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【第六章】重なる世界
重なる面影
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定食屋さんに着いて、僕達はテーブル席に4人で座った。
慣れた様子の田中さんが、さっと割り箸とおしぼりを配る。その自然な動きに、仕事では少し苦手意識を持っていた田中さんへの印象が少し変わる。
時々痛いことを言われて辛いけど、仕事でも気配りを感じる場面があって、なんだかんだ最近は、田中さんのことを尊敬している。
みんなで、田中さんお勧めの日替わり定食を注文し、料理が運ばれるまで、軽い雑談が続く。その中で、僕は意を決して可琳に声をかけた。
「あの、先日は突然呼び止めてしまって、すみませんでした。知り合いに似ていたもので……」
可琳は一瞬驚いたような表情を見せたあと、小さく微笑んで答えた。
「大丈夫です。少し驚いただけなので」
そう言って恥ずかしそうに俯いてしまった。僕は彼女の言葉に、ひとまずほっとする。
「なんだ八幡、時安さんともう知り合いだったのか。――ああそうか、時安リーダーと仲良いもんな」
「いえ、最近知り合ったばかりです。リーダーに娘さんががいるって知らなかったので」
僕は少し戸惑いながらも、冷静を装って答えた。
「可琳は普段リモートだし、ちょっと人見知りするんだけど、慣れるといっぱい話しますんで! ね、可琳?」
鈴木さんが明るく話しかけると、可琳は顔を真っ赤にして答えた。
「は、はいっ!」
その様子に田中さんが慌てて、
「そんなに緊張するようなメンツじゃないから」
と言うと、鈴木さんが可琳の肩を抱きながら微笑む。
「こう見えて、仕事はバリバリこなすんですよ」
「もう、佐奈ちゃん、私のことはいいから~!」
可琳は顔を赤くして抗議をしたあと、僕と目が合って、照れるようにまた下を向いてしまった。
そんな二人の掛け合いに笑いが起こり、場の雰囲気が和やかになる。
「二人はずいぶん仲がいいんだね」と田中さんが言うと
「妹が可琳と同学年で。小さい頃から知ってるんです」と鈴木さん。
僕が知っている可琳とは少し性格が違うようで、人馴れしていない感じや照れた顔が、どうしようもなく可愛いと思ってしまう。
顔は全然違うのに、眉や瞳の動き方、話すときの口の開き方……そんな些細な仕草がどうしても僕の中の可琳と重なってしまう。
――でも……この子は可琳じゃない。
そう、自分に言い聞かせる。
僕はちらりと鈴木さんを見る。どちらかといえば、外見や性格は鈴木さんに似ているのに、なぜか僕の中の可琳センサーが、目の前の彼女に反応してしまう。
僕は、鈴木さんから可琳に、視線を戻した。
可琳は下を向いたまま何かをしていて、手元がずっと動いている。しばらくして、彼女はダックスフンドの形をした箸袋をテーブルに置き、その上に箸を乗せると、そっと息をついた。
「あ、また折ってるー。可愛いよね」
鈴木さんが微笑みながら言った。
僕の心臓はドクンと大きく跳ねた。
――その折り方は……
「ついクセで折っちゃうんだよね」
そう言いながら、少し照れた顔を浮かべる可琳を見た瞬間、僕の記憶の中で輝くもう一人の可琳の姿が甦る。
僕の世界の居酒屋で一緒に食事をしたあの日。笑いながら、同じように箸袋を折っていた可琳の姿が。
――やっぱり、君は可琳なんじゃないのか?
慣れた様子の田中さんが、さっと割り箸とおしぼりを配る。その自然な動きに、仕事では少し苦手意識を持っていた田中さんへの印象が少し変わる。
時々痛いことを言われて辛いけど、仕事でも気配りを感じる場面があって、なんだかんだ最近は、田中さんのことを尊敬している。
みんなで、田中さんお勧めの日替わり定食を注文し、料理が運ばれるまで、軽い雑談が続く。その中で、僕は意を決して可琳に声をかけた。
「あの、先日は突然呼び止めてしまって、すみませんでした。知り合いに似ていたもので……」
可琳は一瞬驚いたような表情を見せたあと、小さく微笑んで答えた。
「大丈夫です。少し驚いただけなので」
そう言って恥ずかしそうに俯いてしまった。僕は彼女の言葉に、ひとまずほっとする。
「なんだ八幡、時安さんともう知り合いだったのか。――ああそうか、時安リーダーと仲良いもんな」
「いえ、最近知り合ったばかりです。リーダーに娘さんががいるって知らなかったので」
僕は少し戸惑いながらも、冷静を装って答えた。
「可琳は普段リモートだし、ちょっと人見知りするんだけど、慣れるといっぱい話しますんで! ね、可琳?」
鈴木さんが明るく話しかけると、可琳は顔を真っ赤にして答えた。
「は、はいっ!」
その様子に田中さんが慌てて、
「そんなに緊張するようなメンツじゃないから」
と言うと、鈴木さんが可琳の肩を抱きながら微笑む。
「こう見えて、仕事はバリバリこなすんですよ」
「もう、佐奈ちゃん、私のことはいいから~!」
可琳は顔を赤くして抗議をしたあと、僕と目が合って、照れるようにまた下を向いてしまった。
そんな二人の掛け合いに笑いが起こり、場の雰囲気が和やかになる。
「二人はずいぶん仲がいいんだね」と田中さんが言うと
「妹が可琳と同学年で。小さい頃から知ってるんです」と鈴木さん。
僕が知っている可琳とは少し性格が違うようで、人馴れしていない感じや照れた顔が、どうしようもなく可愛いと思ってしまう。
顔は全然違うのに、眉や瞳の動き方、話すときの口の開き方……そんな些細な仕草がどうしても僕の中の可琳と重なってしまう。
――でも……この子は可琳じゃない。
そう、自分に言い聞かせる。
僕はちらりと鈴木さんを見る。どちらかといえば、外見や性格は鈴木さんに似ているのに、なぜか僕の中の可琳センサーが、目の前の彼女に反応してしまう。
僕は、鈴木さんから可琳に、視線を戻した。
可琳は下を向いたまま何かをしていて、手元がずっと動いている。しばらくして、彼女はダックスフンドの形をした箸袋をテーブルに置き、その上に箸を乗せると、そっと息をついた。
「あ、また折ってるー。可愛いよね」
鈴木さんが微笑みながら言った。
僕の心臓はドクンと大きく跳ねた。
――その折り方は……
「ついクセで折っちゃうんだよね」
そう言いながら、少し照れた顔を浮かべる可琳を見た瞬間、僕の記憶の中で輝くもう一人の可琳の姿が甦る。
僕の世界の居酒屋で一緒に食事をしたあの日。笑いながら、同じように箸袋を折っていた可琳の姿が。
――やっぱり、君は可琳なんじゃないのか?
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