マコリン☆パニック!

世々良木夜風

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Panic 25. プールの底で見たもの

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「マコリ~~~ン!ポワン、もうクロールできるよ!」
ポワンの得意げな声が聞こえる。

今日の授業は、前半で基本的な泳ぎ方を教わり、後半は自由な練習時間だ。

「すごいわね!一日でここまで泳げるようになるなんて...」
ポワンの運動神経に、マコリンも脱帽だった。
もともと水は怖くないようだったが、泳いだ経験がないのに、ちょっと教わっただけでクロールが様になっている。
「えへへ~~~!」
褒められて照れてしまったのか、ポワンは水中に潜る。
しかし、すぐに慌てて戻ってきた。
「マコリン!こっち!」
「えっ?!」
ポワンに促されるままに水中に潜るマコリン。
そこで見たものは...

(白いワンピースの女の子!)
マコリンは驚く。
いつか夢の中で見た少女と同じかどうかは分からないが、似たような格好の女の子が、ワンピースで水中を泳いでいた。
そして、その向かう先は...
(ゲート!!)
何度も見た、黒い渦がプールの底に発生している。
(ポワン!)
(うん!)
二人は目で合図をすると、女の子を追いかける。
(もうちょっと!)
追いつきそうなところで、女の子はゲートの向こうに消えていく。
(どうしよう...)
躊躇したマコリンだったが、ポワンもゲートをくぐっていった。
(ええい!なるようになるわ!)
それを見たマコリンもポワンに続くのだった。

☆彡彡彡

(ここは!)
マコリンがゲートを通り過ぎると、そこは相変わらず水の中だった。
広い海の海底近くのようだ。
目の前には、大きな石造りの街のようなものが見える。
奥の方には、城らしきものもそびえていた。
街の入口に向けて、泳いでいく少女とポワン。
(待って!)
急いで追いかけるマコリン。
その後ろで、ゲートは音もなく消えていった。


「あっ!」
街の入口にたどり着いたマコリンは驚く。
そこには水の代わりに空気があり、普通に息ができたのだ。
どうやら街の周辺だけ、空気に覆われているらしい。
「よっと!」
重力を感じたマコリンは、咄嗟に姿勢を直して、着地する。
「面白いわね!」
そこはまるで、水族館のトンネル水槽のようだった。
マコリンが辺りを見回していると、
「マコリン!この子、気を失ってるよ!」
ポワンの声が聞こえた。
その声に我に返るマコリン。
「そうだ!その子!」
マコリンはポワンのそばに行く。
そこでは一人の女の子が、街の入口の石畳の上に横たわり、目を覚ます気配は感じられなかった。
(ちょっと...違う気がする...)
マコリンは夢の女の子と比べて、そう感じた。
夢の中の女の子は、不思議と細部の印象がぼやけていた。
なので『絶対に』とは言えないが、この子とは明らかに違う箇所があった。

まず、この子は顔の細部までハッキリ認識できる。
西洋系の凹凸のハッキリした顔だ。
この年で、可愛いというよりは、綺麗といったほうが似つかわしいだろうか?
それと、髪の色は黒に近いが、少し茶色っぽい。あの子は真っ黒だったはずだ。
また、髪の長さもこの子がほうが若干、長かった。
そして、よく見たらワンピースの素材や装飾も違う。
あの子のはスッキリとした飾り気のない、シルクのような素材だったが、この子のは印象としては化学繊維に近い。
水を弾いているようであったし、胸に大きなリボンが、裾には可愛らしいフリルがついていた。

(でも、ゲートの近くにいたということは...)
マコリンは、そっと自分が来た方を見つめる。
(ゲートが消えている...もしかしてこの子が開いて...)
そんなことを考えていると、
「ねえ!ねえ!大丈夫?!」
ポワンがその子に呼びかけている声が聞こえた。
(いけない!こんなこと考えてる場合じゃ!)
そう思い直したマコリンは、女の子の口に耳を当てる。
「息は...している!脈は...」
今度は手首で脈を測った。
「ある!...命には別状はないみたい!...でもなんで...」
女の子はポワンが声をかけても、起きる気配はない。
二人が騒いでいると、中から衛兵らしき、2人の男が出てきた。
「何事だ!」
二人に状況を尋ねた衛兵だったが、寝ている少女を見ると顔色が変わる。
「王女様!!」
「「えっ?!」」
その言葉に驚くマコリンとポワン。
「誰か人を!!...それとお前らはこっちに来い!!詳しく話を聞かせてもらおうか!!」
衛兵はそう言うと、マコリンとポワンを、詰所の地下にある牢屋へと放り込んだ。

☆彡彡彡

「もう!あいつら、美少女に対する態度がなってないわね!」
マコリンは衛兵の行動に腹を立てていた。
「ポワンたち、この国の王女様に何かしたと思われたのかなぁ?」
ポワンはというと、今後を心配している。
「そんなのどうでもいいわ!さっさと元の世界に帰るわよ!ゲートを出して!」
マコリンの言葉に、
「うん...召喚サモン!」
ポワンは元の世界へのゲートを開こうとする。しかし、
<ポウッ!>
床に幾何学模様の光が浮かび上がる。
その瞬間、ポワンの腕の前にできつつあった、黒い渦は消えてしまった。
「『魔封じ』の魔法陣!!」
ポワンが叫ぶ。
「なにそれ?」
マコリンが首を傾げていると、
「魔法を無効化する魔法陣だよ!魔法の使える国では結構、一般的なんだ!この牢屋にも仕掛けてあるみたい...」
ポワンが説明をした。
「そんな!!...なんとかできないの?!」
マコリンがすがるような目で見つめてくるが、
「ポワンじゃどうにもできない...きちんと話して分かってもらうしかないね!」
ポワンは申し訳なさそうに口にした。
「もう!仕方ないわね!私がビシッと言ってやるわ!」
マコリンが面倒くさそうに言うと、
「ごめんなさい...」
ポワンがしょげかえってしまう。
「だ、大丈夫よ!きちんと話せば分かってくれるわ!」
その様子を見たマコリンは、慌てて慰めるのだった。


「でも...なかなか来ないね!」
ポワンの言う通り、1時間ほど経っても、誰も現れる気配はない。
「そうね。誰もいないし、不安だわ!」
地下牢には、マコリンたち以外は、誰もいないようだった。
牢の中にランプはあるので暗くはないが、やはり薄気味悪い。
(何か時間つぶしを...)
マコリンがキョロキョロしていると、ランプの光に照らし出された、ポワンの胸に目が行った。
(こ、こうしてみるとポワンの水着姿、可愛い!!...お、お胸があんなに膨らんで...)
そんなことを考えていると、着替えの際に、ポワンの胸を触ってしまったことを思い出す。
(も、もう一度...)
マコリンの手が、ポワンの胸に伸びそうになるが、
(ダ、ダメ!!そんなことしちゃ!!)
必死で押しとどめていると、突然、ポワンが口を開いた。

「マコリンのお胸、綺麗...」
その声にポワンを見ると、その目はマコリンの胸に釘付けになっていた。
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