて気づきました!」
「てめぇ、ケンカ売って...いいや、なんでもない。それは光栄だな」
「ダーリンは胸の大きな女性は好きですか?」
サユリが恥ずかしそうに聞いてくる。
「私はCカップくらいがいいかな」
空気の読めないユメミルは相手ではなく、自分の理想のバストサイズを答える。
「そ、そんな...」
サユリは落ち込んでしまった。
見ればサユリの胸はオテンバよりも大きい。おそらくEカップだろう。
「大丈夫よ!私たちは『オーパイ』という、胸の大きさを変えられる街を目指してるの!あなたもそこで変えてもらえば...」
オテンバはつい、フォローをしてしまい、オーパイの名前を出してしまう。
「こらっ!」
ユメミルは怒るが、サユリは目を輝かせて、
「そんなことが出来るのですか!私、ダーリンにどこまでもついていきます!!」
力強く宣言するのだった。

・・・

数日後の夜、
「ユメミル、どうするの?サユリ連れてくの?」
明日はサユリと出発すると約束した日だ。いつもの場所まで迎えに行くことになっている。
「そんな訳ねぇだろ!早朝にさっさととんずらだ!売上金を奪えなかったのは残念だが、あんなのに構ってられるか!」
「悪い女ね。まあ、そっちの方がサユリにとってもいいか...本性を知ったら、あなたを道連れに自殺しかねないわよ...」
「冗談に聞こえねぇなぁ...ますます、関わっちゃいけねぇ気がするぜ!明日は早いぜ!早く寝ろ!」
「はいはい」

・・・

そして、翌日の朝、街の門の前では...
「なんでお前がいるんだ...」
「もう!ダーリンの考えてることなんてお見通しですよ!私を試したのですね!きっとここに来ると思っていました!」
「もう逃げられないわね...観念しなさい...」
こうして三人は一緒に旅をすることになったのだった。

そして道中、
「せやっ!」
掛け声一閃、魔物が消える。
「あ~~ん!ダーリン!恐かったです~~」
サユリがユメミルに抱きつく。
「そ、そうか...あたいはお前がこわ...いや、なんでもない...」
魔物を倒したのはサユリだ。
「へぇ、変わった武器ね。それ何て言うの?」
「これはニホンノ帝国の武器で『ナギナタ』といいます」
「リーチもあって、隣接にも対応できる。使いこなすのは大変そうだけど、強そうな武器ね!」
「それほどでも...」
「Eカップでしょ?それで近接戦闘の達人で、武器もいい!もう最強クラスなんじゃない?」
「そ、そんなこと...」
「冒険者検定は?やっぱり一級?」
「はい。一応...」
「じゃあ、私たちのパーティ、全員一級持ちね!すごいんじゃない!」
「まあ、パーティ名は何というのですか?」
「そういや、作ってなかったな...」
「そうね。じゃあ、次の道の駅で作りましょう!みんなで名前考えとくこと!」
「はい!」

次の道の駅で登録したパーティ名は...
「『ハチャメチャ・ヤクザズ』!いい名前ね!」
「本当に!ダーリンの人柄がそのまま出ています!気に入りました!」
「お前ら、本気か...」
一番のヤクザだけがこの名前を気に入っていなかった...

・・・

「...濃いメンバーだね...こっちを物語にした方が面白かったんじゃない...」
オトメがつぶやく。
「しかし、このサユリという人物の積極性!参考になります!私も...ダ、ダ、ダーリ...やっぱり言えない!」
「マリアちゃん、相変わらず面白いね!」
「私はオトメの方が面白いと思うがな...」
「オトメさんはユメミルさんとサユリさんの物語について、思うところはないのですか?」
マリアが寂しそうに聞くと、
「私はユメミルさんとは違うよ!嘘で『結婚する』なんて言わない!」
「オトメさん!」
マリアの顔が輝く。
「だから安心して!マリアちゃん!」(そんな嘘なんかつかないから!)
「はい...オトメさん...」(やはり嘘ではなかったのですね!)
微笑み合う二人。
「感動的じゃのう...」
涙ぐむアネノ姫。しかし、
「う~~~ん、二人の認識にずれがある気がするのはなぜだろう...」
鋭いグレースだけが本質を見抜いていた。
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