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Burst31. シージェラとジェンヌの和解
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「待って!ジェンヌ!」
立ち去ろうとするジェンヌをシージェラが止める。
「止めてくれるな、シージェラ!せめて君の失望した顔だけは見せないでくれ...」
ジェンヌの声は震えていた。ずっと自分の本当の気持ちを言いたかったのだろう。しかし、そうするとこの結果になることは分かっていた。そんな気持ちがありありと伝わってくる。
「違うの!ジェンヌ!あなたの凛々しい姿はとても素敵よ!でも...可愛い服を見たい、着たいという気持ちも分かるの。だって同じ女性だから...」
「えっ!」
ジェンヌは思わぬ言葉に思わず振り返る。
「でも、それならどうしてもっと早くに言ってくれなかったの?そしたらもっと可愛い服を着ていって、あなたに見てもらうことができたのに...」
「し、しかし、あまりじろじろ見たら嫌われるのではないかと...」
「ジェンヌに見られて嫌な場所はないわ!例え服でも、下着でも...下着の下でも...」
シージェラの顔が赤くなる。
「し、しかし結婚もしていないのに...」
「して...くれないの?」
シージェラが寂しそうな顔をする。
「もちろん、近いうちにプロポーズするつもりだった。しかし、僕の性癖を知ってもらってからと思っていたのだ...そして今までその勇気が出なかった...」
「じゃあ、もう躊躇する必要はないわね!お願い、今、この場で言ってくれる?」
「しかし、指輪も気の利いた言葉も用意していない...」
「そんなの後でいいわ!お願い、今、言って欲しいの...」
「分かった...シージェラ!君が好きだ!僕と結婚して欲しい!」
「うれしい!私、一生あなたについていきます!」
「ありがとう。どうしてもっと早く言わなかったんだろう...そしたら君を傷つけることもなかったのに...」
「そして、トナリノ王国への船が止まることもね!」
オトメが相変わらず余計なことを言うが、無視して話は進む。
「じゃあ、私のドレスルームに案内するわ!可愛い服がたくさんあるのよ!好きな服を着てあげるし、ジェンヌも好きな服を着てもいいわよ!」
「本当にいいのかい...僕なんかの為に...」
「ジェンヌだからいいの!服だけじゃなく、下着でもいいわよ。好きなのつけてあげるし、ジェンヌもつけてみて!一緒に見せっこしましょ!」
シージェラは平然と言うが、恥ずかしさは隠しきれないようだ。頬が赤くなっている。
「そ、そんなことをしたら君がお嫁に行けなくなってしまう!」
ジェンヌはシージェラの大胆な発言に慌てるが、
「あら、もう、あなたのところに行くことになっているでしょう?先か後かの違いよ!...だから...何してもいいわよ...結婚したもの同士がすることでも...」
シージェラが恥ずかしさのあまり、俯いてしまう。
「シージェラ...」
「行きましょ...今夜は...泊まっていってね...」
二人は仲良く手を取って、歩き始めた。
「あの...お楽しみの所、誠に失礼ですが、その前に船の出航停止を解除していただきたいんですけど...」
そこへマリアが何とか一声、かける。かなり申し訳なさそうな顔をしていた。
「ああ、そうね。トナリノ王国への船は自由に出していいわよ。後はよろしくね!」
そう側近に言い渡すと、二人は微笑み合いながら部屋を出て行ってしまった。
「何だったんだ?あれは?」
グレースが口にする。恋愛に疎いグレースでも顔が赤くなってしまっていた。
「全く!人前で言う事じゃないよね!恥ずかしくないのかな!...まあ、二人が楽しいのなら私から言うことはないけど...」
オトメがそう言うと、グレースは、
「オトメも似たようなものじゃないか!マリア師匠といちゃついているのを見ると、私まで恥ずかしくなってくる...」
「あんなのと同じにしないで!私とマリアちゃんはもっと、純粋な...ねっ!マリアちゃん!」
「はい。そうです!私たちはあのようなふしだらなことは...しかし、結婚の約束をしていたら、夫婦がするようなこともしていいのでしょうか?」
「そ、そうだね...私もそこは気になってたんだ...なんか『先か後かの違い』らしいし...」
「オトメさんもですか...私もそれは随分悩みました...お二人の話を聞くに問題ないということでしょうか?」
「そ、そういうふうに取れるね。じゃあ、遠慮はいらないと...」
「おい、お前たち!私しかいないのならともかく、人前でそのような話は...」
グレースが赤くなりながら話に割り込んできた。
見ると、周りの人たちが気まずそうにしている。
みるみる赤くなるオトメとマリア。すると、
「そ、そうですね!船の出航許可も出ましたし、そろそろ出発しましょうか!」
マリアがわざとらしく声をあげた。
「そ、そうだね!こんなところで油売ってる暇はないよね!」
オトメもそれに乗っかる。
「全く、この様子じゃ私も同類だと思われ...」
文句をいうグレースを引きずって、オトメとマリアは、シージェラの屋敷を出て行くのだった。
・・・
「どうだ?船は楽しいか?...ってどうしたんだ?二人とも黙ってしまって」
オトメたちはトナリノ領行きの船に乗っていた。
さぞかしオトメははしゃいでいるだろうと思い、グレースが声を掛けると、オトメとマリアは何か考え込んでいるようであった。
(よく考えてみたら私たちって婚約してるんだっけ?)
(何となくそう思っていましたけど、良く思い出してみてもその記憶が見つかりません...)
(もしかして、私の思い込み?!)
(し、しかし、そうだとしたらこの『いかにも結婚するのが当たり前です』みたいな空気の説明がつきません)
(もしかして、私がプロポーズの事を忘れてしまっている?!)
(そ、それはまずいです。そんなことがオトメさんに知られたら...)
(マリアちゃんに知られたら...)
((間違いなく嫌われる!!!))
(な、何とか確かめないと!)
(ちょっと探りを入れてみましょうか?)
「マ、マリアちゃん!」「オ、オトメさん!」
二人が同時に名前を呼ぶ。
「な、何?マリアちゃんからどうぞ!」
「いえ、オトメさんから...」
「「・・・」」
「「あ、あの...」」
「「・・・」」
数回、これを繰り返したのち、マリアがついに話を切り出した。
「オ、オトメさんはあの日のことを覚えていますでしょうか?」
「あ、あの日の事ね!もちろん!忘れるわけがないよ!」
((や、やっぱり、私が忘れて...))
「た、確かクリスマスのことでしたっけ...」
「そうそう。雪がすごく降ってて...」
(...オトメが旅立ったのは春先じゃなかったっけ?何でクリスマスの記憶があるんだ??)
グレースは二人の会話を聞きながら思っていた。
「寒かったので二人で温め合っていたんでしたね」
「うん...あの日のマリアちゃん、あったかかった...」
(...なんで話が合うんだ?大体、それ妄想じゃないのか?共同妄想??...この二人なら有り得る...)
「そしたら、つい、強くオトメさんを抱きしめてしまって...」
「うん...マリアちゃんの大事な胸に顔をうずめてしまったんだ...」
(好きだな...胸の話...)
「私がオトメさんの目を見るとその目は潤んでいて、オトメさんの口から出たのは...」
「そう、可愛いマリアちゃんの顔を見て、思わず言ってしまったセリフは...」
「忘れもしません...」
「私も一字一句忘れたことなんかないよ!」
「それは...」
「うん、それは...」
(まさか今考えてるんじゃないだろうな...)
「いえ、止めておきましょう。口にすると陳腐になってしまいます」
「そうだね。私も同感だよ!」
(逃げたな...)
「私はうれしさのあまり、オトメさんの胸に顔をうずめてしまったのでしたね...」
「うん!あの時のマリアちゃんも可愛かったよ!」
(いや、うずめる胸無いだろう!!)
「懐かしい話をしてしまいましたね...でも私が確かめたかったのはただ一つ!私たちは約束をしているということ!」
「そう!絶対に破っちゃいけない約束!...それを確認し合えて良かった...」
「これからも時々、確かめ合いましょうね!」
「うん!それまでに考えておかないと...」
「ふふふ!」
「へへへ!」
(まさか、プロポーズの言葉を今から考えるんじゃないだろうな?既に二人の妄想の間で成立してしまっているプロポーズの...)
グレースは慣れているとは思っていたが、二人の倒錯ぶりがまさかこの次元にまで及んでいるとは考えてもいなかった。
・・・
その夜、
(マリアちゃんがきっと待ってる。早くベッドに行かないと...)
オトメは今日こそお互いの愛を確かめようとしていた。
布団を捲り、ベッドから出ようとした時、ふと気がついたことがあった。
(ちょっと待って!『約束』って本当に『結婚』の約束?万が一、違っていたら...)
一方、マリアはと言うと、
(今日こそ、オトメさんと一緒になる時!...待たせてはいけません。勇気を出さないと!)
そして布団を捲ろうとしてふと考える。
(私...オトメさんと何を約束したのでしょう...あの雰囲気では『結婚』で十中八九、間違いありませんが、万一ということもあります!)
((その場合、私はふしだらな女として軽蔑の目で見られてしまうのでは!!...))
二人は急に恐くなってしまった。
(い、急ぐことはないよね!どうせ、この旅が終わったら結婚するんだし...)
(オーパイに着いた後に、さりげなくオトメさんについていって、さりげなく結婚して、さりげなく二人きりの夜を楽しめば...)
((それまでは夢で我慢しよう!!))
二人は安らかな眠りにつくのであった。
(結局、今夜も何もなしか...)
二人が眠りにつく気配を感じながらグレースは思っていた。
(さて、私も寝るか!)
すると、二人の寝言が聞こえてきた。
「ダメです!オトメさん!そこは...」
「だって私たち結婚するんだよ!ちょっと早いけど、マリアちゃんに気持ちよくなって欲しい...」
「ダ、ダメ...んんっ...恥ずかしい...」
「マリアちゃんの声、可愛い!マリアちゃんの顔、可愛い!私、おかしくなっちゃいそう...」
「おかしくなりそうなのは私です...変な声出しても笑わないでくださいね...」
「そんなことしないよ!もっとおかしくしてあげる!もっと可愛い声を聞かせて!もっと可愛い顔を見せて!」
「ああっ、オトメさん...」
「マリアちゃん!」
(こいつらおんなじ夢を見てる?そういえばプロポーズも同じ妄想してたな...というか二人に間では現実になっているのかもな...そして、今、夢で大事なものを捧げ合ってる?...もうついていけそうにない...)
グレースは関わり合いになりたくないと思いながらも、寝言に聞き耳を立ててしまうのだった。
・・・
「おはよう!グレースちゃん、眠れなかったの?目に隈ができてるよ!」
「おはようございます。何か良い夢を見た気がします。ぐっすり眠れました」
「私もだよ!すごく楽しい夢を見てた!グレースちゃんも今夜はぐっすり寝れるといいね!」
「お前らさえ、大人しくしてればな...」
「「???」」
常人はいつの世も苦労するものである。
立ち去ろうとするジェンヌをシージェラが止める。
「止めてくれるな、シージェラ!せめて君の失望した顔だけは見せないでくれ...」
ジェンヌの声は震えていた。ずっと自分の本当の気持ちを言いたかったのだろう。しかし、そうするとこの結果になることは分かっていた。そんな気持ちがありありと伝わってくる。
「違うの!ジェンヌ!あなたの凛々しい姿はとても素敵よ!でも...可愛い服を見たい、着たいという気持ちも分かるの。だって同じ女性だから...」
「えっ!」
ジェンヌは思わぬ言葉に思わず振り返る。
「でも、それならどうしてもっと早くに言ってくれなかったの?そしたらもっと可愛い服を着ていって、あなたに見てもらうことができたのに...」
「し、しかし、あまりじろじろ見たら嫌われるのではないかと...」
「ジェンヌに見られて嫌な場所はないわ!例え服でも、下着でも...下着の下でも...」
シージェラの顔が赤くなる。
「し、しかし結婚もしていないのに...」
「して...くれないの?」
シージェラが寂しそうな顔をする。
「もちろん、近いうちにプロポーズするつもりだった。しかし、僕の性癖を知ってもらってからと思っていたのだ...そして今までその勇気が出なかった...」
「じゃあ、もう躊躇する必要はないわね!お願い、今、この場で言ってくれる?」
「しかし、指輪も気の利いた言葉も用意していない...」
「そんなの後でいいわ!お願い、今、言って欲しいの...」
「分かった...シージェラ!君が好きだ!僕と結婚して欲しい!」
「うれしい!私、一生あなたについていきます!」
「ありがとう。どうしてもっと早く言わなかったんだろう...そしたら君を傷つけることもなかったのに...」
「そして、トナリノ王国への船が止まることもね!」
オトメが相変わらず余計なことを言うが、無視して話は進む。
「じゃあ、私のドレスルームに案内するわ!可愛い服がたくさんあるのよ!好きな服を着てあげるし、ジェンヌも好きな服を着てもいいわよ!」
「本当にいいのかい...僕なんかの為に...」
「ジェンヌだからいいの!服だけじゃなく、下着でもいいわよ。好きなのつけてあげるし、ジェンヌもつけてみて!一緒に見せっこしましょ!」
シージェラは平然と言うが、恥ずかしさは隠しきれないようだ。頬が赤くなっている。
「そ、そんなことをしたら君がお嫁に行けなくなってしまう!」
ジェンヌはシージェラの大胆な発言に慌てるが、
「あら、もう、あなたのところに行くことになっているでしょう?先か後かの違いよ!...だから...何してもいいわよ...結婚したもの同士がすることでも...」
シージェラが恥ずかしさのあまり、俯いてしまう。
「シージェラ...」
「行きましょ...今夜は...泊まっていってね...」
二人は仲良く手を取って、歩き始めた。
「あの...お楽しみの所、誠に失礼ですが、その前に船の出航停止を解除していただきたいんですけど...」
そこへマリアが何とか一声、かける。かなり申し訳なさそうな顔をしていた。
「ああ、そうね。トナリノ王国への船は自由に出していいわよ。後はよろしくね!」
そう側近に言い渡すと、二人は微笑み合いながら部屋を出て行ってしまった。
「何だったんだ?あれは?」
グレースが口にする。恋愛に疎いグレースでも顔が赤くなってしまっていた。
「全く!人前で言う事じゃないよね!恥ずかしくないのかな!...まあ、二人が楽しいのなら私から言うことはないけど...」
オトメがそう言うと、グレースは、
「オトメも似たようなものじゃないか!マリア師匠といちゃついているのを見ると、私まで恥ずかしくなってくる...」
「あんなのと同じにしないで!私とマリアちゃんはもっと、純粋な...ねっ!マリアちゃん!」
「はい。そうです!私たちはあのようなふしだらなことは...しかし、結婚の約束をしていたら、夫婦がするようなこともしていいのでしょうか?」
「そ、そうだね...私もそこは気になってたんだ...なんか『先か後かの違い』らしいし...」
「オトメさんもですか...私もそれは随分悩みました...お二人の話を聞くに問題ないということでしょうか?」
「そ、そういうふうに取れるね。じゃあ、遠慮はいらないと...」
「おい、お前たち!私しかいないのならともかく、人前でそのような話は...」
グレースが赤くなりながら話に割り込んできた。
見ると、周りの人たちが気まずそうにしている。
みるみる赤くなるオトメとマリア。すると、
「そ、そうですね!船の出航許可も出ましたし、そろそろ出発しましょうか!」
マリアがわざとらしく声をあげた。
「そ、そうだね!こんなところで油売ってる暇はないよね!」
オトメもそれに乗っかる。
「全く、この様子じゃ私も同類だと思われ...」
文句をいうグレースを引きずって、オトメとマリアは、シージェラの屋敷を出て行くのだった。
・・・
「どうだ?船は楽しいか?...ってどうしたんだ?二人とも黙ってしまって」
オトメたちはトナリノ領行きの船に乗っていた。
さぞかしオトメははしゃいでいるだろうと思い、グレースが声を掛けると、オトメとマリアは何か考え込んでいるようであった。
(よく考えてみたら私たちって婚約してるんだっけ?)
(何となくそう思っていましたけど、良く思い出してみてもその記憶が見つかりません...)
(もしかして、私の思い込み?!)
(し、しかし、そうだとしたらこの『いかにも結婚するのが当たり前です』みたいな空気の説明がつきません)
(もしかして、私がプロポーズの事を忘れてしまっている?!)
(そ、それはまずいです。そんなことがオトメさんに知られたら...)
(マリアちゃんに知られたら...)
((間違いなく嫌われる!!!))
(な、何とか確かめないと!)
(ちょっと探りを入れてみましょうか?)
「マ、マリアちゃん!」「オ、オトメさん!」
二人が同時に名前を呼ぶ。
「な、何?マリアちゃんからどうぞ!」
「いえ、オトメさんから...」
「「・・・」」
「「あ、あの...」」
「「・・・」」
数回、これを繰り返したのち、マリアがついに話を切り出した。
「オ、オトメさんはあの日のことを覚えていますでしょうか?」
「あ、あの日の事ね!もちろん!忘れるわけがないよ!」
((や、やっぱり、私が忘れて...))
「た、確かクリスマスのことでしたっけ...」
「そうそう。雪がすごく降ってて...」
(...オトメが旅立ったのは春先じゃなかったっけ?何でクリスマスの記憶があるんだ??)
グレースは二人の会話を聞きながら思っていた。
「寒かったので二人で温め合っていたんでしたね」
「うん...あの日のマリアちゃん、あったかかった...」
(...なんで話が合うんだ?大体、それ妄想じゃないのか?共同妄想??...この二人なら有り得る...)
「そしたら、つい、強くオトメさんを抱きしめてしまって...」
「うん...マリアちゃんの大事な胸に顔をうずめてしまったんだ...」
(好きだな...胸の話...)
「私がオトメさんの目を見るとその目は潤んでいて、オトメさんの口から出たのは...」
「そう、可愛いマリアちゃんの顔を見て、思わず言ってしまったセリフは...」
「忘れもしません...」
「私も一字一句忘れたことなんかないよ!」
「それは...」
「うん、それは...」
(まさか今考えてるんじゃないだろうな...)
「いえ、止めておきましょう。口にすると陳腐になってしまいます」
「そうだね。私も同感だよ!」
(逃げたな...)
「私はうれしさのあまり、オトメさんの胸に顔をうずめてしまったのでしたね...」
「うん!あの時のマリアちゃんも可愛かったよ!」
(いや、うずめる胸無いだろう!!)
「懐かしい話をしてしまいましたね...でも私が確かめたかったのはただ一つ!私たちは約束をしているということ!」
「そう!絶対に破っちゃいけない約束!...それを確認し合えて良かった...」
「これからも時々、確かめ合いましょうね!」
「うん!それまでに考えておかないと...」
「ふふふ!」
「へへへ!」
(まさか、プロポーズの言葉を今から考えるんじゃないだろうな?既に二人の妄想の間で成立してしまっているプロポーズの...)
グレースは慣れているとは思っていたが、二人の倒錯ぶりがまさかこの次元にまで及んでいるとは考えてもいなかった。
・・・
その夜、
(マリアちゃんがきっと待ってる。早くベッドに行かないと...)
オトメは今日こそお互いの愛を確かめようとしていた。
布団を捲り、ベッドから出ようとした時、ふと気がついたことがあった。
(ちょっと待って!『約束』って本当に『結婚』の約束?万が一、違っていたら...)
一方、マリアはと言うと、
(今日こそ、オトメさんと一緒になる時!...待たせてはいけません。勇気を出さないと!)
そして布団を捲ろうとしてふと考える。
(私...オトメさんと何を約束したのでしょう...あの雰囲気では『結婚』で十中八九、間違いありませんが、万一ということもあります!)
((その場合、私はふしだらな女として軽蔑の目で見られてしまうのでは!!...))
二人は急に恐くなってしまった。
(い、急ぐことはないよね!どうせ、この旅が終わったら結婚するんだし...)
(オーパイに着いた後に、さりげなくオトメさんについていって、さりげなく結婚して、さりげなく二人きりの夜を楽しめば...)
((それまでは夢で我慢しよう!!))
二人は安らかな眠りにつくのであった。
(結局、今夜も何もなしか...)
二人が眠りにつく気配を感じながらグレースは思っていた。
(さて、私も寝るか!)
すると、二人の寝言が聞こえてきた。
「ダメです!オトメさん!そこは...」
「だって私たち結婚するんだよ!ちょっと早いけど、マリアちゃんに気持ちよくなって欲しい...」
「ダ、ダメ...んんっ...恥ずかしい...」
「マリアちゃんの声、可愛い!マリアちゃんの顔、可愛い!私、おかしくなっちゃいそう...」
「おかしくなりそうなのは私です...変な声出しても笑わないでくださいね...」
「そんなことしないよ!もっとおかしくしてあげる!もっと可愛い声を聞かせて!もっと可愛い顔を見せて!」
「ああっ、オトメさん...」
「マリアちゃん!」
(こいつらおんなじ夢を見てる?そういえばプロポーズも同じ妄想してたな...というか二人に間では現実になっているのかもな...そして、今、夢で大事なものを捧げ合ってる?...もうついていけそうにない...)
グレースは関わり合いになりたくないと思いながらも、寝言に聞き耳を立ててしまうのだった。
・・・
「おはよう!グレースちゃん、眠れなかったの?目に隈ができてるよ!」
「おはようございます。何か良い夢を見た気がします。ぐっすり眠れました」
「私もだよ!すごく楽しい夢を見てた!グレースちゃんも今夜はぐっすり寝れるといいね!」
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「「???」」
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