【完結】君と創る世界

くみた柑

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【第三章】君と色づく世界

彼女がいる日常

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 可琳との、そんな穏やかな日々が続いたある日、いつものように窪の店でラーメンを食べていると、窪が唐突に話を振ってきた。

「おい洵、次の仕事が見つかるまで、うちでバイトしないか?」
「え? 僕が?」
「ちょうど人手が欲しいんだよ」

 何もせずにいるのも落ち着かないと思っていたところだったので、僕は二つ返事で引き受けた。

「よし! じゃあ今日から早速頼む!」
「は?」

 窪が満面の笑顔で、店の奥から制服を持ってくる。

「悪いな! 今日、親父とお袋が用事でいないんだ。頼んだぞ!」

 そう言って背中を押されたら断れるはずがない。
 僕はラーメンを食べ終わると、その丼を下げるところから、そのまま働くことになった。
 飲食店でのバイト経験はなかったが、接客業というのも悪くない。

「美味しかったよ、ごちそうさま」
 お客さんにそう言われるたび、なんだか心が温かくなる。

「まかないでラーメン食べれるから、食費も浮くぞ?」

 窪の軽い調子に、思わず笑ってしまった。体を動かしていると、余計なことを考えずに済むから気持ちが落ち着く。

 昼食のピークをなんとか乗り切り、店内が落ち着いた頃、仕込みをしながら窪と話す。

「洵は東京で何してたんだっけ?」
「エンジニアだよ」

「へぇ、それなら、時安が働いてる会社、たしかそんな感じの仕事内容だったと思うぞ。応募してみたらどうだ? 洵の親父さんも昔はそこで働いてたって聞いたしな」

 窪の提案に、僕は少しだけ表情を曇らせた。
 僕は、結局苦手な父と同じ道を歩んでいることに苦笑いする。
 でも、可琳と同じ職場、というのは悪くない。

「そうだね、考えてみるよ」

 その時、店の扉がガラリと開いた。

「こんばんは~」

 噂をすれば……仕事帰りの可琳が顔を出した。

「らっしゃい!」

 僕が元気よく可琳に声をかけると、可琳が驚いた表情で笑う。

「え? なに、ハチ、ここで働くことになったの?」
「まあ、そんな感じ。ただいま研修中です」
 と僕は笑う。

「そうなんだ。じゃあ、味噌ラーメンください」

「味噌一丁!」
「味噌一丁!」

 僕と窪の息の合った掛け声に、可琳が「あはは!  もうすっかりラーメン屋さんだね!」と声を上げて笑う。

 カウンターに座った可琳の前にラーメンを運び、僕もそのまま彼女の席の隣に腰を下ろした。

「窪が、今日はもうあがっていいって。これ食べたら家まで送るよ」
「ありがとう」

 可琳が笑顔で箸を持ち、ラーメンに口をつける。
 幸せそうに頬張る可琳を見て、僕の胸がじんわりと温かくなる。
 この町でこうして彼女と過ごす時間が、もう日常になりつつあることが、たまらなく嬉しかった。
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