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Panic 16. 頑張れマコリン!
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「ここが駅ね!」
マコリンが学校の最寄りの駅にたどり着く。
「結構、歩いたわね...まさか明日からも毎日...」
マコリンは憂鬱になる。
私立プリマドンナ女学院は小高い丘の上にあり、公共交通機関からは離れている。
今回は坂を下りるほうだったので良かったが、登校時には長い坂を上ることになる。
考えただけで気がめいりそうだった。
頭を横に数回振り、イヤな思考を吹き飛ばしたマコリンは、駅の様子を眺める。
「...人が多いわね...どこから集まってくるのかしら?」
マコリンは上流階級のため、人の密集した状態を経験したことがない。
人の溢れる駅は、入るのもためらわれた。しかし、
「いくわよ!」
気合を入れた声を出すと、思い切って駅に飛び込む。
「うわっ!」
マコリンは大勢の人が歩き回っている様に驚く。
しかも、人を避ける技術がないため、目の前の人の壁を、どうやって越えればいいのか分からない。
「くっ!くっ!前に進めない...」
しばらく、前に出ては後ろに戻されを繰り返していたが、やがて人の流れがあることに気づく。
「あっ!あの人たち、改札口に向かってる!一緒についていけば!」
マコリンは難なく、改札口までたどり着いた。
「ふふん!こんなものよ!」
誇らしげな顔をするマコリン。しかし、
<ガシャン!>
改札を通り抜けようとすると、邪魔するようにバーが出てくる。
「なにこれ~~~!!」
マコリンは途方に暮れてしまう。
<チッ!>
舌打ちが聞こえる。
後ろの人たちはイラついているようだ。
避けて隣の改札に向かう人もいた。
「くっ!くっ!」
<ガシャン!ガシャン!>
しばらくバーと闘っていると、
「ICカードは持ってないのかい?」
親切なおばあさんが、声をかけてくれた。
「カード?」
マコリンがその言葉に隣の改札を窺うと、人々はカードをタッチして通り過ぎている。
「カード、カード...」
マコリンはポケットの中から、それらしいカードを見つけ出した。
「こうしてと...」
マコリンは見た通りに、マークのある場所にカードを当ててみる。
<ピッ!>
音が鳴った。
マコリンの目が輝く。
(きっと、これで...)
改札を無事、通り抜けることができた。
「ありがとう!」
マコリンはおばあさんに礼を言う。
「ほほほ!私も昔、戸惑っていた時に、教えてくれた親切なお嬢ちゃんがいてね!...あなたにそっくりだったからつい...だから気にしなくていいわよ!」
おばあさんはそう答えると、笑って去っていった。
(もしかして、それってこっちの世界の!)
心が温かくなったマコリンは、喜び勇んで口にする。
「さあ、これで電車に乗れるわ!家に帰るには...」
ハタと言葉が止まった。
「どうしたらいいの~~~~~?!」
マコリンは乗る電車も、降りる駅も知らなかった。
「と、とりあえずこれに...」
ちょうどホームに着いた電車に乗り込むマコリン。
「おお!マコリンじゃないか!」
そこで出会ったのは、
「お父様!!」
マコリンのお父様だった。
髪形と端正な風貌は変わらないが、着ている服はみすぼらしい。
くたびれたグレーのスーツが、社会的な地位の低さを表していた。
「マコリンも今、帰りかい?」
お父様が聞いてくる。
「はい!お父様も同じ電車だったなんて...」
(一緒についていけば、家に帰れる!)
マコリンがホッとしながら答えると、
「どうしたんだい?そんな改まった話し方をして...」
お父様はマコリンの口調を不審に思ったようだ。不思議そうな顔をしている。
「たまには良いではありませんか!」
マコリンが言うと、
「ははは!学校の影響かな?育ちのいいお嬢様ばかりでマコリンも大変だろう?」
お父様は気にした様子もなく、逆にマコリンを心配してくる。
(大雑把な性格で良かった!)
マコリンが胸をなでおろしていると、
「はあ、お父さんが定職につければ、マコリンにも苦労はかけないのにねぇ...」
お父様は悲しげに目を伏せた。
「お父様は何をしておられるのでしたかしら?」
マコリンがさりげなく聞くと、
「ん?出来高払いのパートの営業だが...最近はどこも渋くてね...なかなか契約がとれないんだ...」
お父様がため息をつく。
「そ、そうでしたわね!ご苦労様です!」
マコリンが一礼すると、
「ははは!今日は本当に優しいね!いつもは『お父さんがこんなだから!』とか言って、近くに寄ってもくれないのに...」
お父様はうれしそうに微笑みかける。
(そっか...自分が学校であんな目にあってるのはお父様のせいだと思って...貧乏人は大変なのね!)
そう思ったマコリンだったが、
(でも...こうやって一緒に帰れるなんて...何か新鮮ね!)
いつも忙しそうで、なかなかお父様との時間がとれないマコリンにとって、これは貴重な体験だった。
「私がいる間は優しくしてさしあげますわ!」
ちょっとうれしくなったマコリンが、お父様に微笑み返すと、
「...どういう意味だい?」
首を傾げるお父様。
「ふふふ!そのうち元に戻りますわよ!今のうちにお話してくださる?」
マコリンがそう続けると、
「...本当に変な子だね!...で、学校じゃどうなんだい?いじめられてないかい?」
お父様はずっと聞きたかったのか、学校での様子を尋ねてくる。
「大丈夫ですわ!私がいる間に、言い返せるだけ言い返してあげますから!」
「ははは!頼もしいね!」
二人はそんな会話をしながら家に帰っていった。
☆彡彡彡
そして、家に着いたマコリンは、
「これが...家?」
ボロボロの狭い家に呆然となってしまう。
窓があちこち割れ、直すお金がないのか、ガムテープが貼ってある。
屋根には雨漏りがするのか、ブルーシートが被せられている箇所があった。
「ははは!でもこんなのでも、持ち家があって良かったよ!賃貸だったら、とてもじゃないが生活できない!」
お父様はそう言うと、建て付けの悪いドアを、ガタガタいわせながら開けて、中へと入っていく。
「母さん、ただいま~~~~!マコリンも一緒だよ~~~!」
「あら、珍しいわね!」
中から聞き覚えのある女性の声が聞こえた。
(お母様!!)
気品が高くて話しづらい、向こうのお母様を思い出し、少し緊張しながら家に入っていくマコリンだった。
マコリンが学校の最寄りの駅にたどり着く。
「結構、歩いたわね...まさか明日からも毎日...」
マコリンは憂鬱になる。
私立プリマドンナ女学院は小高い丘の上にあり、公共交通機関からは離れている。
今回は坂を下りるほうだったので良かったが、登校時には長い坂を上ることになる。
考えただけで気がめいりそうだった。
頭を横に数回振り、イヤな思考を吹き飛ばしたマコリンは、駅の様子を眺める。
「...人が多いわね...どこから集まってくるのかしら?」
マコリンは上流階級のため、人の密集した状態を経験したことがない。
人の溢れる駅は、入るのもためらわれた。しかし、
「いくわよ!」
気合を入れた声を出すと、思い切って駅に飛び込む。
「うわっ!」
マコリンは大勢の人が歩き回っている様に驚く。
しかも、人を避ける技術がないため、目の前の人の壁を、どうやって越えればいいのか分からない。
「くっ!くっ!前に進めない...」
しばらく、前に出ては後ろに戻されを繰り返していたが、やがて人の流れがあることに気づく。
「あっ!あの人たち、改札口に向かってる!一緒についていけば!」
マコリンは難なく、改札口までたどり着いた。
「ふふん!こんなものよ!」
誇らしげな顔をするマコリン。しかし、
<ガシャン!>
改札を通り抜けようとすると、邪魔するようにバーが出てくる。
「なにこれ~~~!!」
マコリンは途方に暮れてしまう。
<チッ!>
舌打ちが聞こえる。
後ろの人たちはイラついているようだ。
避けて隣の改札に向かう人もいた。
「くっ!くっ!」
<ガシャン!ガシャン!>
しばらくバーと闘っていると、
「ICカードは持ってないのかい?」
親切なおばあさんが、声をかけてくれた。
「カード?」
マコリンがその言葉に隣の改札を窺うと、人々はカードをタッチして通り過ぎている。
「カード、カード...」
マコリンはポケットの中から、それらしいカードを見つけ出した。
「こうしてと...」
マコリンは見た通りに、マークのある場所にカードを当ててみる。
<ピッ!>
音が鳴った。
マコリンの目が輝く。
(きっと、これで...)
改札を無事、通り抜けることができた。
「ありがとう!」
マコリンはおばあさんに礼を言う。
「ほほほ!私も昔、戸惑っていた時に、教えてくれた親切なお嬢ちゃんがいてね!...あなたにそっくりだったからつい...だから気にしなくていいわよ!」
おばあさんはそう答えると、笑って去っていった。
(もしかして、それってこっちの世界の!)
心が温かくなったマコリンは、喜び勇んで口にする。
「さあ、これで電車に乗れるわ!家に帰るには...」
ハタと言葉が止まった。
「どうしたらいいの~~~~~?!」
マコリンは乗る電車も、降りる駅も知らなかった。
「と、とりあえずこれに...」
ちょうどホームに着いた電車に乗り込むマコリン。
「おお!マコリンじゃないか!」
そこで出会ったのは、
「お父様!!」
マコリンのお父様だった。
髪形と端正な風貌は変わらないが、着ている服はみすぼらしい。
くたびれたグレーのスーツが、社会的な地位の低さを表していた。
「マコリンも今、帰りかい?」
お父様が聞いてくる。
「はい!お父様も同じ電車だったなんて...」
(一緒についていけば、家に帰れる!)
マコリンがホッとしながら答えると、
「どうしたんだい?そんな改まった話し方をして...」
お父様はマコリンの口調を不審に思ったようだ。不思議そうな顔をしている。
「たまには良いではありませんか!」
マコリンが言うと、
「ははは!学校の影響かな?育ちのいいお嬢様ばかりでマコリンも大変だろう?」
お父様は気にした様子もなく、逆にマコリンを心配してくる。
(大雑把な性格で良かった!)
マコリンが胸をなでおろしていると、
「はあ、お父さんが定職につければ、マコリンにも苦労はかけないのにねぇ...」
お父様は悲しげに目を伏せた。
「お父様は何をしておられるのでしたかしら?」
マコリンがさりげなく聞くと、
「ん?出来高払いのパートの営業だが...最近はどこも渋くてね...なかなか契約がとれないんだ...」
お父様がため息をつく。
「そ、そうでしたわね!ご苦労様です!」
マコリンが一礼すると、
「ははは!今日は本当に優しいね!いつもは『お父さんがこんなだから!』とか言って、近くに寄ってもくれないのに...」
お父様はうれしそうに微笑みかける。
(そっか...自分が学校であんな目にあってるのはお父様のせいだと思って...貧乏人は大変なのね!)
そう思ったマコリンだったが、
(でも...こうやって一緒に帰れるなんて...何か新鮮ね!)
いつも忙しそうで、なかなかお父様との時間がとれないマコリンにとって、これは貴重な体験だった。
「私がいる間は優しくしてさしあげますわ!」
ちょっとうれしくなったマコリンが、お父様に微笑み返すと、
「...どういう意味だい?」
首を傾げるお父様。
「ふふふ!そのうち元に戻りますわよ!今のうちにお話してくださる?」
マコリンがそう続けると、
「...本当に変な子だね!...で、学校じゃどうなんだい?いじめられてないかい?」
お父様はずっと聞きたかったのか、学校での様子を尋ねてくる。
「大丈夫ですわ!私がいる間に、言い返せるだけ言い返してあげますから!」
「ははは!頼もしいね!」
二人はそんな会話をしながら家に帰っていった。
☆彡彡彡
そして、家に着いたマコリンは、
「これが...家?」
ボロボロの狭い家に呆然となってしまう。
窓があちこち割れ、直すお金がないのか、ガムテープが貼ってある。
屋根には雨漏りがするのか、ブルーシートが被せられている箇所があった。
「ははは!でもこんなのでも、持ち家があって良かったよ!賃貸だったら、とてもじゃないが生活できない!」
お父様はそう言うと、建て付けの悪いドアを、ガタガタいわせながら開けて、中へと入っていく。
「母さん、ただいま~~~~!マコリンも一緒だよ~~~!」
「あら、珍しいわね!」
中から聞き覚えのある女性の声が聞こえた。
(お母様!!)
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