マコリン☆パニック!

世々良木夜風

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Panic 15. ポワンはどこ?

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「はぁ...はぁ...やっと終わった...」
マコリンが地面に倒れ込む。
(ポワン、見なかったけど、もうゴールしてるかしら?)
マコリンは辺りを見回すが、自分が一番だったようで、他に生徒はいない。

(ふう...)
しばらく経ち、息が落ち着いたマコリンは、先生に尋ねる。
「あの...ポワンはまだ着いてないでしょうか?私より先を行っていたと思うのですが...」
すると、先生の答えは意外なものだった。
「ポワン?誰のことですか?...それより、運動も成績も一番なのは立派です!この学校にいたければその調子で頑張りなさい!」
激励の中に、少しさげすんだニュアンスを感じたマコリンは、先生に噛みつく。
「なんなの、その言いぐさ!!...まあ、いいわ!もう一度、聞くわ!ポワンはどこ?」
マコリンはムッときたのか、先生に対して、ため口で反抗している。
先生といえど、星乃宮ほしのみや家の威光には、逆らえないことを知っているからだ。
「な、なんですか、その態度は!!身の程をわきまえなさい!!」
一瞬、驚いたような顔をした先生だったが、気を取り直すとマコリンを叱りつける。
それを聞いたマコリンは、
「なら、自分で捜すからいいです!先生に対し、申し訳ありませんでした!」
さすがに礼儀に反すると思ったのか、素直に謝る。すると先生は、
「どうしたのかしら?...普段は大人しいのに...」
ブツブツ言いながら、マコリンから離れていった。


やがて、授業が終わる。
みんな校舎内に戻っていくようだ。
(なんで?!ポワンが戻ってこないのに、みんなどうしてそんな平気な顔してるの?!)
そう思ったマコリンは、取り巻きの一人、細雪ささめに尋ねる。
「ねえ!ポワンはどうしたの?まだ戻ってきてないわよね?...それとも保健室に運ばれたとか?」
すると、細雪は驚いた顔をして、
「なんですの?マコリンの分際で、このわたくしに気安く話しかけないでくださる?あなたとは家柄が違うのです!...それにポワンって誰かしら?おかしなこと言わないでくださる?」
訝しげにそう言うと、スタスタと吹雪ふぶき氷柱つららとともに、校舎へと戻っていく。

「どうされましたの?細雪さん...貧乏人のマコリンが、何か言っていたようでしたけれど...」
「なんでもないですわ!『ポワン』とかわけの分からない人の名前を挙げて...」
「貧乏人同士の仲間じゃありませんの?そんなのわたくしたちとは関係ありませんのにね!」

3人は笑いながら、その場を去っていった。

「...なんか変ね...もしかして...」
何かに気づいた様子のマコリンは、みんなと一緒に校舎に入っていく。
そして、特別待遇の生徒のための専用部屋に着くと、
「やっぱり...」
マコリンの部屋はなかった。
一通り確かめると、教室へと戻る。
普通の生徒たちが着替えをしている。しかし、
(ちょ、ちょっと恥ずかしいわね...)
人前で肌をさらしたことのないマコリンは、大部屋での着替えに抵抗があった。
(お手洗いで...)
マコリンは教室で制服をとると、トイレへと向かうのだった。

☆彡彡彡

(なに?この服...可愛くない...)
着替えを終え、教室へと歩いていくマコリン。
しかしその服は、いつものきれいに整えられた、マイクロミニの制服ではない。
ところどころシワができ、一部、繕った跡もあった。
スカートも普通の長さで、膝が出ている程度だ。

(それに...)
マコリンは腕を持ち上げると、わきの下に顔をやる。
「うっ!」
思わず、顔をしかめてしまった。
(デオドラントもないなんて...恥ずかしくて人に近づけない!!)
マコリンは軽く頬を染めながら、教室に入っていった。

「あら、マコリン!『ポワン』は見つかったかしら?」
クラスメートに声をかけられる。
細雪たちではない。
普段、話すこともなかった普通の生徒だ。
しかもその言葉にはトゲが感じられた。
「うるさいわね!!私の勝手でしょ!!そんなこと言ってるヒマがあったら勉強でもしたら?いい大学はお金だけじゃ入れないわよ!」
ムッとしたマコリンは、激しい調子で返す。すると、
「な、何よ!マコリンのくせに!!」
そう言いながらも、バツが悪そうに、マコリンから目を離す生徒たちだった。

席に座ったマコリンは、周りを見渡す。
誰もマコリンのそばに寄ってこないし、目も合わない。
(どうやら、ここでは私は貧乏で、みんなにバカにされてるみたいね...)
冷静に現状を把握するマコリン。
そして、長距離走の途中で通った、黒い渦を思い出す。
(やっぱりあれは異世界への...でも誰が?ポワン?私が意地悪したから仕返ししたの?)
一度はそんなことが頭をよぎったが、
(ううん!ポワンはそんな子じゃない!!...だとしたら...事故?それとも悪意のある誰かが...)
気を取り直すと、原因を考える。
(って、そんなの分かるわけないじゃない!!...それより元の世界へ帰る方法を見つけないと!...でも、ポワンはいないし...)
そうはいっても、何も思いつくはずはないのだった。


その後、マコリンは生徒や、時には先生からも、心無い言葉を浴びせられた。
しかしその度に、強い調子で反論したのだった。
(別の世界とはいえ、私がバカにされるのは耐えられないわ!!...それにこの世界の私、優秀そうじゃない!成績枠で特別に、この学校に無償で入学が許可されたらしいし...)
マコリンはこの世界のマコリンを、誇りにさえ思っていた。
(これだけやりこめとけば、大人しくなるでしょ!...それよりうちに...ん?)
下校時刻になり、校門を出たところで、マコリンは重大な事実に気づく。
(どうやってうちに帰るの?)
コドランはもちろんいない。
しばらく待ったが、車でのお迎えもあるはずもなかった。

「あの!」
マコリンは数少ない、電車通学者に声をかける。
「なんですか?」
あまり家柄が良くないからか、マコリンのことをバカにしてはいないようだった。
「私、どうやって家に帰ったらいいの?」
「は?」
マコリンの問いに、その子は訝しげな目を向けるのだった。
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