【完結】君と創る世界

くみた柑

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【第三章】君と色づく世界

僕が帰る場所

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 東京に帰る新幹線の窓から外の景色を眺めていると、まるで世界の色がどんどんと褪せていくような錯覚を覚えた。田舎での数日は、あまりにも濃密で、人の温もりが溢れていた。東京には、それがない。

 新幹線を降り、ホームを歩く。
 見慣れた都会の喧騒は耳に届いているはずなのに、まるで自分だけ別の世界にいるような感覚だった。
 せわしなく行き交うたくさんの人々。その中に、僕と関わりのある人は誰一人いない。
 どこまでも無機質で、ただただ味気ない光景が広がっていた。
 可琳に、早く会いたい――その思いだけが、胸の中で大きくなっていく。

 自宅に戻ると、僕は荷物を床に置き、真っ先に退職届を書いた。
 ネットで引越業者の見積もりを依頼し、荷物をリストアップする。
 部屋を見回してみても、これといって持ち帰りたいものがほとんどないことに気づく。

 東京に執着するものなんて何一つなかった。
 昨日、可琳と過ごした川辺の風景が何度も頭をよぎる。
 川のせせらぎ、セミの鳴き声、可琳の笑顔。全てが僕の心を満たしてくれる。
 それに比べて、この部屋の静けさが、やけに重苦しい。

――帰る場所は、もう決まっている。

 そう自分に言い聞かせながら、帰郷の準備を進める。
 慌ただしい一日だったが、それすらも心地よかった。
 疲れた体をベッドに横たえ、目を閉じると、可琳の顔がすぐに浮かんだ。

――きっと、すぐにまた会える。

 そう思いながら、僕は深い眠りに落ちた。

 その日の夜、可琳の夢を見た。
 川辺で、穏やかな風が吹く中、可琳は笑顔で僕の隣に座っていた。

「久しぶりにハチに会えて嬉しかった」

 可琳の優しい声が、まるで耳元で囁かれたように響く。
 僕もだよ、可琳。これからは、ずっと、ずっと一緒にいよう。
 目が覚めたあとも、夢の中の可琳の笑顔が、胸の奥に鮮やかに残っていた。

 次の日、僕は決意を胸に会社に向かった。
 退職の手続きは意外とあっさり進んだ。引っ越しの準備や、諸々の手続きをひとつずつ着々とこなしていく。
 心にはいつも、可琳の笑顔があった。
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